休日のお出掛け
週末の土曜日。
俺はいまとある人と約束した集合場所である噴水の付近に佇んでいる。
噴水は勢い良く空気が存在する空間に液体を噴出している。
いきなりだが、普段、俺は着る服を適当に選ぶ。
それは、外出しないときもするときも同様である。
なぜなら部屋着を脱いだら、着る服を気にせず自分の部屋のクローゼットにしまってある服や母親が畳んだ洗濯物の中から適当に選んでいくのが俺の服のチョイスの仕方だ。そのチョイスには一切こだわりがない。
そして、とりま着衣して恥ずかしくない衣服を選ぶ。
そんな俺だが、今日は自分なりにかっこよく、その上、自分が最大限できるおしゃれな服を選択した。これは着衣する服をこだわって選定したことを暗示する。
その結果、生まれたコーディネートが、紺色のボタン付きのカジュアルシャツに水色のジーパン、靴は革靴になっている。
おしゃれな人間からすれば、平凡ないし平均以下、またはダサい部類に含まれるコーディネートかもしれない。
だが、このコーディネートは現時点俺ができる最高のおしゃれな服装だ。
いつもはジーパンなんか履かないし、革靴も履かない。
ところでなぜ服にこだわりの俺がこのような行動をとったのだろうか。
突如、おしゃれに目覚めたりしない限り、普通はこんなこと実現しないだろう。
しかし、今日は先に述べた要因がなくても、服を選ぶことに焦点を当てる必要性があった。
それは。
「おーい。赤森く〜ん」
女性の声が耳の中に入り、ルートを通り鼓膜を刺激した。
俺は声のした方向に視線を向け、視認した結果、その女性に対して、軽く手を振った。
視線の先に存在する女性に周囲の人間達(特に、男性が)は釘付けになっていた。
彼女と一緒にいる男性でさえも、彼女を呆けて見つめていた。その男性の反応に彼女と思しき女性は怒りを露わにしている。多分、男性は、叱られるだろう。
しかし、それも仕方のないことなのかもしれない。そう言わせるほど、俺に声をかけた女性は魅力的だからだ。
ベージュのブラウスに茶色のロングスカートを着衣している。ちなみに、出るところはある程度出ている。
「ごめん。待ったよね」
今、人々が存在する空間で、特別異彩を放っている女性は俺に申し訳なさそうな顔で謝罪してくる。
「ううん。待ってないよ。朝本さん。俺もさっき来たばっかりだから」
これは嘘ではない。コーディネートを選択するのに時間を費やし、ラノベの主人公のように、1時間ないし30分前に来て待つことはできなかった。
なんか理由がダサい。
「よかったー。準備に結構時間がかかっちゃって、ギリギリになったから不安だっただー」
そう言って、安堵の息を吐き、瞼を閉じ、安心した表情をする。
こういう言動を見ると、朝本さんの性格の良さが伝わってくる上、学校で人気な理由も頷ける。顔が良い上、性格も良いのだ。まさに、鬼に金棒だろう。
それにしても・・・
なんで準備に時間がかかったんだろう?
そこは気になるところである。確かに、外出する際、女性は男性よりも時間がかかると言われているのは自明なことだろう。しかし、そんな自明なことでも、自分が関わる事柄で準備に時間がかかったという言葉を聞けば、嫌でも少しは意識してしまう。
まあ、そんなことは絶対ないんだろうけど。
「赤森君、そろそろ行こ!」
俺が心中でごちっていると、朝本さんが、俺の左腕をゆさゆさと揺らす。
「う、うん。わかった」
内心、美少女に触れられたことにドキッとしながらも、できるだけ表情に出さないようにして、返事をすると、朝本さんと一緒に目的を達成できる場所に向かう俺であった。