+05 報告書No.02
特記報告。
〔添付file〕
未だ現場に遭遇はしていないが、ターゲット本人から興味深い情報を入手した。
事前に入手された情報は、氷山の一角に過ぎなかった。
ターゲットは、警察官になる以前から、数多くの行方不明者を発見しており、総数は警察に記録されている物の数倍に及ぶ。
主に在所周辺に集中しているが、数パーセントは百キロ以上離れた場所で発見されている。
注視すべきは、その遠方発見のほとんどが、ゲストに関わる物であり、ピックアップ位置より、直線距離で二百キロ以上、ターゲット寄りで発見された事例も、数件ある。
ターゲット本人は「守護天使のおかげ」などと言っているが、今のところ、チャネラーの可能性は否定できない。
:送信
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パソコンを終了させ、MicroSDドライブからメディアを抜いて、いつもの場所に収納しながら、ジョンソンは考えていた。
須藤から貰ったデータには、『何かの参考になるかも』と言う記述付きで、彼の過去の救助履歴まで入っていた。
ターゲットにしてみれば、他者との実積比較など出来ないので、『多少は多いかも?』くらいなのだろうが、比較出来る公的機関にしてみれば、異例の量である。
「これは、事実なのだろうか?」
上司に、臨時の報告を送信したジョンソンは、その異常なデータに、正直、混乱していた。
これは逆に、能力判定の為の、ダミーなんじゃないか?
そう、思わざるを得ない内容だ。
その様に彼は感じた。
「もし、この任務がダミーなら、須藤も組織の人間か?」
ジョンソンは思考を重ねる。
署内で見た奇異な行動や『守護天使』などと言う発言など、局員の分析力を試す物とも言えなくはない。
しかし、本当の超能力者や霊能力者の行動は、説明されていない非能力者からすれば、奇異な物が殆どらしい。
ましてや、これがダミーだとすれば、『守護天使の御導き』などではなく、『宇宙人との交信』と言った方がテストになるだろう。
いや、それだとダイレクト過ぎるか?
「実質、まだ一日目だ。結論を出すのは早すぎる。期限付きだが急ぐ調査でもない。」
ジョンソンが調査に与えられた期間は、約二週間だ。
まだまだチャンスは有るだろう。
例え、これが本命のミッションで、有意義な結果が得られなくても、こちらの本当の目的を知られなければ、問題はない。
ジョンソンは懐疑的ながらも、判断を先送りする事にした。
時間は、まだ18時前だ。
彼は、背広の内ポケットから地図を取り出す。
署から帰る前に、須藤巡査から貰った物で近くのホームセンターと本署の場所のがマーキングされている。
須藤巡査に、警察署の近くにホテルを取ったが近所の環境が芳しくない事を話したら、自転車の購入を勧められたのだ。
帰国時、処分に困れば警察署で処分してくれるそうだ。
実は、警察署にも自転車は幾つか有ったが、流石に署の備品を借りる訳にもいかず、違反で保管してある物を提供する事も出来ない。
巡回の帰りに寄って貰ったが、アメリカの郊外型ショッピングセンターに似ており、広い駐車場に、平屋の店舗だった。
仕事の最中だったし、セダンタイプの覆面パトカーに積めるとは思えない。
店舗の前で停まるに留めてもらった。
確か、営業時間は20時30分までだった。
「203号室の、マーク・ジョンソンだが、タクシーの手配を頼みたい。」
ホテルの内線電話で、タクシーの手配を頼む。
五~十分位で来るそうだ。
背広から、カジュアルな服装に着替えて、一階のラウンジに向かう。
「他には・・・・バッテリーを買っておかなくてはならなかったな。『デンチ』と呼ぶのだったか。」
備品のバッテリー予備を準備しておくべきだろうと、彼は考えている。
ラウンジに着くと、受付に合図をして椅子に腰掛け、車を待つジョンソンだった。