作戦決定
中央大陸に残っている魔族はあんまり頭が良くない。
攻撃されたら絶対に反撃するし、追いかける。
その分強いのだが、単純な罠にも引っかかるので獣人には簡単に負けるだろうと予測された。
幹部全員こっちに来たから、まとめ役すらいないのも問題だ。
「魔獣もかなりの数残してきてしまったんです。全滅したら戦力的に大ダメージです。どうにか助ける手段を探さないと、戦争が始まる前にこちらの負けが決まってしまいますよ。」
サキュバスの冷静な分析は的確なんだろう。
脳筋魔族勢が反論しないどころかどうすればいいかの言葉を待っている程だ。
しかし、サキュバスには良い案が無いみたいで、10分以上は考え込んでいる。
「シュウ殿、何か手はありませんかな?中央大陸にいる戦力は失うわけにはいかんのです。」
残っている魔族達の種類や規模を聞いた時点で諦めるレベルなんだよなあ。
100や200ならなんとかなったかもしれないけど、全部含めると万を超えるという話だ。
魔族じゃないと意思の疎通が取れない種族もいるらしいし、俺にはお手上げ状態。
「戦争するタイミングとしては早すぎるんです。なんとか回避する手段を考えないと・・・。」
なんで獣王はこのタイミングで進軍を始めたんだ?
それがわかれば手が打てるかもしれない。
『ユーマ、獣王が進軍を始めたって聞いたか?』
『おう、シュウ。聞いたよ。理由は魔族討伐ってことらしいぞ。』
『精霊でも何でも良いからもっと詳しい情報がほしい。こっちもゆうなちゃんに頼むからそっちも色んなところに頼んでもらえるか?』
『わかった。お前は無理すんなよ。次倒れたらたぶんゆうな泣くぞ。』
ぬぐ・・・。
まあ、いい。
こっちはこっちで動かないと。
すぐに事情を話して情報収集を優先させた。
ユーマが頼んだ相手はニンブルとリンドのエルフコンビ。
2人はユーマに言われる前から情報収集を始めていた。
『精霊から得た情報だと、諜報部隊と長老派が魔族討伐の尖兵をガルガンズにさせるように動いたらしい。獣王は国益を考えたら受けるしかなく、仕方なしの進軍って話だ。』
『こっちもほぼ同じだったな。獣王はもしかして何も知らないで動かされているのか?だとしたらこの進軍はこっちの動きを知るための罠ってこともあるか。』
ユーマと話した結果、戦争は始めるがドラフバルは参加しないという方針に決定した。
相手をするのは魔族だけ。
相手がこっちの動きを見ようとしているなら、こっちも相手の動きを見るためにこの戦争を利用する。
状況次第だけど、獣王をこっち側に引き込める可能性もある。
このことをすぐに魔族に通達して、準備を始める。
獣王軍が中央大陸に到着する前に、魔王含めた数名の幹部を戻しいつ戦争が始まっても良いようにする。
ドラフバルから物資の援助くらいはと言われたので、物資は俺かユーマのマジックボックスに入れて運ぶことにした。
こっちに残る魔族は武器やアイテム関係者だけ。
「獣王軍は3日もすれば中央大陸に到着する模様。嵐に巻き込まれてかなり進軍速度は遅くなっていますが、こっちの準備が終わるタイミングとほぼ同時かと。」
サキュバスちゃんは俺の秘書として残った。
中央大陸の情報を俺に伝える役目が主だけど。
「間に合うなら良いよ。明日の夜、俺も向かうからよろしくね。」
そう言って自分の部屋に戻る。
倒れてから俺の部屋は魔族の拠点になった。
こっちにはスパイが入れないから、俺の命を守るためってことで決定したらしい。
この拠点はゆうなちゃんが魔法陣を書いた上に作られているので、敵対者は入れない仕様になっている。
洗脳されていたらどうなるのかとか、途中から裏切ったらどうなるのかと、聞きたいことは沢山あったけど、魔法はそういうものすら弾くそうだ。
万能すぎる。
さて、そろそろ増やす魔道具を準備しないと間に合わなくなったらまずい。
コピー魔法が使えるのは魔族の鍛冶師だった。
コピーできる物とできない物があるらしく、ユーマの刀はコピーできないらしい。
実際に試してもらったので間違いはない。
それならと別の物で試したらできた。
それが完全回復薬。
いくら増やしても効能は変わらないようで、このコピーはかなりのチート魔法だ。
デメリットは超レア物はダメってことかな。
レアの分類はゲーム準拠で、1つずつ鑑定魔法を使って確認した。
魔法に必要なMPが多いので短い時間に一気に増やすのは厳しいが、少しずつならいくらでも増やせる。
ちなみに俺が寝ている間に実験したそうです。
俺も立ち会いたかったけど、今回素早く動けるのは実験を終わらせてくれていたからなので文句は言えない。
『シュウ、どれを増やすか決まったか?』
おっと。
ユーマも急いでいるんだったな。
『ああ、今回は時間がないから死なないことを重視したよ。』
死なない限りどんな怪我でも毒でも治すしMPも回復する完全回復薬。
死ぬような攻撃を受けたとき、代わりに砕けて命を守る身代わり石。
どちらもある程度の数がマジックボックスに入っていたけど、俺とユーマだけが使うわけじゃないので全然足りなかった。
なので量産体制を作っていたんだけど、コピーのおかげで急場は凌げることになった。
ちなみに魔族達が生活できていたのは全てこのコピー魔法のおかげらしい。
コピーの元となる物さえあればいくらでも増やせるので、美味しいご飯も食べ放題だったそうだ。
鍛冶師は色々あったらしいが、ゆうなちゃんが魔王になってからは忠誠を誓ったらしい。
何かしたんだろうけど、教えてくれなかった。
『明日の朝、そっちに行って最終調整をしよう。俺の装備も取りにいかないとだし。』
『そうか、わかった。じゃあ、明日の朝、待ってるぞ。』




