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貧乏貴族ノードの冒険譚  作者: 黒川彰一(zip少輔)
第二章 見習い竜騎士ノード

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31/63

7 アルバ村にて

信じられるか? 先週金曜日朝の時点では、この作品ブクマ19しか無かったんだぜ……?


それまでに見てくださった方も、それから見てくださった方も、ありがとうございます!

日刊ジャンル別ランキングのハイファンタジー部門で、5位以内に入れたのも応援してくださるファンの皆様のお陰です!

サンキューなす!


あと誤字訂正報告感謝です、誤字しまくってて笑えない。


夕方の投稿は未定……


 王都から馬車を走らせ、数日間。

 段々道の舗装は悪くなり、ガタゴト揺れる馬車の中は居心地は全く良くない。旅の道連れであるニュートは、初めはその揺れを楽しんでいたが、次第に飽きて、ついに辟易としはじめ、とうとう最低限の時(ご飯時と夜、通行人がいた場合)以外には、馬車に寄り付かなくなった。

 王都よりも北に来たことで、涼しくなった上空を気持ちよく飛ぶ飛竜の子供の姿を見て、ノードは早くニュートが大人になってノードをその背に乗せてくれることを夢想した。

 しかし、現実には舗装もない、草が刈られただけのド田舎道をひたすら地に這って移動しているのであり、その現実は次兄の治めるアルバ村に到着するまで、しばらく続くことになった。


 もう夏は終わりが近付き、日の入りの時刻は日に日に早まっていた。王都よりもさらに北のアルバ村では、その傾向がより顕著であるようだ。

 そろそろ着く頃なのだが。

 手紙に書かれていたアルバ村の位置からすると、既に近辺まできている筈だ。ノードはそう思ったが村の姿はまだ見えず、次第に辺りは薄暗くなり始める。

 山の稜線に赤く染まった夕日が段々と沈み、ノードが夜営をする選択肢を真剣に考え始めた頃、ようやく村の姿が田舎道の先に見えた。

 勿体ないと思いつつ、馬車の先に提燈カンテラを吊るし、村に見える僅かな明かりを頼りに薄暗いから暗いへと変貌しつつある道を進む。

 ようやっとのことでアルバ村に到着したときには、すでに辺りは真っ暗で、村の中は完全に夜の帳に覆われていた。

 

 ノードが馬車の先に吊るしていた提燈カンテラの光を、村側でも確認していたのだろう。

 村の中から自警団らしき青年が、松明をもって誰何しにやってきた。


「こんな夜に何のようだ」

「ここはアルバ村だな? 私はノード・フェリス。アルバ村領主である、ヨハン・ド=オブリエール・フォン=アルバの弟だ」

「しょ、少々お待ちを!」


 ノードが名乗り、兄のヨハンに呼び出された旨を告げると、その青年は、暗闇に潜んでいた他の自警団の一人を使いに走らせた。

 ノードが村の入り口で待機していると、やがてその使いは別の男性を伴って戻ってきた。

 その男性は提燈カンテラを持っており、その黄色い光に照らされた顔は中年の男性のものだった。皺が寄った顔に汗を浮かべているところを見るに、走って来たらしい。


「こ、これはお待たせ致しました、領主のオブリエール様がお待ちです。どうぞ、こちらに」


 どうやら無事にノードの存在が耳に届いていたようで、ノードはその中年の男性に先導されて馬車を歩かせた。

 村の中なのでゆっくりとした速度だが、馬車の音は夜の村に響いた。建物から、一体何事かと様子を見ようとする住人の視線を感じながら移動を続けると、一際大きな屋敷の姿が見えた。


