プロローグ
また今年も赤や黄の葉が乱れ落ちていく。
裸になった木々は寒さをより増やしている。
乾いたような空気は冷んやりと肌を撫でてくる。
秋が終わる。冬が来る。
また一年の終わりだ。
今年も満足した年を送ることはできなかった。
何度願っても変わらない日常。
どうせ未来も明るくならない。
そんなことを思いながら僕、咲本響人は窓を眺めていた。
テストの順位も中の下、何気なく学校生活を送っている僕には授業は退屈だ。聞いても右耳から左耳へ流れるだけ。だから僕は普段外をみて暇を潰している。
チャイムが鳴る
僕は反射的に机の物カバンの中に入れ教室を立ち去る。
いつも通りだ、友達もできずに冴えない僕は家に帰るほかない。こんな日々は決して望んで形成されたわけではない。神の定なのだろう。僕にはどうしようもできない。
小学生の頃からのボロボロの自転車に乗って、風で増す寒さに耐えながら変わらぬ道を帰る。
途中、下校中の中学生達を見て思う。中学生の頃までは良かった。それなりに友達がいて、部活動にも入り毎日があっという間だった。
全て高校生活で狂ってしまった。コミュニケーションが取れなかった。
一年生の頃はそこまで酷くなかった。初めは何人か喋ってくれる人がいた。何か気遣いがあったのかもしれない。しかし日が経っていくにつれて周りから人がいなくなってきた。僕から喋りかけることはない。迷惑だろうから。
この狂いは家においても存在した。
僕が高校に行くと同時に母は働き出した。父は単身赴任。ほとんど家族と会話することはなくなった。
家に帰り自室に籠る。晩御飯はコンビニへ。ずいぶん自分も落ちぶれたな。知っているさそんなこと。でも僕はこの生活を変えようとしていなかった。変えること自体がめんどくさかったのかもしれない。「適当に生きている」その言葉が当てはまる生き方だと思う。
そして寝に入る。真っ白な天井は何故だか少し無慈悲に感じられた。明日も同じ事で生きる。それは苦痛ではないがどこか物寂しさを感じていた。だから変えたい、変わりたい、変えければいけない。そう思ってる。だが否、できていない。
最近はキッカケさえあればと思い始めた。
それは願うだけなのだが。
いつの間にか眠りに入っていた。
夢を見ている。理由もなくそれが自分にもわかった。辺りは真っ白だった。だが、気がつくと光の泡のような物で溢れていた。その中に一人の少女がいた。ふんわりとした雰囲気だった穏やかな温もりがこちらに伝わってきた。
「こちらへどうぞ」
そう彼女は言う。美しい、そう思いながら彼女のところ行く。近づくにつれて幸せを感じる。幸せが何かは知らない。でも、これが幸せだと体が分かっていた。
彼女の側にいてどのくらいの時が経っただろう。無言の幸せは永遠に続いていた。もう僕はこの場所から離れたくない。彼女は僕を包み込んでくれる。夢から目覚めたくなかった。
「またお会いしましょう」
ふと思いついたかのように彼女は言葉を発した。
目の前が真っ白になり僕は何も考えることができなくなった。いや、正確にはそうさせられていたのかもしれない。
そして僕は夢の終わりを感じた。
朝の目覚めは人生で1番だった。僕は夢の内容をぼんやりと覚えていた。
あの少女はなんだったのだろうか、その疑問が頭から離れなくない。
「またお会いしましょう」この言葉の意味はどういうことだったのか。その真相を知りたくて心がいつもより忙しない朝を過ごす。
学校へ着き、意味もなく時間を潰し、帰路に着く。
早く寝たいと思っていた。そしたらまた彼女に会えるのではないかとどこかで僕は思っていたからだ。彼女に会いたい一心で僕は寝台の上に寝転ぶ。
僕は今日も寝た。
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初めて小説書いてみました…
まだまだ未熟ですがよろしくお願いします