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奥の手


今回のクエストは失敗と言っていいだろう。

ゲームなら。


ガルガンズ首脳陣は吸血鬼の話を聞くと、俺達を褒め称えた。


素晴らしい!とか、流石は勇者だ!とか。


吸血鬼はランクAが3チームいても勝てない相手らしい。

そこまで強いとは思えなかったんだがなあ。



「本来なら、数日休養をとってもらいたいのだが、少し問題が起きてな。」


支部長によると、オーガ・トロール連合の被害がやばいらしい。

小さな村がいくつか壊滅したそうだ。


ユーマと相談して、準備ができ次第出発することにした。

今回もギルドからランクBを3チームほど派遣してくれるらしい。

全員男と聞いた時は拒否したくなったけど。


昼過ぎには準備が終わり、出発することにした。

壊滅した村には夕方に着いた。

オーガもトロールも基本的に大きい種族だ。

見えてるんだよね。

頭が。


「待ち伏せでもしてるつもりかな?」


ユーマが俺の思っていることを代弁してくれた。

待ち伏せしてるなら、俺の黄龍で吹き飛ばせるんだけど。


「シュウ、やるならMP回復薬準備してからだぞ。」


「わかってるって。」


心配性のユーマを安心させるために、最上級の物を取り出した。

さて、やるか。


「剣の力解放!黄龍の叫び!」


グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

うおっ!まぶしっ!てか、うるせえ!


目の前にあった村の残骸と森は綺麗になくなった。

隠れて待ち伏せしてたやつらももちろんいなくなった。


「信じられん・・・」


回復薬を飲んでたら、冒険者の1人が放心してブツブツ言ってる。

生き残りがいるだろうから、正気に戻ってほしい。


「まだいるぞ!シュウ、回復薬飲んだら右を頼む!」


飲みながら親指を立てると、ユーマは左から出てきたトロールに向かってかまいたちを撃ちはじめた。

冒険者達はまだ動けないでいる。

役に立たねえな、おい。


右からぞろぞろ出てきたオーガに、真空刃を浴びせながらユーマを確認。

見事なもんだね。

トロールは1cmも近づけてないんじゃないか?


「すまん!今から参戦する!」


やっと目を覚ました冒険者達が動き始めたようだ。

俺とユーマの前には出ないようにね。

死ぬよ。


ん?

あの肌の色は普通の個体じゃないぞ。


「ボスがいるぞ!ユーマ、そっちは!?」


「こっちも確認した!どうする!?」


さて、どうしようか。

俺達が攻撃を止めれば、大群が一気に距離を詰めてくるだろう。

攻撃を続けても、ボスが遠距離から岩やら投げてくる。

ゲームの話だけど。

あ、だめだ。

既に岩持ち上げようとしてるわ。

どっちにしても俺とユーマ以外は死ぬねこれ。


「冒険者と兵士は下がれ!ユーマ、奥の手だ!」


俺の言葉にユーマは嫌そうな顔をした。

うん、気持ちはわかるよ。

俺もこんなところで使いたくはなかったからね。


マジックボックスから瓶を取り出す。

両手で刀を振るうユーマにはできない芸当だ。

今回は俺だけで充分だし、ユーマまで使うと面倒なことになる。


取り出した瓶の栓を開け、一気に飲み干す。

ドーピングである。

ゲームでも奥の手としてみんなが数本は用意していたアイテム。

一時的に能力を跳ね上げることができるが、効果が切れると動けなくなる。


ユーマも使ったことがある。

使うタイミングをミスって、ボスとやり合う前にぶっ倒れたけど。

それ以降、使ったところを見たことがない。

嫌な顔をするのも当然だな。


「後は頼むぞ、ユーマ!」


主に介抱的な意味で!


真空刃は止まった状態じゃないと使えない。

それがドーピングした時は動きながら使える。

もちろん、威力も跳ね上がっている。


高速移動しながら、雑魚を真空刃で押し込みつつボスまで突き進む。

岩を持ち上げて投げようとしていたボスは、驚いた顔で動きを止めた。

驚く暇があればそれ投げれば良いのに。


もう遅いけどね。

真空刃がボスの右腕を斬り飛ばし、横腹を斬りつけ左足を膝から切断した。

うわっ、内臓出てきてる。グロ注意。


何が起きたのかわかっていない様子のオーガボスは頭を縦に斬られ、首を刎ねられ倒れた。

ボスを倒されたオーガ達は唖然として動けないでいる。

よしよし、計算通り。

ボスが倒れれば大抵の群れは散る。

トロールボスも倒せば、後は冒険者に任せても平気だろう。


トロールボスに向かって真空刃を飛ばしつつ、かまいたちの範囲に入らないように動く。

ユーマは俺がどう動くかわかるだろうし、心配はしてないけどね。


トロールボスに真空刃を20発続けて放つ。

手と胴体に当たったのを確認したので、すぐに冒険者達のところまで下がる。


断末魔っぽい叫びが聞こえてきたな。

よし、頃合だろう。


「ボスは倒した!残りは雑魚だ!任せるぞ!」


冒険者と兵士は俺の声を聞くと、慌てて動き出す。

完全にボーっとしてたな。


おっと、そろそろ効果切れだな。

身体が重くなってきた。


「シュウ、そろそろだろ?座ってろよ!」


ユーマが俺の方に走りながら叫んでいる。

言われた通りに座っていよう。

ゲームと違って倒れると痛いからな。


冒険者も兵士も、逃げ惑うオーガ・トロール連合相手だと余裕だな。


完全に身体が動かなくなった。

ユーマが支えてくれるおかげで倒れることはないけど。


見える範囲にはオーガもトロールもいなくなった。

動けない俺は、ユーマにおんぶされたまま馬車に運ばれた。


「これでこの国でやることは終わったな。シュウが動けるようになったらエンディールに帰ろう。」


ケモ耳モフモフしてないんだけど!

平和になったら絶対戻ってきてモフモフしてやるからな!


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