 その屋敷は村の中の小高い丘の上に立っていた。

 そこに続く道は傾斜があり、木製の柵と門で囲まれていた。

 有事にはその屋敷が城のような役割になるのだろう。

 ノードは、夜闇の中からでも僅かに読み取れた地形などの情報を元に、村との位置関係や屋敷が持つ役割を導き出した。

 これらは全て半年以上に及ぶ鉄竜騎士団での教育の成果であり、ノードは実地ぼうけんでその学んだ内容を消化していた。


 門のところには執事服を着た男性がおり、そこで中年の男性は案内を引き継いだ。

 中年男性の格好は、田舎の村の人間としては清潔な格好で、綿のパンツとシャツの上に、皮のベストとどちらかと言えば都市部の住人のような装いであった。

 おそらく彼は村の村長か、その縁者あたりなのかもしれない。

 そんなことをノードは考えながら、執事に話しかけた。


「兄上、ヨハン・ド=オブリエール卿は御在宅か?」

「屋敷にて居られます」

「ノード・フェリスです。馬車はそのまま乗り込ませれば?」

「いえ、ここでお降りいただければ幸いです。あとはこちらで面倒を見させていただきます」


「では頼む」と短く答え、ノードは馬車を降りた。

 手には身の回りの荷物だけ持った。

 荷台には王都から持参した手土産──母親のマリアとアレクが見繕った──がある旨を執事に伝えると、後で運んでくれるようであった。


 そして、「ニュート」とノードが呼ぶと、馬車の中から深緑の鱗をした飛竜が姿を現した。

 松明や提燈ランタンの光に鱗が照らされ、闇の中に爛々と輝く。

 人とは大きく異なるその異形が闇の中に表れて驚いたのか、中年の男は「わあ!」と叫び声を上げた。

 執事も驚いたようで、目を見開いているのが見てとれた。


「きゅ~」


 ノードが仕種で近くに来させ、頭を撫でるとこそばゆいような鳴き声を上げた。その様子で危険な存在ではないと理解し、凍りついた面々は再び夜闇の中で動き出した。


「こいつの寝る場所も必要なんだが」

「ええと、用意いたします」


 あと食事も、ノードがそう言うと、少し困った声色で執事は返事をした。


§


「遠路はるばるよく来たな、ノード……!?」

「兄上もお変わり無いようで何よりです」


 屋敷の中で出迎えてくれた兄のヨハンは、まず扉を潜って現れたノードの顔を見て笑顔を浮かべ、そして口上の途中でその後ろからひょっこり顔を出したニュートを見て驚いて台詞を中断させた。

 一方のノードはどうかしたかと言わんばかりに、素知らぬ顔で久しぶりの再会をしゅくす言葉を述べる。


 してやられた、そんな表情を浮かべたヨハンの表情を見て、ノードはニヤリ、と悪戯を成功させたような笑顔を浮かべる。

 そうして今度こそ、互いに抱き締め合うように肩を抱き、兄弟との再会を喜びあった。


 続いて、ヨハンの奥方であるオブリエール夫人、その父母である先代オブリエール当主アルバ卿とその夫人、オブリエール夫人の妹たちと挨拶を交わした。

 フェリス家の縁戚だけあってか、オブリエール家も子沢山であった。夫人の妹は四人おり、合計五人姉妹であった。

 みな一様に深緑の鱗をもつ飛竜の姿を見て驚いたようである。


 オブリエール家の面々を驚かせた張本人であるニュートはと言うと、オブリエール家邸宅の、フェリス家とは異なる豪華な内装──壺や絵や、華やかな装飾が施された燭台に壁紙──に興味を示しているようだった。(フェリス家の内装は“質実剛健“であり、そのような装飾品はまず見当たらない)

 キョロキョロと周囲を見渡したり、鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。

 壊されたら敵わないので、ノードはニュートに大人しくしているよう指示を出し、ニュートはそれに素直に従っていた。


「これが……あの?」

「ええ、ご覧になったでしょう?」


 数ヶ月前、初春になされた姉であるハンナの結婚式に、ニュートもノードの外套ローブに隠されるようにして参加していた。

 といってもその存在は列席者にはバレバレであり、フェリス家の親戚であるオブリエール家の当主であり兄弟でもあるヨハンや、オブリエール夫人たちは、ニュートの姿を見ていた筈である。

