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嫌いな先輩

 朝本さん、香恋といった高校生活で1度も話したことがなかった美少女と会話をしてから1日がたった。


 俺は授業の休み時間の間にトイレを済ませ教室に戻るために廊下を歩いている。


「お、赤崎じゃねえか」


 俺をバカにしたような声が耳に入ってくる。


 うわっ。めんど。


 俺はこんなことを心中で思ってしまう。


 だが、しかたのないことなのだ。


 この声の主には嫌な思い出しかないのだから。


「なんですか?山西先輩」


 俺は視線を向けて敬語で先輩の名前をよぶ。


 山西先輩は友達らしき2人の男子と一緒に廊下の近くにある階段から降りてきたところで俺の姿が目に入ったから声をかけたのだろう。


 山西先輩、俺の1年上の先輩でちょいわるな顔をした高身長のイケメンで、俺が春休みにやめたバスケ部に所属していて部のエースでもある人だ。


 そして、俺がバスケ部をやめた原因になった人でもある。


「久しぶりだな。お前が部活をやめたせいでお前の下手なバスケのプレイが毎日見えなくて部活は退屈でしかたないぜ」


 山西先輩はそう言ってニヤッと意地悪な笑みを浮かべる。


 うわっ。この笑顔だよ。


 俺を完全にバカにして下に見ている笑顔。


 見ているだけで不快な気持ちだ。


 この人はバスケ部で1番うまいがゆえにチビでバスケが下手な俺を部活のメンバーの前でバカにしたり、裏で俺の陰口を言ったりしていた。その上、たまに暴力もしてきていた。大体は練習中では練習外でそれらは行われていた。


 他のメンバーも俺がバカにされているのをみて笑っていた。


 それが面白くなく苦痛だったので俺は部活をやめた。


 だから、俺はこの先輩が嫌いだった。



「そうだったんですね」


 だが、俺はそれと同時にこの先輩のことを恐れていた。


 単純に俺より身長が高くイケメンで人気がある山西先輩が恐かったのだ。


 そのため、部活内でどんなにバカにされても言い返さず、暴力をふるわれても抵抗さえしなかったのだ。


「こいつ、俺にバカにされ続けて部活やめたんだぜ」


 山西先輩は隣にいる2人の男子に笑いながら話しかける。


「まじで。ダセェ」


「男じゃねぇよこいつ」


 話を聞いた2人は揃って俺をバカにした。


 大笑いしている。


 山西先輩も2人の反応に満足して楽しそうに笑っている。


 俺はそんな中ずっと黙っていた。


「おい、赤森」


 俺が黙っている中、山西先輩が歩み寄ってくる。


「ぐっ」


 俺は腹に痛みを感じる。


 山西先輩がいきなり俺の腹を殴ってきたのだ。


 殴られたことにより俺は腹を両手で抑える。


「わりぃ。顔がうざかったから殴ってしまったわ」


 俺は腹の激痛に耐えるため床に視線を向けているので言葉を返すことができない。どうやら溝落ちをくらってしまったらしい。


「お前の顔がうざいからしょうがないか」


 そんな言葉を俺に残すと「はははは」と笑いながら男子2人と階段を下りていく。


「くそっ」


 俺はそれしか言えなかった。本当に。


 周囲にはさっきの光景を見ていたであろう生徒が何人かいた。


 みんなかわいそうとかひどいとか、このようなことを感じているような目をしている。


 しょうがないよな。


 止めにいったら自分がやられるかもしれない。そうされないために知らないフリをするか黙って見ているしかないよな。俺もその立場だったら同じことをする。


 俺は痛みが引くと周囲を見ずに廊下を歩いて自分の教室に向かった。

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