絶対領域
完・全・復・活!
結局、寝込んだ原因は黄龍の剣だった。
黄龍の叫びは全てのMPを消費して放つ奥の手。
ゲームならMP枯渇で、他のスキルや魔法が使えなくなるだけ。
ここは一応現実。
MPが無くなるのは死んでもおかしくないことだと説明された。
マジで死にかけてたとか笑えない。
ユーマに、次から使うときはMP回復薬を用意してから使うように約束させられた。
わかってるってユーマ。
お前は俺がいないと寂しくて死んじゃうんだよな、うんうん。
さて、俺も復活したし、準備はできてるみたいだから、そろそろ行くかね。
「ボクも行くのー!勇者の戦い見たい!はーなーせー!」
ロリ王女め、今日も元気だな。まだ朝も早いってのに。
いずれ隙を見つけてモフモフペロペロハムハムしてやるからな!絶対にだ!
「勇者さま、どうかお気をつけて。」
第一王女は、もうピンクを出していなかった。
最初のはサービスだったのかな。
とても残念だ。
「大丈夫か?また人型だけど。」
ユーマが不安そうな顔で俺を見る。
「大丈夫さ。世界を救うための試練だと思えば、なんてことはない。」
もちろん、ハーレムのためだけどな!
「そうか・・・、無理はしないでくれよ。」
笑って答えるだけにして、2人で馬車に乗り込む。
今回はユーマと同じ馬車だ。
しかも広くて綺麗。
時間があればこういうのも用意できるんだな、獣王国。
途中で3台馬車が合流するらしい。
冒険者ギルドからの援軍だそうだ。
顔合わせは目的地に着いてかららしいが。
ユーマがもらった書類でチームの詳細を確認している。
「ランクBのPTが3つだって。俺達のランクってどこまでいったっけ?」
「なんだよ、覚えてないのか?魔王倒した時点で俺達はランクSだよ。」
その後に召喚されたからな。
確認してなかったら、知らなくても仕方ないか。
「あ、シュウ。女性4人組のPTがあるよ。顔は載ってないけど。」
「写真なんて無い世界だからな。無いなら無いなりに楽しみ方があるけど。」
召喚される前はよくこうやってくだらないこと喋ってた。
ここ数日色々あって、ユーマとゆっくり喋る時間なかったからな。
「召喚される前に戻ったみたいだ。最近シュウとゆっくり喋ることもできなかったし。」
ユーマも同じ気持ちだったらしい。
早めの昼飯も移動してる馬車の中で済ませ、眠気が襲ってきたところに兵士が声をかけてきた。
「勇者様!冒険者達が、目的地に着く前に一度お話をと申しております!」
「どうする?」
女性4人組を見たいから断る理由がないな。
「急ぎの用件かもしれない。応じよう。」
決まったな。
クールすぎて失禁しそうだ。
「はっ!すぐに準備いたします!」
俺達が降りると、冒険者達はすでに待っていた。
「ランクBチーム[獅子の牙]リーダーのムエトだ。時間をとらせてしまってすまない。」
パーティじゃなくてチームっていうのか。
「俺はユーマ、彼はシュウだ。よろしく。」
こういう時ユーマは率先して動く。
人当たりの良いユーマなら揉めることも少ないからだ。
俺は顔が厳ついとよく言われるため、後ろに控える。
「実は、魔物達の動きがおかしいと斥候から連絡があってね。君達の考えを聞きたかったんだ。」
ふむ、女性4人組PTは皆レベルが高いな。
金髪ツインテ魔法使いに、ショートカットで色黒の戦士。おっとり巨乳のヒーラーにエルフの貧乳アーチャーだ。それぞれに長所があって素晴らしい!全員まとめて相手してやろう!俺のストライクゾーンは普通の人の3倍はあるからな!性癖って意味のストライクゾーンだけど!
「・・・と思うんだ。それでいいかな?」
「そうだな、シュウはどう思う?」
ん?
あ、話聞いてなかった・・・。
「我々はこの世界にきて間もない。君達の意見を尊重したい。」
どやぁ!
話を聞いてなくてもだいたいはこれでなんとかなるだろ!
冒険者達の顔が嬉しそうに綻んでやがる!男の顔なんてどうでもいいんだよ!女性を前に出せ!さっきは気付かなかったけど金髪ツインテは絶対領域まで装備してるじゃねえか!オッサン共のせいで絶対領域を眺める時間が減っちまっただろう!