 しかしその体は産まれたばかりの幼竜(孵ったばかりの雛)であり、半年ばかりの間にこれほど大きく成長しているとは、露ほどにも思わなかったのである。


「ニュート、挨拶」

「きゅう」


 ノードが声をかけると、ニュートは軽く鳴いた。

 流石に挨拶を理解したわけではなく、ノードが鳴けという合図を出しただけのことである。

 だが、その様子は滑稽で、そしてまだ幼さの残るニュートの愛らしさを強調しており、ノードはオブリエール家の面々に残っていたニュートへの警戒心を解くことに成功していた。


§


 挨拶を済ませた後、ノードはオブリエール家の食卓へと招かれていた。

 食卓にはアルバ村で採れたという肉や野菜が使われた料理を振る舞われた。その食事は決して贅を凝らした高級料理などではなく、田舎の家庭料理といった風情であった。

 オブリエール家は数百人規模の小さな領地を治める小貴族でしかない。それゆえ貴族といっても、実際には土豪や庄家に毛が生えた存在であり、生活も平民が思い描くような絢爛豪華なものとは程遠い。それらは侯爵や伯爵といった、大貴族の生活なのだ。

 だが、小規模とはいえ領地をもつオブリエール家の財政状況は、名誉以外には武器と鎧くらいしかないフェリス家とは雲泥の違いである。

 オブリエール家の面々が「粗末な食事で恐縮ですが」と謙遜する田舎料理も、ノードにとっては新鮮な野菜と肉、そして香ばしい香りたつ焼き立てのパンというだけで、十二分にご馳走なのであった。


 貴族の食卓に招かれる、ということはただの食事会を意味しない。

 重要な案件の打ち合わせや政治闘争の舞台であり、ときには陰謀の隠れ蓑になることもある。が、それはあくまで通常の場合。

 ノードのように、オブリエール家の縁続きで且つ当主のヨハンの血を分けた兄弟であれば、単なる家族親戚の交流会だ。

 美味しい食事と領地で作られているという葡萄酒を飲みながら会話をすれば、話題は自然と王都の政治状況や家族の近況などになる。


「ノード君もそろそろ結婚などを考えるのではないかね?」

「いやぁ、それがまだまだ。見習いの身では遠い話ですよ」

「見習いというと、たしか竜騎士の?」

「ええまあ。末席ながら鉄竜騎士団で鍛えられています」

「その歳で鉄竜騎士団とは! お父上もさぞ鼻が高いだろう!」

「私なぞまだまだですよ。騎士団の先輩方などは……」


 赤い葡萄酒のグラスを片手に会話を続ければ、酒精アルコールで唇は滑りやすくなり、話が盛り上がる。

 場が温まった頃には、話題(酒の肴)はノード自身へと移り変わっていた。

 ノードが鉄竜騎士団に入った、というのはフェリス家とその近しい親戚には公然と知られていた。

 老齢に達し、家督を娘婿のヨハンへと譲った先代オブリエール当主も、“ド“の称号を持つ一人の騎士である。

 近衛と並んで騎士の花形である鉄竜騎士団の話題などは、老いてなお益々盛んな先代オブリエール卿にも、興味がそそられるものらしい。


「ほう、ではその竜騎士だがどれくらい……」

「そうですね、私が鍛練場で見た光景ですが……」


 ノードは機密になる情報は話せない(そもそも知らない)が、それでも見習いとはいえ関係者の口から語られる鉄竜騎士団のありのままの姿は、自然豊かな閑静な環境にある──端的に言えば娯楽が少ない──アルバ村の領主には、十分刺激的で面白い話であるようだ。

