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ドラゴンさんに恋をしました!

ごめんなさい

「いっけな〜い!遅刻遅刻〜!」


 私はシータ=ペンドラム、食パンが大好物!どこにでもいる片手でリンゴを握りつぶせる、普通のSランク女剣士!今日はNo. 1ギルド<ナウいバブみ>の年に一度の集会の日!も〜こんな大切な日に遅刻するなんて、私の馬鹿〜!


「急げ急げ〜!」


 そうして、食パンを加えたまま角を曲がろうとした時何かにぶつかった。あっ食パン落としちゃった……。


「も〜いった〜い!何なのよ!」

「おいお前、ぶつかって置いて誤りの言葉もなしか」

「あ、すみま―――」


 顔を上げ謝ろうとした時、目の前にいたのは……大きなドラゴンだった。


「……何でこんな所にドラゴンがいるの?」

「……謝れよまず」

「取り敢えず討伐しますか」

「言葉が通じない人間もいるのだな……やれるものならやってみろ」


 冷たい空気が流れる……そんな時、腕時計のアラームが鳴った。そういえば……。


「いっけな〜い!こんなのの相手してる場合じゃないんだった!遅刻遅刻〜!」

「まて!逃げるな!てか誰がこんなのだ!」


 そして十分後、やっと私はギルドについた。扉を蹴破り派手に入場!


「危なかった、ギリギリセーフ!」

「はーいシータさん、55回目ね。前に行ったこと覚えてますかー?」

「早寝早起きをする!」

「はいはい、覚えててえらいですねー」


 そう言って受付嬢、ジャック=Kさんは私の顔を掴み、そのまま地面に叩きつけた。


「次からは気をつけてくださいねー」

「はっはい」


 痛い、顔面がヒリヒリする。


「で、皆さんピリピリしてますけどなんかあったんですか?」

「ええ、あなたが来る前に実はですね……」


 ジャックさんが話したのはこんな内容だった。ドラゴンがギルドに来て、こんなことを言ったらしい。「生贄を差し出せ、さもなくば……。」と。ちなみにここまで言った所でジャックさんが蹴って吹き飛ばしたらしい。強え。


「まあ、私みたいな可愛くてか弱くて痛々しい、受付嬢なんかに吹き飛ばされる程度の存在の言うことなので気にすることではないのでしょうが……さもなくば、という部分が(なに)か引っかかるのです」


 なるほど!唐突だがこんなことを言っているジャックさん、実はギルドマスターよりも強いかもと噂されているレベルで強いのだ、そんな人が何かを不安に思っている。

 これだけでギルド内がピリピリしてしまうのは仕方ないことだ。しかし……。


「私多分そのドラゴンに会ったかも」

「え?」


 多分あのドラゴンだろう、そもそも街中にドラゴンがウジャウジャいるものか!あのドラゴンで決定!潰しといたらよかった!


「……ドラゴンと会ったというのは、夢の中とかでじゃないですよね?」

「何言ってるんですか、流石に私でも夢と現実の区別位つきますって!前科あるけど!」

「だから怖いんですけど……どこで会ったんです?」

「あの角ですよ!あの角!食パン角ですよ、何でそんな名前なのか知らないけど!」

「ああ、あの角ですか……あの角でぶつかった訳ですか?」

「ええ、そうです……ん?何で私がぶつかったって分かったんですか?」

「あなた食パン好きでしょ?だからですよ。あの角を真の食パン好きが曲がる時、何か、とぶつかり運命が始まるという噂があるのですよ」

「へー」

「反応薄いですね、まあいいですよ……こんな話をしたいわけではなくですね。しかしかなりの力で遠くへ飛ばしたはずなのですが、そんな所までしかいかなかったのですか……やはり私程度に先手を取られたのは油断していたからというわけなのでしょうか?」

「それにしても変ですよね、先手取られて飛ばされたのにギルドに戻ってこないというのも。正面玄関の荒れ具合を見る限りかなり力強く飛ばされたはずなのに……」

「あれはあなたがやったんですけどね、それに件のドラゴンは中に入ってきてはいないですよ、かなりの大きさだったので入れなかったんですね、あと近隣の人達は早々に避難してましたよ、それぐらい存在感を放ってましたね」

