表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
檸檬少女の魔法とは  作者: 由比衣 紬
1/1

暑い、夏の日常



日がゆっくりと、ゆっくりと沈み、青空が徐々に橙の黄昏から濃い藍色に変わる。藍色が深く、深く広がって、辺りは暗闇に包まれる。


〝今日が終わる〟その感覚を、僕はまだ覚えてる。






「暑いね〜〜〜〜〜!!」

「夏だからね」




まだしつこい程に、蝉の声が聴こえる。

空は橙。

青でもなく藍でもない、この色の時間帯を特別に感じる。

田舎の無人駅、辺りに誰もいないことを良いことに、腹の底から叫んだのに対し、ぐったりした怜は氷のようにピシャリと季節を指摘する。

それを見て、春はベンチに体を預け、暑さを耐えた。




「クールだねぇ、怜ちゃんは。さすが冬の一族……」

「あー……もう。二人でいるときは家の話するのやめよって言ってるのに……」

「あは、ごめんごめん。でもさ、ほら」



ぺらっと、鞄から出したのは 進路希望書。

にこにこ笑顔の春を見て、怜は深く、深く溜息をついた。




「春は?なんて書くの?」


「決まっってんじゃんっっ!!!」




春が立つ、風が吹く、肩の長さの茶髪が揺れる

色素の薄い、茶色の瞳が、より一層きらめく。

日がゆっくりと落ちて、橙と藍が混ざり合う。




「怜と同じ、私も檸檬になる」



そう言って笑う春に、怜は呆れながらも笑顔を見せた。







人は眠らないーー。いや、眠る必要がなくなった。



あの夜から。あの夜の日、誰もが「おやすみ」とは言ったものの、眠れない夜を過ごした。ベッドに入って、羊を数えても眠くならない。いつか眠くなるだろうと、ブルーライトを浴び続けても眠くならない。「特技は〜、どこでも眠れます!」なんて言ってたアイドルも眠れなかった。


あの夜の日、〝睡眠〟と引き換えになったように、大抵の人は少しの魔力を手に入れた。そのことに気付いた人は、いなかった……いや、厨二病患者は、気付いたのかもしれないけど。



次の日の夜も、その次の日の夜も、眠れなかった。「俺、今日徹夜でさ〜」なんてマウントとられても、全員眠ってないのである。逆に、「え、お前もなの?」ってなるだけである。少しずつ、世間も気付いた。ニュースに取り上げられ、街角インタビューが行われ、〝人が眠っていない事実〟に気付き始めた。宇宙人の仕業だとか、人間がついに進化しただとか、各メディアが騒いだ。



しかし、〝慣れ〟とは恐ろしいもので、騒いでいたのも一瞬。すぐに眠らないことは〝日常生活〟に変わり、人は眠らなくなった。




大抵の人が、少しの魔力に気付くのは、〝慣れ〟からほんの少し後のことだった。





「ねえ!このあとどうする?」

くるっと振り返ると昼学のブレザーのスカートがふわっと浮かぶ。

「私は家に帰って着替えてくるよ。春は……制服また持ち歩いてるの?」

「えへへ、だってこのセーラー可愛くない?笑」

「もう3年なのに、ずっと制服好きだね。さすがマニア。」

「今を楽しまないとね!じゃあ先に行くから教室でね!」


「「 じゃあ、 またね ! 」」




眠らない世界、それが日常になってから中高生に、『昼学校』『夜学校』が課されることとなった。

『昼学校』それは従来通りの基礎知識。国語、数学、、以前からある大人たちも通ってきた学校だ。

『夜学校』これはいわゆる魔法学校だ。政府は魔力を調整するため、夜学を義務教育と課した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