表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/79

許される人間と許されない人間

 ついてこいと言われて、ついていった先は、学校の校舎からは離れている人気のない場所だった。


 狭い範囲の道が開かれている。


 ある程度、奥に進んだ後、リーダー格の男はここら辺でいいだろっといった感覚で立ち止まった。


 そして、俺もそれに倣って、その場に立ち止まる。


「ぐッ」


 無意識そのような声を発してしまう。


 理由は、リーダー格の男が俺が立ち止った後、2、3秒後に突如蹴りを入れてきたからである。


 俺はそれになんとか反応でき、腹部に目掛けて飛んできた蹴りを右手でガードしたのだ。右手は、蹴りを防いだ代償で、ビリビリとしていて、若干の麻痺状態である。


「お前、目立っててうざいんだよ」


 蹴りを入れてきたリーダー格の男は、俺に敵意に対して敵意を持っている目をしている。


俺は沈黙を貫く。ここで、何か言葉を返せば、反抗や抵抗したと相手に思われ、また先程のような蹴りが飛びかねないからだ。でも・・・。


「なんか言えよ。オラァ!!」


 後ろにいた2人のうちの1人が俺の背中を蹴り飛ばすように蹴る。


 蹴られた背骨の真中辺りにジーンッといった鈍い痛みが生まれ、蹴りの衝撃で倒れはしなかったが、一瞬、体が浮いて、やや前に体 飛んでいく。


 そうか。忘れてた。俺が置かれた今の状況では、言葉を返そうが、言葉を返さないで沈黙を行なったとしても、大して変わらないんだった。いや、全く変わらないといった方が正しいだろう。なにせ、このような状況になった時点で、相手がやることはもう最初から決まっているのだからな。


 ここで抵抗したらいいと思う人間はいるかもしれない。しかし、それは強い人間の意見だ。大体の人間は強者の人間に殴られたら抵抗せずに縮こまって殴られた部分を押さえて痛がっている。そして、そのような人間がまた、自分より立場が弱い人間に同じことをやったらまた被害者が増加する。これが世の中のサイクルだ。


 実際にこれは、暴力だけではなく、全てに適合できると思う。


 しかし、無理かもしれないが、抵抗すれば相手がやめてくれるかもしれないといった淡い期待も少しだが、脳裏に浮かぶ。


 そして、そんなことを考えている中、相手型は、殴る蹴るを多用してきた。


 俺は必死に抵抗した。結果は、変わらないだろうが、相手の蹴りやパンチを防いだり、スキがあったら逃げようとする行動もとった。


 しかし・・・。


「あ〜、スッキリしたわー」


 「だなー」


「俺もだわ」


 そのような声が微かに耳にはいってくる。


「あのチビのあいつ如きが、朝本萌叶や西宮寺香恋と一緒にたまにいて、それで目立っているのが鼻につくんだよな」


「そうそう、顔も普通で、身長も低い、その上、突出した何かも持っていない奴がなー」


 なるほど、そういうことか。


 俺は、ボコボコにやられてうつ伏せで倒れている中、真実を知って心の中で笑う。


 世の中には、目立っても許される人間と目立って許されない人間がいる。目立っても許される人間は、顔が良かったり、スポーツで突出した才能があったり、喧嘩が強かったりといった、皆が認めるものを何か持っている。学校では、いわゆる陽キャといった人間がこれらに該当するだろう。


 それに対し、目立つことが許されない人間は、平凡で地味でなんの取り柄もない人間であり、いわゆる陰キャという人間だろう。


 また、それ以外にも、こいつが目立ったら腹が立つといった人間も存在する。周りはそのような人間を自分よりも立場を下に見ているため、負けたと感じて、そのような人間が目立つことが許せないのだろう。


 目立つのが許されるか、許されないかの人間でいえば、俺は後者であり、俺が目立てば周りは腹が立つのだろう。


 別に、目立つつもりもないのに。


 昔からそうだった。俺が何か上手く行くことがあれば、俺に妬みを持つ奴が現れ、不用意に俺に攻撃してくる。その人間は、俺より学校の中では、立場が上なのにだ。


 全く、泣けてくるよ。


 このような人生はもう変わらないのだろうか。俺な与えられた運命なのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