 名前はよく知っていても、実際の鉄竜騎士団がどんなものであるのか、その内情を知っている貴族は、王都でもかなり少ない。

 それは竜騎士が国の最高戦力であるため、秘匿されているからなどという話ではなく、純粋に関わりを持ちにくいからだ。

 鉄竜騎士団と並んで人気の近衛騎士団の方であれば衆目への露出は高い。

 王家の護衛が主任務の近衛騎士は、王城に行けば必ず目にするし、平民ならばともかく、直臣貴族であれば王族に謁見する機会はそれなりに訪れるからだ。家督継承時の叙勲式や、数年に一度王城に出仕(参勤交代)する時などがそれに当たる。

 また運良く軍学校で王太子の同級生となることがあれば、近衛騎士団に入る可能性すら出てくる。

 むしろ完全に実力のみで登用され、普段は駐屯地で訓練する鉄竜騎士団の方が、秘密の幕衣ヴェールに包まれていた。

 地方の貴族が目にすることがあるとしたら、それは合同演習のときくらいなものだ。


「そういえば、たしか東方騎士団は今年の大規模演習に参加していたと聞きましたが」

「うむ、我がアルバ領からも婿殿が参加したぞ」

「どんなものだったのですか、兄上?」

「いやぁ、大変という他無かったね……」


 思い出し、話の俎上に上げてみる。

 アルバ村は北東という、北と東に挟まれた方角に位置しているが、所属は東方騎士団だった筈だ。

 するとやはりオブリエール家も演習に参加していたようで、大規模演習についての話がヨハンの口から話された。

 演習の結果は、既に王都で父親のアルバートと長兄のアルビレオが会話していたので聞き及んでいる。その演習でアルビレオは中々巧みな指揮をして小隊を率いたらしく、近々出世するかもなどと話していた。それを聞いた父親のアルバートが「そろそろ家督を譲るか……」と話していたので、フェリス家にも新たな変化が訪れるかもしれない。


「仕事の話は明日にしようと思っていたが、丁度いいな。ノード(お前)に来て貰ったのはその件とも関わりがあるんだ」

「演習が? たしか依頼内容は騎士蜘蛛ナイトスパイダーの討伐だと伺っていますが」

「うん、まあそうなんだが……」


 ヨハン兄の言葉は歯切れが悪い。

 話がアルバ領に深く関わるものに変化して、会話の雰囲気トーンが落ちる。

 先ほどまで賑やかだった食卓が一気に静かになり、食器の擦れ合う音がやけに食堂内に響いた。

 ノードは会話の変化を感じ取り、頭の思考を切り替えた。

 葡萄酒ワインの入ったグラスを机の上、純白に洗われた食布クロスに置く。


「騎士団演習に俺が出ていた間のことなんだが、森の中で木こりがゴブリンの足跡を見かけてな。少数ならともかく、数が多いようだから、近隣のギルドに冒険者を頼んだ」


 何から話すかを頭の中で整理したヨハンが、再び口を開く。

 ノードは黙って話の成り行きを聞いた。


「その討伐自体は成功したんだが、その途中で冒険者が『でかい蜘蛛の巣』を発見したと報告してな。もっと大物の魔物だと言うんで、その討伐も頼もうと思ったんだが……ちょうど冒険者が出払っていた」


 さらに話は続いた。

 大規模演習によって騎士団が出払っており、近隣の冒険者ギルドに依頼をしたが、冒険者たちが他の仕事に出ているという。予定が空いている冒険者は玉石級冒険者ストーン以下しか居らず、報告から予想された魔物──騎士蜘蛛と戦える水晶級冒険者クリスタル以上の冒険者は居なかった。

 そこで、王都にある冒険者ギルドの本部に依頼を回すことになった。その際に、王都にいる実弟であるノードが水晶級冒険者クリスタルであることを思い出し、指名依頼を出した、という話だった。


