私はあなたのスマホになりたい
読んでね
気がつくと午後4時。
一緒に暮らしている彼氏はまだスマホをいじっている。
何時間触っているんだろう。
朝からずっと触っている。
全然私に構ってくれない。
寂しい。
「高明くん、一緒に買い物行かない?」
私たちはいつも二人で買い物に行く。
しかし今日は違った。
「俺行かない」
「えー、なんでー?行こうよー」
「俺忙しい」
私との時間よりスマホ優先するんだ。
高明くんなんかもう知らない。
私は一人で外に出た。
晩ご飯。
テレビの音だけが空間を支配している。
彼はまだスマホの画面に夢中である。
この人、私のこともう好きじゃないのかな。
「別れ」が頭を過った。
ここは一つ、確かめてみよう。
彼が私のことをどれくらい思っているのかを。
「初デートの場所覚えてる?」
さりげなく聞いてみた。
「覚えてるよ。イオンでしょ?」
おー、覚えててくれた。
まだ私たちの関係は大丈夫なのかもしれない。
「来たー!」
私がご飯を食べ終わる頃、彼が嬉しそうに声を発した。
「どうしたの?」
「勝ったんだよ。ラスボスに」
どうやら、彼は一日中ゲームで格闘していたようだ。
「よかったね。すごいじゃん」
素直に褒めた。
ていうか、これで構ってくれない地獄から解放される。
よかった。
しかし、この安堵もつかの間だった。
「明日は仕事から帰ったら、はじめしゃちょー の観てない動画全部観るから、よろしくな」
嘘でしょ?明日もずっとスマホに触れるつもり?
スマホになったらあなたの愛をたくさん注いでもらえるのかな。
あなたの愛が欲しい。
私はあなたのスマホになりたい。
読んでくれてありがとね




