表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

月の妖精

作者: 宮野春


 ふと上を見上げるといつも思ってた。


「早く家に帰りたい。」


 なんで?

 だって、もう家にいるのにどうしてそんなことをいつも思っちゃうんだろう?


 仕事をしてる時も、ふとしたときにも思ってしまう。


「僕の居場所はここじゃない…」


 そんなわけないのに、なんとなく「あぁ、そうだ、ここは私の居場所じゃない。」と思ってしまう。


「中二病かよ…」


 思わず自分で自分が考えたことに突っ込んでみる。


 

―――



 部屋で眠りにつくときは、仰向けよりうつ伏せで寝た方が「早く家に帰らなきゃ…!」という焦燥感に襲われることがなくなって安眠できていると気づいたのはいつだったっけ?


 家に帰りたいという思いは室内でいるときより外にいる時の方が思いが強くなることに気づいたのはいつだったっけ?


 朝より夜の方が帰りたいという思いに囚われそうになると気づいたのはいつだったっけ?


 ―――僕は無意識に夜を恐れるようになった。


 誰からも理解されないけど、「家にいるのに家に帰らなければいけない」という思いに囚われてしまうのだ。


 年々強くなる思いは僕の思いが勘違いでもなんでもなくて確かに僕に影響を及ぼしている。

 仕事も買い物も睡眠も、僕はこのよくわからない思いに対応して選択してきた。

 思いに囚われてしまい夜に外を出歩くのは危険だから、日中の日が沈む前に家に帰られる勤務の仕事を選んでいる。

 買い物も仕事帰りの日が沈む前に素早く済ませてから帰るようにしているし、緊急で必要な物はネットで買い物をしてなるべく夜は出歩かないようにしているのだ。



―――



 それなのに、失敗した―――。


 今日に限って仕事が終わらずに残業をする羽目になった。

 職場の人にはもちろん「夜になると家に帰りたくなってしょうがなくなるから定時で帰らせてほしい」なんて他にも沢山残業して残っている人がいる中で説明しても理解なんてされないだろうから言えない…。


 僕は仕方なく僕に与えられた仕事を残業して終わらせた。

 

 残業をなるべく早く終わらせたはずでも普段より会社を出る時間は遅くなってしまった。

 もう夕日が出てきており、

あっという間による()が来てしまうだろう…。


(いそがなければ…!!)


 焦燥感が増す。

 夕日が沈むたびにどんどん僕の焦燥感は高まっていく。

 

(いそいでいえにかえらなければ…!)


 必死に足を動かしてあと少しで家に着くところだった。

 

 夕日が沈んで()が訪れてしまった。



―――


 

 僕の中で何かが弾けた。


 気がついたら僕は僕を締め付けていた牢獄から解放されて夜の空を飛んでいた。


 ―――あぁ、そうだった。

 僕は月の妖精だった。


 急に全てを思い出した。

 月の妖精の僕は人間界に遊びに来ていたんだった。

 こっそりと人間界に遊びに来たから僕が月の世界に帰るのは時間の問題だったんだ。

 

 僕は僕の家を思い出した。

 

 今日の月は満月だ。

 僕は微笑みながら月に向かって羽を羽ばたかせて僕の家に帰ることにした。


「待っててね。

 今から帰るからね。」



 ―――今日の満月は一際輝いていた。


初投稿作品です。

1人でも読んでくださる方がいれば光栄です。

なるべくコメントは優しめでお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