「だからここに来るまでに人がいなかったわけね」


 そう言って私はジャックさんがそこにいたと指を指している方を見た。そして気づいた。なんかある。その事を話して私はそれを取ってきた。


「これは地図ですね……ここに生贄を連れてこいと言うことでしょうか、デカデカとバツが書かれてますね」

「やっぱり油断してただけっぽいわね……私が偵察しに行きましょうか?」

「え!?」


 このままの流れでいくと多分ジャックさんが、不安だからと一度行ってくると言い出すだろう。それならば、やっぱり一度会ったことがある私が行った方がいいだろう。それに……。


「おそらくあのドラゴンは話は通じると思いますよ、なんだかんだで少しお喋りもしましたし」

「ええ!?ドラゴンと話したんですか!?それなら話を聞いてから吹き飛ばせばよかったんですかね」

「まあ、相手がどんなやつかわからない状況だったら取り敢えず先手を取るというのは間違ってないと思いますよ」

「そうなんでしょうか……」


 そこから話を続けて作戦を立て、取り敢えず私が生贄として出向き話をする、それで問題が起こったら隠れているギルドのみんなで袋叩きにするというものになった。それと、印の付いた場所はなんでも荒れた森のようで、最近動物やらが逃げ出し木やらなんやらが荒れまくってるらしい……つまり本気で戦っても問題ないということだ。ちなみに、遅刻するなよと念を押されたので「遅刻なんてしませんよ!」と言った所みんな疑いの目で見てきた。ひどい!


 ということで次の日。


「いっけな〜い!遅刻遅刻〜!」


 私はシータ=ペンドラム、どこにでもいる普通の生贄!案の定遅刻した……。


「やばいやばいやばい!マジで殺されちゃう!昨日の今日はやばい!だけどまだ間に合うしこのペースで走れば間に合う!」


 時速100キロ。人が出していい速度ではない。ちなみにジャックさんは音を置き去りにする。

 そんなこんなでやっとの思いで間に合った、そして大変なものを見てしまった……それは。それは血をぶち撒けながら死んでいた……ギルドのみんなだった。その中には小指で岩も砕くギルド長、モブーノと、ジャックさんも混ざっていた。

 そしてそこにはもう一人いた、いや人と言ってはいけない、おそらくこの惨状の原因であろう……昨日のドラゴンがいた。


「ああ、昨日の人間か、いい所に来た!少し手伝ってくれないか?」

「……何を手伝えというの……。」

「いやだな、この人間共をだな―――」

「ギルドのみんなをどうするっていうのよ!!!!」


 そう叫んで剣を抜く!


「待て待て!話を聞け!なんか勘違いしてるだろお前!」

「話なんて聞いてやらない!この惨状が勘違いだとでも?あなたについている血が見間違えだとでも?そんな言い訳なんて聞きたくない!だからあなたの話なんて聞かない!」

「だから人間は嫌いなんだよ!話を聞かない!耳は持ってる癖に聞く耳は持たないからなあ!興奮してるな?ヒートアップしてるな?一回頭を冷やしてやるよ!<レイド>!」


 ドラゴンが魔法を唱えた……あの魔法は氷系最上位魔法<レイド>、あの霧に当たるのはまずい、近づくのもまずい。凍ってしまう、だったら……。


「剣技!<多陽王火(タピオカ)>!」

「なんだその火は?人魂みたいに浮いてるな!」


 そう、樹陽王火は宙に浮く数えるのも億劫になるほど大量の火だ。そしてその一つ一つが太陽と同じエネルギーを持っている、勿論制御はしてるので周りの物が溶けるなんて事はない。


「氷には火か!考えたな!だが浅知恵だ!火力が足りないなあ!」


 そしてドラゴンはもう一度<レイド>を唱え、霧を濃くし、氷力を増させ、私の樹陽王火をかき消した。だがしかし浅いのは……浅はかなのはあちらの方だ!


