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蛇足話 迷惑
髪を落とし、
名を幽斎と改め、
これからの世を生きていく。
京の町はすでに落ち着きを取り戻し、
先の混乱など無かったかのように皆日常を振る舞っている。
自分自身も似たようなものだ、
長年の友を失ったことによる心痛は癒えることは無いだろう、
しかしそれでも日常を振る舞い生きていかねばならぬ、
それがこの戦乱の世に生きるということだ。
「幽斎様」
呼びかけられた声に顔を向けると、目の前に頭を下げる男の姿があった。
せっかく気持ちを新たにしたところだというのに、無粋にもほどがある。
「……兼和」
「お待ちしておりました」
今回のお前の行動には本当に迷惑したと言いつつ男は恭しく顔を上げる、そこには辟易するほど見飽きた顔があった。
迷惑(めいわく):困惑する、戸惑う、途方に暮れる(古語)




