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サキュバス


目の前に怒り狂う魔王がぎりぎり理性を保って冷たい目で俺を見ている。

なぜそうなったか。

簡単に言えば、俺が倒れたから。

ちょっと詳しく言うと、調子悪いのを黙っていたから。


『ゆうなマジでキレてたぞ・・・。』


親友からあまり聞きたくない情報を齎され、どうやってこの場から逃げるか考えるが良い案は思いつかない。


「精霊の恩恵って素晴らしいわね、シュウ。こんなことならもっと早く解いてあげるべきだったわ。」


俺が倒れた後、精霊が身体の状態をチェックしたらしい。

その時に数日前から調子が悪かったはずだと診断結果が出てしまい、目覚めた時に尋問された俺は嘘をつくことすら出来ずそれを認めてしまった。


「シュウ殿、我等2人の精霊を常に付けておきます。今度からは隠せませんぞ!」


おいやめろ。

俺包囲網が出来上がりつつあるじゃねえか。


「魔族からも精神体の種族を数体つけておきましょう。憑依状態にするのが一番だと思いますが、それをしてしまうと別の問題が起きかねませんのでやめておきます。」


うん、もう完成してるね、包囲網。

今までならモテる男はつれーなーなんて言ってた場面だけど、流石に無理。

そこまで鈍感になれねえよ。


「他に案があるものは後で紙か何かで提出させて。ニンブルとリンドはシュウをベッドに運んで。監視は精霊とドワーフに頼みましょう。シュウ、急ぎの用件だけ終わったら会いにいくから待ってなさい。」


ゆうなちゃんが場を仕切り俺はベッドに運ばれた。

精霊が見えるように具現化されているから、目線を掻い潜れば逃げれるんじゃないかと画策したが、透明化した精霊はその10倍いた。

色々やってみたが全滅。

疲れ果てていつの間にか眠ってしまったが、扉が開く音で目が覚めた。


「逃げれると思わないでくださいね。魔王様に怒られるの嫌なので。」


サキュバスちゃんが食事を持ってきてくれたが、精霊からの報告を聞いたようだ。

種族的にとても素晴らしい能力を色んな男性に使用していたのに、俺にはまったく使ってくれない。


「サキュバスってさ、夢の中で良いことしてくれたりするんだよね?」


勇気を振り絞って聞いてみると、ガッカリする答えが返ってくる。


「あなたには使いませんよ。死にたくないので。」


俺に使うと死ぬらしい。

異世界人だからか?

試しに使ってみてって言いたくなるけど、ゆうなちゃんの部下をそんなことで失ってしまったら冗談じゃ済まされない。

我慢するしかないな。


「溜まってるのですか?それなら魔王様でもお誘いになれば良いじゃないですか。」


「ブホッ!ゴホッ、ゴホッ、なな、何を言ってるんだ君はぁ!」


紅茶を盛大にぶちまけた俺を見て、残念そうな顔をするサキュバスちゃん。

酷い、君が変なこと言うから噴出したのに!


「シュウ殿は女性なら誰でも良いんですか?」


とんでもないこと言い出すねこの子は。


「そんなことはないけど据え膳食わぬは男の恥って言うし・・・。」


「思いっきり恥かいてるってことじゃないですか。情けない。」


え?


「食べたら精霊が教えてくれるので、そのまま寝てください。次、脱走しようとしたら、筋肉隆々の魔族に部屋内で監視させますからそのつもりで。」


なんてこった・・・。

大人しく寝てやる・・・!


飯に薬でも仕込まれたのかと思うくらいぐっすり眠っていたが、扉がノックされる音で目が覚める。

頭がボーっとしているが、ある程度疲れはとれたように感じる。


「はぁい・・・。」


扉を開けて入ってきたのはゆうなちゃん。

いつもの格好が違うな。

なんか・・・いつも以上にエロい。


「調子どう?私達の世界で薬膳とか漢方みたいなやつを料理に使ってみたんだけど、効いたかな?」


「・・・うん。効いたと、思う。」


身体は楽になったけど、頭がスッキリしない。

副作用か?


「ねえ、なんで調子悪いの黙ってたの?」


なんで?

なんでだろう。


「いや、自分でもここまで、なんて思って、なかった、んだ。」


上手く喋れん。

気を抜くと意識が飛びそうだ。


「どうしたの?やっぱりあんまり効かなかったのかな。ゆっくり休んで。」


ゆうなちゃんが俺をベッドに寝かせ、布団をかけようとしている。

そこまでは覚えていた。



「ねえ、起きて。そろそろ行かないとまずいのよ。」


頭をペシペシ叩かれている。

痛くはないけど、目は覚めた。


「お願い、起きて。この格好じゃ外出れないよ。」


格好?

ゆうなちゃん何言ってんだろう。

何かあったのか?


目を開けて周りを確認すると、うなじらしき部位が見える。

無意識に匂いをかぎにいくと、下からゆうなちゃんの声でやめて~っと制止が入った。

下から、ゆうなちゃんの声が聞こえて、うなじ?


反射的に飛び上がると、素っ裸で身体中汗ばんだゆうなちゃんがそこにいた。

頬を赤く染めてこっちを見ている姿がとても良い。


「やっと起きた・・・。ばか。」


さっと服を着てゆうなちゃんは出て行った。

まて。

まてまて。

まー、まてまてまて。

やっちゃった?

俺やっちゃったの?


ガチャっとノックもなしに扉が開きサキュバスちゃんが入ってくる。


「お疲れ様です。流石にベッドのシーツを換えないとと思いまして。あ、心配しないでください。私も魔王様もこのことは他言しませんので。」


「せせ、せ、精霊がいたよ?ニンブルとリンドにはもう知られてるんじゃないのか!?」


「ご安心を。魔王様がこの部屋に入った時点で退室させました。ゆっくり楽しんで頂きたかったので。」


こいつ・・・確信犯やないか!


「俺には記憶がないぞ!?楽しむも何もあったもんじゃない!」


「次からはじっくり楽しんでください。大丈夫ですよ。ちゃんとできてましたから。」


いいいいやあああああああ!

この子全部見てるじゃん!

完全に弱み握られているのと一緒じゃん!

せめて最初くらいちゃんと覚えておきたかった!!

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