「あなたの負けよ!残念だったわね!たとえ火をかき消そうがエネルギーはそこに残っているのよ!燃焼し切っていないのよ!エネルギー保存の法則よ!エネルギー解放!爆発に巻き込まれて死んじゃいなさい!」

「エネルギー保存の法則とはちょっと違うと思うけどなあ!」


 エネルギーを解放した……というよりはエネルギーを凝縮させたのだ、それも太陽と同じエネルギーを何個もだ。一か所にエネルギーを集中させ続ければやがて押さえつけられるのに反発し一気に膨張する、ようは力を貯めたのだ。デコピンと同じ、威力は違うけど。

 そうして私は大爆発を起こさせた、周りの木やら岩やらが吹き飛び土煙が立ち込める。


「流石に殺ったでしょ、これで生きてたら化け物だわ」

「だったら俺はバケモンじゃねえな」


 声が聞こえた、土煙でドラゴンのシルエットが浮かび上がる。信じられない……死んでいなかった、化け物だ。見た目以上にモンスターだ。


「何で生きてるのよ!」

「だから生きてないよ、言ったじゃんバケモンじゃねえなって」

「何を馬鹿な事を!訳がわからない!今あなたはそこにいるじゃない!存在してるじゃない!生きてるじゃない!」

「残念ながら死んだんだよなあ、生き返ったんだよ」

「何を言って……まさか……」


 まさか不死身だとでもいうのだろうか。


「いや別に不死身って訳じゃねえよ、まあこれに関しては言い方が悪かった。留まったんだよ、この世界に。別に俺特有の能力って訳じゃない、龍は元々死んだらこの世界に留まるんだよ、残留するんだよ、ようは無限の残機だな!」


 チートだ、これはチートだ。


「な!お前が俺のことを倒すのは無理なんだ、だから諦めて話を聞いてくれ」

「フフッ、フフフッ、アーハッハッハ!」

「忘れてた、人間は絶望を叩き込むと壊れるんだった、話聞いてもらえないじゃん、しくった……いや、別に手伝って貰わなくてもいいんだけどさ」


 そう言ってドラゴンは私に近づき魔法を唱えた。


「マジでうるさいから取り敢えず気絶させるか<スタン>」


 そう言って……。馬鹿だなあ、コイツは馬鹿だ。油断大敵、どんな強いやつだって油断は最大の敵なんだって実感するよ。


「アーおかしい!死んじゃえ!」

「何だと!?」


 私は剣で刺した、確実に急所を刺した、殺すために。


「おいおい!やるじゃねえか!不意打ちとはよお!演技かよ、見抜けなかったよ!二回も俺を殺したのはお前が初めてだよ!」

「別に演技じゃないよ、元々私、狂ってるから。そしてあなたはもう一度死ぬことになるのよ、それでそれが最後、あなたは完全に死ぬ」

「ふーん……やれるもんならやってみろよ」

「それ聞くの2回目ね……殺ってあげる」


 そして私は、遅刻魔の私は……血刻魔の私は血に刻まれた(のろい)を解放する。能力解放、<魔族化>。


「お前……人間じゃなかったのか……まさか魔族が人間に化けてるなんて思いもしなかったぞ」

「別に魔族じゃないよ……人でもないけど、だけどギルドのみんなは受け入れてくれたの、私が人じゃなくても受け入れてくれた、血刻魔でも受け入れてくれた」

「はー……良い人間だなコイツら」

「馬鹿にしてるの?その良い人間を殺したのはあなたじゃない!」

「何回言ったらわかんだよ!お前勘違いしてるんだよ!だから話を聞―――」

「黙れ!」


 私はドラゴンに向かって走り出した!そして血刻の能力を発動した。それは……


「あなたの死を血に刻んで!あなたの死を魂に刻んで!あなたの死を血定事項にしてあげる!死ね!」

「マジでキレた!もー許さん!こっちも本気を出してやる!能力解放!<同化>!」


 消えた!?見えなくなるだけなら全然良いのだけど、そうではないらしい。血の痕跡が消えた、存在する限りは絶対に感じるはずの血の痕跡が消えたのだ、存在が消えたとしか―――