「じゃあ、俺たちのチームが先行しよう。ワーウルフもワータイガーも五感が優れているから、なるべく風下を選んで移動する。」
まずはワーワー連合からか。
「わかった、無理はしないでくれ。」
なんにもわかってないけどね、俺のこの一言で冒険者達の士気は上がったようだ。よしよし。
作戦はユーマに確認すればいいや。
そんなことより絶対領域だ。
冒険者達は音も立てずに散開した。
流石はランクBだな。
ヒーラーの胸は揺れてたけど。
「シュウ、俺達も行こう。」
頷いてユーマに着いて行く。
もちろん、確認と偽って作戦を聞くのも忘れない。
魔物が予定していた場所からかなり移動していた。
ここからそう遠くないところいるので、逃がさないためにも奇襲をかけてしまおうというのが主な話。
作戦は、冒険者達が奇襲をかけ魔物を誘導するので、誘導された魔物に止めを刺すのが俺達の役割。
獅子の牙以外の2チームには、魔法を使える者がいるので誘導も難しくないそうだ。
うん、確実に俺達が一番危険じゃないか?
手負いの魔物とか手を出しちゃいけないやつだろ。
ボンッ!
少し離れた場所で爆発音がした。
始まってしまったな・・・。
「シュウ、黄龍の叫びは使うなよ!これで終わりじゃないんだからな!」
苦笑いしながら頷くと、ユーマも頷いた。
「ここだ!後は魔物が来るのを待つだけだ。」
森に入ってすぐのところで待ち受ける。
奇襲されたワーワー連合は森に逃げようとするはずだから、待ち伏せには最適らしい。
俺もユーマも武器を構えて待つ。
正面からワーウルフが6匹向かってきている。
ユーマは自分が先にやると言って、ワーウルフに向かって走り出した。
刀を横に構え、くるくる回りながら3匹仕留めた。
あれは確か、刀技の水平独楽斬りだっけ。
ユーマの刀から逃れた3匹が俺に向かってくる。
すまんな、ちょっと卑怯な技を使わせてもらうぞ。
「剣技、真空刃×3!」
剣を振るうと斬撃が飛んでいく。
首を刎ね、縦に真っ二つになって内臓を撒き散らし、切腹の様に腹を切断した。
前回の反省を踏まえてのチョイスだ。
慣れるまで、もしくは切羽詰るまではこれでなんとかするぞ。
「その手があったか。流石シュウだ。」
ユーマに褒められたが、いきなり人型斬っても吐き気催さないお前の方が凄いよ。
剣道やってたからなのかね。俺とは覚悟がちがう。
おかわりが来た。
今度は4匹だな。
「刀技、かまいたち!」
刀技の遠距離攻撃だ。
俺の剣技と違うのは貫通効果を持っていること。
ただし、連続使用はできない。
思いっきり踏み込んで刀を振るから、仕方ないことだけどな。
かまいたちは上手く4匹巻き込み、綺麗に4つの首を飛ばした
断末魔を上げる間もなくワーウルフ達は絶命していく。
「この調子でいこう。返り血も浴びないですむから汚れないし。」
ユーマは頷いてかまいたちの準備をする。
その後、俺とユーマは交代しながら真空刃とかまいたちを使い、誘導されてきたワーウルフとワータイガーを倒し続けた。
遠くから攻撃してるけど、流石に血の臭いがやばいな。
ユーマは首を狙ってるから血だけで済んでるけど、俺の方は当たればいいや程度で攻撃してるから臓物の内容物の臭いもする。
気持ち悪・・・。
周囲はまさに血の海。
それでもおかわりは終わらず、1時間以上は斬撃と飛ばし続けた。
「あ、獣王から1匹生け捕りにしてくれって言われてたわ。」
「えー、もっと早く言ってよ。まだ生き残りいるかな?」
完全に忘れてた・・・。
「あ、来たよ。良かったね、約束破らずにすんで。」
ユーマが颯爽と突っ込んで行き、峰打ちで1匹ずつ気絶させる。
待機してる兵士を呼んで、気絶させた2匹を城に運んでもらおう。
日が暮れる少し前にやっと終わった。
後始末は兵士がやると言うので、俺達は少し離れた見晴らしのいいところで、野営の準備をする冒険者達を眺めていた。
あー、疲れた。




