“既視感”
「敦兄ちゃんてば! 待ってよ!」
ーーと。いつもどおりの、朝の登校風景のはずの、中に。違和感が混じった。デジャヴ?俺は何故かそう思った。ーー何故だろう?
「チビ。足短いから遅いんだろ。なあ?幼稚園児、海君ーーああ、保育園だっけ?御前ーー」と。
“違和感”だと思ったのは、そう会話していた人物達のせいなのだろうかーー? 違和感と言いたくなるくらいの“美形”が、そこにいたのだ。そう、俺の“目前”に、ね。
「僕は今“高校生”ですけど? 敦兄ちゃんてば。若年性の………」
「人を惚け扱いするな。失礼な子供だぜ。たくっ」
「敦兄ちゃん、口悪いよ。つぐみ伯父さんに見られたらさ……」
「在る訳無いだろ。」
「…………どっからの自信………?」
「黙って歩け。口開く暇が有るなら遅れるな。それともあれか、お前は“抱っこ”じゃ無えと、歩け無えのか? 仕方無えなあ………ほれ」
「敦兄ちゃん、冗談きつい。全く笑え無いよ。親父ギャグなの?」
「……………、お前の口って減ら無えのか?」
「失敬な。始めから終わり迄、口は“ひとつ”ですよ。勿論“舌”もね。」
「じゃあ“壁”や“障子”の件は如何すんだよ。」
「最早“脱線”じゃん…………何なの? “お父さん”に似て来たの?」
「………、如何やって、だよ? まあ、もう“いい”わ。良いから急げよ。遅刻するぞ。」
「…………。車で送ってくれたら早かった、よね?」
と、な。そんな些か漫才じみた会話だが、至ってコイツら、美形だったのであった。……………くそっ!ハラたつッ!
ーーそれにしてもだ? どうして彼等に見覚えがあるのだろうか?ーーと。××××
■ ■ ■
はぁ。今日ガッコ、行きたくネェなぁ…………と、今俺は思いながら、歩いている。理由はこうだ。なぜなのか“昨日”の記憶がきれいさっぱり“ない”のだ。夕方、気づくと俺は自宅にいた。自分の部屋。ベッドの上。はっ!と“目覚め”ると、ーーだった。
部屋はすでに薄暗く。パートから帰宅した母が部屋に入ってきて。「…………あんた、なにやってるのよ?」と言ったのだ。俺はこの時、動けなかった。
状態でいえば、ベッドの上に、座ってた。腰かけてたとかでは、なくだ。
ちょうど、“寝て、起きた”みたいな格好だった。それで、服装はなぜか制服で。つまり学校から帰って、“うっかり寝ちまった”みたいな状況なのに、そこはオカシクて。
母はパート先から帰宅したのでは無かったのだ。パート先で連絡を受けて、学校へ行ったらしい。つまり、俺は一日“行方不明”だったのだ。××××
そんなバカな。
記憶どこ行ったよ。××××××