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黒い魔弾と白い天使  作者: 白瀬多幸
第1章 魔弾
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00.プロローグ


「畜生、地獄だ!糞だ!糞が!」


塹壕から乗り出した、黒い野戦服を着崩した一人の男が小銃を乱射しながら大声を上げる。


「最悪だ!まるで濁流だ!こんな銃で、こんな人数であんなの止められるかよ!?」


塹壕の中で小銃の弾を交換する男が大声を上げる。


「衛生兵!衛生兵!回復ヒール系の異能タレント持ちはいないのか!?アビルの足が食われた!糞ったれ!」


塹壕の中に両脚を失った男を引きずりながら、とある男は大声を上げる。


回復系異能ヒールタレント使いならさっき奴らの腹ん中に入ったよ!糞が!」


塹壕から飛び出し、小銃を撃ち続ける男が大声を上げる。


「なんなんだ糞!今までこんなに大量に湧いて出てきた事なんて無かったじゃねぇか!」


満天の星々が輝く下、男達が相手にしているのは敵対する国の兵士でもなければ、怪物モンスターの群れでも無かった。


異形。


男達が一心不乱に撃ち続けているその先には、異形の存在が蠢き、地面を覆い尽くさんとしている。


銃弾は異形に撃ち込まれ、殺されていく、が。それらを上回る速度でで異形達は男達に迫っていた。


「喚くな!騒ぐな!ありったけの銀弾を奴らに叩きつけろ!ここは地獄の一丁目、最終防衛ラインで、俺達はあいつらアンノウンを殺せる唯一無二の英雄サマ、狩兵イェーガーだぞ!」


「ここが崩れたらロスゲン前線は終わりだ!撃て!撃ち続けろ!|殺せ!殺せ!」


「ですが隊長キャプテン!第二分隊とは通信途絶、第三分隊も、もはや奴等に喰われつつあります!もう下がるしかありません!撤退するしかありません!」


「だからなんだ!?ここから逃げたらもう後には難民地区しかないんだよ!そいつらおいて逃げろってか!?俺達、首狩隊バーサーカーにそんな卑怯な真似が出来るわけないだろ馬鹿たれが!わかったら撃ち続けろ!それに、増援が来ると司令部から通信が入ってんだ!|耐えろ!耐えろ!」


隊長キャプテンと呼ばれた男は、士気を上げる為にか、そんな言葉を叫びながら、塹壕から体を出し、銀の銃剣を装備した小銃で異形達を撃ち殺していく。


「増援ですか!そりゃ楽しみですな!どんな英雄ヒーローが来てくれるのやら!!」


塹壕の中の男達、狩兵イェーガーと呼ばれた戦士達は、正体不明アンノウンと呼ばれた異形達に、弾丸を撃ち続ける。


必死の善戦が続くが、ずるり、又ずるりと。殺された同胞の亡骸を飲み込みながら、異形アンノウン達は男達イェーガーに近づいていく。


「もう駄目だ!!畜生!死にたくない!」


目前まで異形アンノウンが迫った時、誰かがそう叫ぶ。


その瞬間、轟音と共に男達の間に一閃、目前まで迫っていた異形アンノウン達は一閃に貫かれ破裂し、ばらばらになり、幾百もの肉片と血と化す。


「ひっ……」


それらを思い切り被った一人の男は、声にならない声を上げる。


後ろで蠢いていた異形達も、複雑な軌道を描く、その閃光により呆気なく肉片と化す。


「やっと来てくれたか……英雄サマが」


隊長と呼ばれた男は振り向く。そこには黒いロングコートを羽織り、黒い野戦服を着込み、右手に長い、余りにも長い銃身を持つ漆黒の拳銃を握る少年が居た。


「遅くなりました。特務隊ドラグーンから増援として来た、識別名。射撃手シャルフシュッツェです長いのでシャルフとでも呼んでくれれば助かります」


「これより首狩隊バーサーカー第一分隊の皆さんと共に前線を上げます。付いてきて下さい」


自身をシャルフと呼称した少年は塹壕を渡り、前に出る。


そんな少年を前に塹壕内の男達はどよめく。


特務隊ドラグーン?非公式戦を行う特殊部隊の中でも精鋭中の精鋭じゃねぇか。こんなガキが?何かの冗談だろ……」


「なんだよあの馬鹿でかい拳銃。見栄はりのつもりか?」


「増援ってたった一人じゃねぇか……しかもこんな餓鬼かよ……もう終わりだ」


「こんなのが増援……?司令部は俺達を見捨てる気かよ」


そんな中、隊長と呼ばれる男だけは少年と共に前に出る。


「ようこそ前線じごくへ『魔弾』。精々、足手纏いにならぬよう頑張りますよ」


首狩隊バーサーカー、隊長のリグラ・ファンデル少尉、でしたよね。そんな事を言わないでください。ここまでロスゲンを持たせてくれたのは他ならぬ貴方達です」


「今までは防戦一方だったでしょうがこれから奴らをぶっ潰しますよ。しっかり付いてきてください。お願いします」


と、少年は弾倉を落とし、新しい弾倉を黒いロングコートの裏から出し、装填リロードする。


「おい聞けお前等!これから俺達がこの『魔弾』様と前線を上げるぞ!負傷兵はジェフとヤンで下げさせろ!残りは一緒に付いて来い!」


『魔弾』。その単語を聞き更に男達は騒つく。


「『魔弾』?あの二つ名だけが有名な狩兵イェーガー?こいつが?」


「たった一人で戦況を覆した事すらある、とか言われてる奴か?只の冗談だろそんなの」


そんな男達を尻目に、アンノウン達は態勢を整え、再び迫ろうとしていた。


数多の触手を巨大な口から垂れ下げ、人間の腕の様な部位で自立する異形アンノウン


首から大鎌の様な部位を生やす、馬の様な異形アンノウン


人の負の表情だけを集め、凝縮し、浮遊する異形アンノウン


そんな存在が、数多の群れとなり、襲いかかる。


「畜生!また来やがった!」


男達の中の一人が悲痛な叫びを上げる。


前に出ていた少年。シューターは、冷静に右手に持つその拳銃を構え、アンノウン達に狙いを付け、引き金を引く。


轟音と共に弾丸が発射される。それは自我を持った様に縦横無尽に走り抜け、肉食獣の様に、まるで狼の様に、走り抜け。迫ってきたアンノウン達を再び肉塊にした。食い尽くした。


「野郎ども、見ただろう。本物の『魔弾の射手』だよ。これ以上の増援があるか?」


その様子を只々呆気なく見ている事しか出来なかった男達は掌を返す様に歓声を上げる。


「やった!やりやがった!本物かよ!すげぇ!」


「これならやれるぞ!勝てるぞ!おいセロ!小銃貸せ!突撃するぞ!」


一人陸軍ワンマンアーミー、歩く武器庫…そして『魔弾』。ありとあらゆる二つ名を持つ狩兵イェーガー……」


そんな男達を見ながら少年シャルフは苦笑いしながら言う。


「今度は僕達が奴らを殺す番です。皆殺しにする番です。やってやりましょう。やり遂げましょう。僕達なら、出来ます」



その言葉に、男達は叫びを上げた。


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