 成る程、ノードは納得して頷いた。

 ハミル王国の冒険者ギルドは、王都に本部を置いている。

 そして各地の都市に冒険者ギルドの支部を置き、場合によっては遠方の町や村などに、ギルドの出張所を設置する。

 冒険者たちは、自分たちが活動する拠点を好きな所に構えるが、多くは便利な大都市に住みたがる。これは良質な武具や道具、そして依頼が集まるのが規模の大きい都市だからであり、当然の帰結であった。

 地方の町や村に住む冒険者もいるが、大抵は低級の冒険者や引退しかけの一線どころか二線も退いた老齢冒険者ロートルが殆どだ。玉石級冒険者ストーン水晶級冒険者クリスタルが殆どで、赤銅級冒険者ブロンズをたまに見かける、といった具合だとノードは聞いたことがあった。

 それは地方のギルドでは競合相手が少なく、地方の村々から出される依頼をこなせば低級の冒険者でも食っていけるからであり、またそもそも地方の村が遭遇する危機というのは、水晶級冒険者クリスタルが居れば十分対応が出来るものばかりだからだ。

 現に、今回の依頼の討伐対象である魔物も、水晶級クリスタルの魔物である『騎士蜘蛛ナイトスパイダー』だ。

 通常であれば、アルバ村に一番近い町の冒険者ギルドから、水晶級冒険者クリスタルが派遣されて問題は解決であった。


 ただ、時節が悪かった。


 ハミル王国の七大騎士団のうち、東方騎士団とハミル王国騎士団、そして鉄竜騎士団の三騎士団が参加するという、数年に一度行われるかどうかという規模の演習が始まっていたのだ。

 これは、かつての戦争で東方の国家に勝利して領地を奪ったことが遠因となっている。

 未だにハミル王国と同規模の国家と国境を接している西方と違い、東方はその敵国の脅威が著しく低下していた。それゆえにここ十数年の間に、警戒するべき対象()がいない東方騎士団の練度は、目を覆いたくなる惨状を呈していた。もはや主要街道の警備が主任務であり、弱い魔物はともかく、仮に他方面の騎士団と戦えばボロボロに負けてしまうだろう。

 そんな惨憺たる状況に目を瞑ることが出来なくなったハミル王国“上層部“の鶴の一声によって、東方騎士団を鍛え直すことが決まったのだった。

 現在、東方騎士団はその面々が必死に鍛え直している最中であり、続々と戦闘演習や行軍訓練などが予定されているという。

 ということはだ。

 現在、東方の騎士団は通常の任務をすることが出来ないということであり、街道警備などの依頼が王国東方に位置している冒険者ギルドに、次々と依頼として出(アウトソーシング)されていた。

 王国東方の各冒険者ギルドには依頼が殺到し、冒険者たちはその突如として舞い込んだ稼ぎ時(バブル)に湧いていた。

 そうなると、困るのはアルバ村のような場合である。冒険者に来てほしいのに、人手が足らないので依頼が放置されたままになってしまうのである。


「それにちょっと入り用でな……」


 さらにバツが悪そうにヨハンが言うのは、報酬が少ないことだろう。聞けばその演習の為に、新しい武具を買い揃えたりなどして出費が相次いだのだという。

 水晶級冒険者クリスタルの依頼料は法外に高い訳ではないが、減らせる出費は少しでも減らしたいというのが、アルバ村の、ひいてはそれを治めるオブリエール家の懐事情なのだろう。


 ノードは内心では「堪ったものではない」と憤慨したい気分であったが、オブリエール家は昔からフェリス家を支援してくれた親戚だ。またその当主のヨハンが実の兄ともなれば、良いようにこき使われるのだとしても、断る道理はノードには無かった。


「じゃあ、その騎士蜘蛛ナイトスパイダーの痕跡について教えてもらいたいんだが……」

「ああ! よろしく頼む」


 ノードは気付かれないように溜め息を一つ吐き出すと、仕事の話を続けた。

 隣で、手を机の下に隠すようにして、オブリエール夫人の妹がニュートの頭をこっそり撫でているのが見えた。

というわけで次兄登場。

まあ殆ど容姿とかの描写ないけども。


ちなみに貴族称号とかのルールは全部創作(ウソ)だから信じてはいけないぞ!

