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魔族側の会議


その後悶々としながらも疲れていたのか気付いたら眠っていた。

サキュバスちゃんが起こしにきたので仕方なく起きると、昨日までと打って変わって体調が万全になっている。


「え、身体軽!頭も全然重くないし!」


俺がはしゃいでいると、冷たい目をしたサキュバスちゃんが着替えを持ってきた。

受け取ろうとすると渡してくれない。

なんで?


「早く両手を広げてください。脱がせないでしょ。」


「は、はいぃ~?」


「魔王様とそういう御関係なのですから、お世話をするのが私達の仕事です。さあ、手を広げてください。」


やめてええええ!

忘れるつもりはないけど何も覚えてないんだあああああ!!


「ぷっ!くっくっく・・・あーはっはっは!」


頭を抱えてもんどり打っていたら、サキュバスちゃんの笑い声が聞こえてきた。

なぜ笑う!?


「本当に覚えてないんですか?そんなに強い薬使ったわけじゃないんだけどなぁ。」


薬!

サキュバスの使う薬なんて、そんな気がなくてもそんな気にする薬だな!?

絶対にそうだ、間違いない!


「あ、変なこと考えてそうだから先に言っておきますが、正直になる薬ですからね。後1歩踏み出せない小心者君に勇気を与える薬です。秘薬中の秘薬ですからね。」


逃げ道は塞がれた。

俺に残っているのは全てを認めて楽になることしかないのか?

でも本当に覚えてないんだよ!


「記憶を思い出す薬とか・・・ない?」


とても冷たい目で睨まれた。

昔はご褒美だったんだけどな・・・。


結局着替えは自分でして、飯は皆で食べることになった。

俺が最後だと連絡があったそうなので、急いで食堂に向かう。


「おお、シュウ殿。体調は良くなったようで。」


魔族の食事はどんなもんだろうと思っていたけど、普通だな。

ここにいる魔族が同じような食事をするだけで、違うものを食べる種族もいるんだろうけど。


「さて、それではいただきましょう。」


俺が席に着くと食事が始まった。

めっちゃ美味い。

朝飯からこれってやばくね?


「ふむ、お口には合ったようで何よりですな。」


さっきから話しかけてくるこの魔族。

実は魔族の始祖の1人だそうで、かなりのお偉いさん。

話しかけられてもサムズアップや頷きだけで返事をしているんだけど、こうしろって言ったのはサキュバスちゃんなのだ。

そして、この始祖もそれで構わないらしい。


理由は喋りかけられて口頭で答えてしまうと操られるから。

魔言の一種らしいんだけど、俺にも効力があると面倒なので喋るなと言われた。

魔族が喋らなければ良いだけじゃないかと思うけど、ゆうなちゃんが急ぎの用でこの場にいないので、この場を仕切るのはこの魔族になってしまった。

そして俺は客人扱いなので、一番偉いこの魔族が持て成さないといけない。

そういうのも面倒だなと思うけど、魔族のしきたりなので口には出さない。


そろそろ朝食が終わろうかというタイミングでゆうなちゃんが食堂に入ってきた。

走ってきたのか少し汗をかいている。


「ふう、私の分も持ってきて。」


給仕をしていた女性魔族がすぐに準備を始め、ゆうなちゃんは俺の隣に座る。


「ごめんね。面倒だったでしょ?ありがとう、ゲラート。後は私がやる。」


上位魔族は一礼して自分の席に戻っていった。

正直言うと、俺はまだ顔見れないんだけど、ゆうなちゃんは普通に見える。


その後はゆうなちゃんが食べ終わるまで歓談しつつ、食べ終わった後は現在の状況確認に話はシフトしていった。


「本日早朝、長老派と思われる集団が、ドラフバルの街に入ろうとしていましたが、ドラフバルの冒険者がこれを捕縛。現在尋問中です。」


「西の大陸で魔物が数多く消失したと連絡がありました。これは我々の傘下ではなく、野良の魔物です。なので原因は不明。」


攻撃が始まっているのかもしれない。

やはり戦争になりそうだな。


「北の大陸、リフィ女王からユーマ殿に助けて欲しいと文が届いたそうです。何度も暗殺されかけたそうで、信頼できるのはもうユーマ殿しかいないと書かれていたようです。」


「南の大陸に本部がある勇守隊の支援者からも助けてほしいと連絡があったそうです。ユーマ殿と行動を共にしているニンブル・リンドから今朝情報が入りました。勇守隊もできるなら引き受けてほしいと。」


どこも一気に動き始めたのか。

俺が寝てる間は大人しくしておいてほしい。


「魔王様含め幹部がある程度揃っていますので、こちらの意思を決定しておきたいと思います。介入するかしないか、ユーマ殿に一任するか。」


今は協力関係だから魔族の意見とユーマを代表として人の意見をすり合わせる。

どうあっても平行線の場合、介入すると決めた側が勝手に動く。

もちろん他の協力すべき事態に支障がでないように。

俺はドワーフと物作りしながら、その知識を魔族にも披露している。

結果、どちらからも協力して進めたいと意見されたので、ドラフバルの地下工房には魔族用の部屋が作られることになった。


他の部分はまだまだ前途多難ってところなんだろう。

ゆうなちゃんの顔も渋い。


「折角ですから、シュウ殿に我等の意見を聞いてもらって、どう思われるかを聞いてみたいですな。」


魔族が俺に注目する。

俺の言葉待ちなんだろう。


「聞くだけなら。」


とりあえずはそれでと話は決まり、魔族の意見に耳を傾ける。

虐殺だ皆殺しだなんて意見が出ることもあるが、ほとんどの魔族は冷静だった。

助ける前にスパイを送り込んで状況把握させるとか、助けたとしても信用できるまで隔離するとか。

種族の違いがあるからこそ冷静になれる場合もある。

そんな風に感じる場面が多い。


「ふむ、我々の間でもこれだけ意見が分かれるのであれば、まだまだ向こうに提出できる状態ではありませんな。急ぎの案件もありますゆえ、休憩を挟んで魔王様の魔法に頼るとしますか。」


時間停止は幹部全員が知ることになったようだ。

魔族の会議は長引くことが多いらしく、時間停止を使わないと意見がまとまらない。

人間側は首長とユーマが話し合って決めることが多い。

そこに俺が口を出す感じ。

俺が狙われる理由を少しでも減らす為に、中心に俺を置かないと決められた。

それでも俺の意見は重視してくれている。


「西の大陸連絡員より、獣王が軍を動かしました!目的地は中央大陸経由で東の大陸と思われます!」


予想外のところが動いた。

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