やはり同じ趣味だった
「この戦争中はコピーで増やすとして、それ以降は使い物になるか?」
手に入れた銃は3丁。
弾も全部持ってきたと思うけど100発もない。
「部下にヴァルヌの元に持っていかせよう。それが一番早いでしょ。」
確かに。
銃1丁と弾20発を渡し、残りはこっちで実験。
「火縄銃程度ならまだ笑えたのにね。現代で使っている銃を創り出すなんて思ってもいなかったわ。」
まったくだ。
ボルトアクションライフルだなんて思ってもいなかった。
形はアメリカで有名なメーカーの物に似ているらしい。
ゆうなちゃんはユーマと同じ趣味だそうで、かなり詳しかった。
「鉄を溶かす程の技術を見逃すわけないんだけど・・・。」
ゆうなちゃんは世界中を飛んで周っていた。
一番の目的は各国の研究施設や工場を見つけ出すため。
危険な施設は優先して潰していたそうだが、研究施設は地下に作られていることも多いので、乗り込んで破壊することもあったらしい。
「すぐに上空から煙が出ている所がないか探させるわ。これだけ大量の銃と弾を作っているなら、その分煙も出ているはずだし。」
「魔法で煙を処理してたら地下でもやれるんじゃないか?」
思いついたので言ってみた。
しかしそれは大当たりだったようで、魔族の幹部達もガッカリしている。
なんかごめん。
「獣王軍に動きあり!松明を使わず移動しているため補足に時間がかかると思われます!」
斥候が捕まったことに気付いたのかな?
もしかすると何かしら合図でも準備していたのかもしれないけど。
「捕らえた捕虜から情報は?」
「洗脳魔法で聞き出したところ、今こちらに向かっている部隊は、連絡がなかった場合に動く部隊のようです。明確な目的はないようで、捕まったであろう斥候を助けるための陽動です。」
陽動か。
その作戦が間違いだと思い知らせてやろう。
「ちょっと銃の試射してくるわ。」
それだけで俺が何をするか理解したゆうなちゃんは、自分もすると言い着いて来た。
「見えないでしょ?私なら見えるからどこにいるか教えてあげる。」
確かに。
真っ暗だから見えるわけがない。
そこまで気が回ってなかった。
「全員銃持って動いてるわね。あまり明るい所に行くと逆に狙われるわ。」
暗がりに移動してゆうなちゃんの指示待ち。
動いてる木々を狙っても、そこにはもういないから意味ないらしい。
俺が出来ることは大人しく待って、指示されたところを狙い撃つだけ。
構えて待っているとゆうなちゃんが微調整してくれる。
「3秒後に撃って。」
心で数える。
3、2、1
パァンッ!
破裂音が鳴り響く。
「うぐああああ!」
どうやら当たったみたいだな。
流石ゆうなちゃん。
ゆうなちゃんに銃を渡すと、慣れた手つきで弾薬を装填していく。
ユーマは週4でサバゲーしてるって言ってたな・・・。
パァンッ!
いきなり破裂音。
狙われたのかと思ったらゆうなちゃんが撃った音だった。
「うぎゃあああ!いてえっ!いてえよー!」
命中したらしい。
またも素早く弾薬を装填していく。
パァンッ!
装填したと思ったらすぐに撃った。
「ぎゃあああ!」
そして当たった。
この子どこかの名スナイパーさん?
ガチャッ!
あ、また装填してる。
そろそろ止めないとまずい。
「ゆうなちゃん、そろそろやめない?」
パァンッ!
「いてえ!なんだ!?何が起きてる!?」
お、今度はちょっと丈夫な奴に当たったのかな?
て、違う違う。
「ゆうなちゃん、もう良いんじゃない?」
ガチャッ!
パァンッ!
「うぎゃっ!」
早!
しかも当たってる!?
まずいまずい!
そろそろ本気で止めないと。
「ゆうなちゃ」
ガチャッ!
パァンッ!
「足が!俺の足があああ!」
おいいいい!
この子やばいよ!
こうなったら実力行使しかない・・・か。
横からゆうなちゃんに抱きつく。
あ~、やわらけ~し、めっちゃ良いにおい~。
「え?は?ちょ、ちょっと!こんなところでするつもり!?」
え?
していいの?
いやいや、そうじゃない。
「とりあえず、銃離そうか。」
「う、うん。」
ふー。
このまま弾が無くなるまで撃ち続けるかと思った。
「動けない奴等は回収しようか。お願いしていい?」
「う、うん。」
まだ顔真っ赤だな。
そういえば、前回のあれから2人きりでこういうことしてないな。
俺に記憶はないけど!
「いちゃついているところ失礼します。」
うおっ!
背後からいきなりサキュバスちゃんが現れた。
心臓が口から飛び出しそうってのを感じたわ!
「陽動部隊は引いたようです。こちらに銃があるとばれたのが原因かと。」
最新の武器を手に意気揚々と乗り込んで来たらその武器で攻撃されました。
笑えないよね。
俺ならすぐに撤退する。
「遠目からわかる程度に動揺しているみたいですね。今攻め込めば勝てるんじゃないですか?」
そこまでか。
ここまでくると作戦なんじゃないかと思えてくるな。
「引こう。夜に攻め込んで無駄な怪我するのも馬鹿らしい。」
夜目が利く種族ばかりでもないからね。
銃は運悪く当たっただけで死んでしまうものだし。
「銃の性能テストは充分できた。後はこちらも量産できるか探らないといけない。獣王軍が動かなければ朝一番に攻撃を開始すると全軍に伝えなさい。」
ゆうなちゃんも落ち着いたようだな。
戻ってゆっくり夜食でも食べるとしよう。
『シュウ!弾はもっとないのか!?あと種類もこれしかないのか!?』
あの野郎、全部撃ち尽くしやがったな!?