小説で読んだ適当知識をどや顔で友人に説明したりすると、大体黒歴史になります。(ソースは作者)


長々と後書きに書くのもあれですが、少し誰得設定を書いておきます。読み飛ばし可(むしろ推奨)


【西方騎士団】

 ハミル王国と同じくらいの規模を持つ国と国境を接している。一番戦争の危機感があるので、練度は高い。


【北方騎士団】

 大山脈に阻まれ、他国に侵攻される危機はないが、その分北方では魔物の脅威が高く、有事に備えているため練度は高い。

 また、東方及び西方で異変があれば増援を送る役割もある。


【南方騎士団】

 南方は海まで領地が広がっていて、南西方面はともかく戦争の危機は薄い。

 南方は温暖で土壌も豊かなため作物がよくとれる。さらに港から物流があるのでかなり豊かな地方。その分、魔物や盗賊の被害を嫌うので、街道警備はガチであり、予算もあるから割りと強い。

 北と同じく増援の役割ももつ。


【東方騎士団】

 実は昔は地方騎士団最強だった。

 しかし十数年前に戦争で、東方の国を半殺しにして領土の大半を奪ったので、今は敵が雑魚化している。それに合わせて東方騎士団も弱体化。

 昔を知るOBとかはボヤいている。現在テコ入れ中。


【ハミル王国騎士団】

 中央騎士団とも言える。国軍。

 騎士の割合が地方騎士団に比べて多く、強い。

 規模自体も七大騎士団の中でも最大。

 戦争があったらこれで撃退、侵攻する。

 ノードの父親と長兄は(というか大体の騎士は)ここに所属する。給料は安い。


【近衛騎士団】

 王家の護衛が主任務。唯一、“国王“が直接雇ってる騎士団。国王に直接仕えているため、仮に反乱があっても近衛は裏切らない(はず)。

 厳しさ訓練があるので腕は確かだが、それよりも重要視されるのは『忠誠心』。なので、学友とかそういった存在が選ばれやすい。


【鉄竜騎士団】

 騎兵がいるなら、飛竜に乗せたらEじゃん!という無茶ぶりで発生した兵科。実際強い。

 飛竜を従わせるため、実力が無いと務まらないため、所属する団員は、冒険者なら最低でも黒鉄級冒険者アイアン、殆どは白銀級冒険者シルバーなみの実力がある。化け物集団。

 そのため、竜騎士の数は少なかったのだが、ノードのせいで変革か起きる可能性が……?(予定は未定)

 ちなみにめちゃくちゃ大食らいのため、維持コストがヤバい。その維持費は人工の迷宮ダンジョンから魔石を産出できるようになったから、捻出出来てるという設定がある。


【武家】

 フェリス家のような『世襲貴族』の『騎士』で王家に直接仕えている『直臣』の呼び方。領地を持つ領主貴族はこう呼ばれない。要は旗本。

 ニートしてても貰える貴族年金という俸録があり、国王の財布から支出されている。近衛と並んで重要な国王の私兵。

 ハミル王国騎士団に入団すると、別に給料が貰えるが、それは“王国“の会計予算から出ている。ハミル王国では、王国の収入と国王の収入は分けられているのだ!

 ハミル王国騎士団を、文官や他の大貴族に乗っ取られないようにするために、国王に忠誠を誓っている武家が、ハミル王国騎士団に一杯入り込んでいる。

 ただし年金の金額は安い。仕方ないね、出費は出来るだけ抑えたいからね。代わりに名誉はある(名誉しかない)

国王は鉄竜騎士団も直属にしたいと考えているが、出費がヤバすぎて無理という悲しい現実がある。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです [気になる点] もうちょっとノードの容姿の描写がほしいです。
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