「オラァ!」

「ッグゥ!」


 右から強力な力で殴られた。


「なるほどね、理解したわよ。種明かししてもいい?」

「やってみな」

「口癖なの?まあいいわ、私に触れられるということは存在してるということ、だけどここには存在しないつまり……別の世界に存在していてこちらに干渉できるということね」


 つまり日常に溶け込んだのだ、日の常に溶け込みそこにいないかのように溶け込んだのだ、。


「ビックリだよ、一発殴られただけでそこまで気付くなんてな……なかなか賢いようで」

「伊達にSランクやってないわよ」

「そうかよ」


 そう言ったあとドラゴンは私の前にもう一度姿を表してこう言った。


「あらビックリ、そのまま姑息に隠れたまま攻撃してくるものだと」

「別に、ネタが割れたらいくらでも対応されるしな……魔法も使えなくなるし、割と初見殺しでデメリットありまくりなんだよな俺の能力」

「ふーん」

「なあ?もうクールダウン出来ただろ?話を聞いてくれよ」

「いやって言ったらどうするの?」

「お前のことを倒してことを勧めるしかないな」

「そう、できるものならやってみなさい」

「ふーん」


 私は剣を構え、ドラゴンは魔法を唱える準備をしている。


「最大火力でぶっ飛ばしてやるよ!<サン>!」

「殺してやる!剣技!<多陽王火>!」


 私は剣に火を纏わせ近接戦を仕掛けに行く、ドラゴンも爪に火を纏わせ近づいてくる。最大火力VS最大火力、剣がドラゴンの心臓を捉え、爪が私に触れようというところで水が刺された。文字通り『水』が『刺』されたのだ。


「<水蜂>!」

「「痛!」」


 ドラゴンと私は蜂を模した水に刺された、傷が癒えていく。というかこの蜂はジャックさんの……


「落ち着いてください!というか周りを見てください!更地ですよ!どんな火力で殴りあったんですか!?」

「ウワーン!!!!ジャックさーん!!!」


 感極まって飛びつき抱きついてしまった。


「生きてたんですね!よかったー!!!」

「ギリギリですけどね、あそこにいるドラゴンさんが助けてくれなければ死んでましたけどね」

「え?じゃあ私勘違いして恩人殺そうとしてたってこと?」

「おう、お前俺が何回も言ってたこときかなかったもんな、腹立ちすぎて手抜くの忘れるところだったわ」

「は?ガチだったじゃん」

「は?違うが?俺ドラゴンだぞ、人間なんか手抜かなかったら一瞬で殺せるからな」

「はい!そこまでにしてください!このままだとまた始まりますから!」

「てかアンタデカイのよ!邪魔!小さくなれないの?」

「は?殺すぞ?」

「やれるもんならやってみなさい」

「オラァ!そこまでにしろって言っただろうが!」


 地面に頭から埋められた。


「え?つよ。何で死にかかってたのってレベルだし、俺が助ける必要なかった?」

「いえいえ、助けて貰って助かりましたよ、私不意討ちには弱いんですよ」

「あ、そういうタイプか」

「ええ、そういうタイプです」

「何このやりとり!私を置いてかないでよ!ピエン!」


 その後、みんなの治療と話を聞くためにいちどギルドへ戻ることになり、ここで一つ問題が出た。ドラゴンどうやってギルドに入って貰おう問題だ。普通にドラゴンでかい、マジでデカイのよ。もう邪魔って言ってもいいレベルで……もう言ったけどさ。


「え?ギルドの前でいいじゃん、俺が建物の中に入る必要ないと思うんだが」

「見てもらいたい物があるので必要あります、ちなみに外に持ち出せない物ですよ」

「うーん、それは気になるからいいよ入るわ」

「そんな軽いノリで同意するんだったら最初からしぶんな!」

「は?殺すぞ?」

「その手には乗らない!ワザと喧嘩してジャックさんに黙らさせようという魂胆でしょ!」

「バレちゃった」


 ということで、ドラゴンさんがちっさくなるそうです。手乗りドラゴンとか憧れるよねー。でもそんだけちっさくなったら蜥蜴と変わんないと思うからやっぱ憧れないわ。

 ドラゴンさんから煙が出てきた。そして煙が晴れて出てきたのは蜥蜴ではなく……。


「このイケメン誰?」

「俺だが?」

「え、めっちゃタイプだわ、結婚を前提に付き合ってくんない?」

「は?頭大丈夫かお前?」


 出てきたのは、黒髪黒目の少年だった……。

何だこれ?

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