靴、裸足事件
靴、裸足事件
俺は小学校6年生だった。
強いものいじめに遭い、へーんとつっぱる真面目で強気なお子様だった。
「宿題したのか?」
と、オヤジに聞かれると
「一時間前にやった」
と言いながらゲームをやっているほどだった。今思えば、小学校なんて遊んで遊んで遊び通していればよかったと、後悔している。爆破スマシに怒られそうだ、遊ばな過ぎて。
俺は、あまり怒れない。怒り方を知らないと言ってもいい。しかし、優しいかどうか問われたら優しくはない。
自分に厳しく、他人に厳しくをモットーとしていた。
中学に上がると、平日6時間、休日8時間机に向かっていた。今思えば、正気の沙汰ではない。もっと遊べばよかったと思う。
大学入試も、とある事情で勉強ができなかった。しかし、一年の時の評定平均が4.0だったので推薦入試でとある大学に入学する事が出来た。
さて、ここで話を本題に戻そう。
舞台は小学校6年の時、春か夏頃のコトである。下校時刻に、後輩の1年生二人がバラスの砂利道を裸足で歩いていた。
どうしたのと聞くと、靴隠されたと返してきた。仕方ねぇな、めんどくさがりの俺は親族の4年生に言った。
「とりあえず、俺のランドセル持て」
多分だが、その4年生はイラついただろう。ランドセルを持たせて、今度は1年生に話し掛けた。
「二人は無理だけど、どちらか一人おぶってあげる。どっちがいい?」
現実的に見て、二人を背負うのは無理だった。剣道3級くらいで、筋力はクラス一番だったが二人背負うことはできない。
「はい!」
一人が手を上げた。
「じゃあ、k君で良いかい? y君」
質問するとこう返ってきた。
「うん! k君をおぶってあげてよ」
俺はこう返す。
「ホントに大丈夫?」
「平気!」
二つ返事で返ってきた。
(コイツ……俺と似て、いじっぱりだなぁ……)
少し顔がほころんだ。
と、同時に心配だった。バラスの砂利道でさぞかし足の裏が痛かろうにと、心配していた。しかし、歩くしかなかった。前に進んだ。
暫くすると誰かが横に現れた。小学校唯一の同級生のs君だ。しかも、1年生のy君をおぶっていた。後ろを振り返ると、親族の4年生がランドセルを3つ担いでいた。少し笑えたが、横に振り向く。
『ありがとう』とか、
『どしたん』とか
話した記憶はないけれど、とても心地よかった。二人はバラスの砂利道を超えるまで一年生をおぶって帰った。
バラスの砂利道が終わると、キレイに舗装している道になる。そこの三差路で同級生のs君は道を違う。
じゃあね、
とs君はy君をキレイな道に下ろす。その時俺は思った。
(さっき平気って強がってたけどまだまだ小学校1年生、ちゃんと甘えてくるんだなぁ)
気持ちがほっこりした。でも、男の強がりについて、自分と似ているモノを感じた俺は舗装された道に差し掛かったところで聞いた。
「ここからは痛くないよ。自分で歩けるよね?」
k君は嫌だといっていたが、y君は
「分かった! ありがとうs君」
と言い降りてキレイな舗装道を歩き出した。それを見たk君も舗装胴を歩き出した。
(これでいい、いつまでもおんぶにだっこじゃ、俺だったら納得しない)
最寄りのバス停へ着いた。停留所で座っていると、同級生のs君が帰り道と逆のバス停まで来ていた。
「どうしたの?」
と聞くと
「何でもないよ」
と返された。不思議な気持ちになった一日だった。