プロローグ
白い息が出る。あたりは一面雪で覆われた銀世界。
その景色はどこか懐かしくて、初めて見る気もする。
この場には野趣な香りが漂っていて初めて嗅いだはずなのに懐かしいなという気持ちがあふれてくる。
この寂しい荒涼な雰囲気が漂う場所を、視覚と聴覚を使って味わっているとなぜか涙がぽたぽたとあふれ出てくる。
この景色を目に焼き付ける。そうしなくてはこの景色を忘れてしまいそうだから。
......?なんでこの景色を忘れてはいけないんだ?
そんな疑問が浮かぶと同時に俺の首筋にボサッという音とともにひんやりとした感触が首筋に広がる。
あまりに急な出来事だったため「っ冷たっ!」と大声を出してしまった。
雪玉を投げられたようだ。
「おい!バカ■■!!なにぼーっとしてんだよ!」
という声が真後ろから聞こえる。
上半身を軽くひねり後ろを振り向く。
そこにはとても可憐な少女がいた。
さらさらと艶のある桃色の髪がポニーテールでまとめられていて、こんな寒いなか丈が膝まである純白のワンピースを着ている。
その少女が純粋な笑顔を向けながら手を振っている。
「君は誰?寒くないの?」と質問しなくてはいけない気がして聞こうと口を開く......
その刹那、ノイズが走り視界が暗転する。
気づけばそこは一面が空色でなにもない空間だった。
――さっきの少女が俺の腹部にナイフを突き立て、足元が血だまりで赤く染まっているということ以外は......