予想外に多い
革命軍より諜報部隊へ。
勇者とオマケは予想以上の戦闘能力を有している。
我々の実験結果が8割殺された。
補填はそちらにしてもらう。
長老派より諜報部隊へ。
勇者とオマケについて、そちらの情報と齟齬がある。
意図的に行ったのだとすると、我々が正常な国にした後に戦争をすることになるぞ。
すぐに謝罪をしろ。
まずは物資と資金だ。
貴族派より諜報部隊へ。
我々が望んだモノを早く納入せよ。
実験は最終段階が目前だ。
猶予はない。
3通だけだが、諜報部隊宛のお手紙を見つけた。
どうしてこいつ等は自分の組織の名前を書いてるんだ?
絶対に他者に読まれない保障でもあったのだろうか?
わからないことを考える時間はない・・・か。
長老派と諜報部隊が裏でしっかりと手を組んでいたのがわかっただけでも良かったとしよう。
「精霊に頼んでアジト全体を探索してもらっていますが、書庫がありました。シュウ殿が望む本があるかもしれません。」
おお、それは嬉しい情報だ!
まともな情報を得ることができるかもしれない。
「公爵様が捕まっている遺跡の地図が見つかりました。ご丁寧に罠の位置まで記してあります。」
見せてもらうと、暗号とかも使われていないわかりやすい地図だった。
「他のアジトがどこにあるか記してある地図もありますね。こっちは終わった作戦と、これから行う作戦が書いてあります。」
情報が出てきすぎじゃないか?
罠かな?
全部に目を通してないけど、長老派のアジトへの道のりってのもあった。
『シュウ、俺達の行動が書いてある紙もあるぞ。予定表もだ。これ罠じゃなくて、ガチで警戒してなかったパターンかもしれないぞ。』
『どうしてそう思う?』
『この先俺達をどう罠に嵌めるか書いた紙がたくさんあるんだ。今回の公爵拉致は俺達とは無関係で、偶然公爵がいたから拉致しただけのようだ。シュウは本来なら中央大陸に行って、魔王と会う予定だったろ?それが何故かばれてて、魔王と会う前に襲撃する予定だったらしい。それがあの島での出来事だ。それが失敗した場合にどう動くかも書いてある。』
それ以上のことはまだ報告がきてないのか、いくら探しても見つからなかった。
「とりあえず、公爵助けるか。公爵なら革命軍や貴族派のことを知っているかもしれないし。」
書庫にある本は全てマジックボックスに入れた。
もちろんここにあった紙切れも全部。
「取るもの取ったし、行くか。」
残ったのは気絶した諜報部隊だけ。
食べ物や飲み物、本や武器、持っていけるものは全部もらう。
「椅子やテーブルも薪の代わりになりますからね。今までの勇者様はここまで徹底できなかったそうですが、やはり御二人はこの世界に順応するのが早いのですね!」
この世界に順応したんじゃなくて、ラノベやゲームのおかげで色々知っているからなんだよ。
特に俺はね。
ユーマはなぜか昔から、俺の意見に異を唱えることは少ない。
大丈夫か聞いてはくるけど。
「それは違うよ。俺はシュウが決めたことに従っているだけだ。召喚されてから、大事な決定はシュウに任せてる。俺がこの世界で信じているのはシュウだけだから。」
言い切りやがった・・・。
「そ、そうですか・・・。」
ほら、落ち込んじゃったじゃん。
「そんなことより、早く公爵助けに行こうぜ。予定詰まってるんだからさ。」
話逸らさないと、空気がやばい。
ニンブルとリンドが闇の精霊でも背負ってんのかってくらいどんよりしてる。
勇者を守るために活動しているのに、その勇者に信じてないと言われれば流石にショックだろう。
ここまで活躍しているのは精霊だけだから、ユーマからすれば別の精霊魔法使いでも良いんだもんな。
戦闘だと、ユーマはともかく俺にも勝てないだろうから、肉壁になるか精霊使ってサポートするしかないだろうし。
暗い雰囲気のまま、遺跡に着いてしまった。
おっちゃん達は姿を消したまま空中で待機。
俺達は森から遺跡に近づいたけど、トラップがアジトにあった紙に書いてあった通りで、簡単に近づけてしまったのだ。
「そろそろリングを使うか。準備をしよう。」
「「「はい!」」
「シュウ、作戦は決まってるのか?」
あれ?
説明してなかったっけ。
「ああ、まずは全員で入り口にいるやつを気絶させる。その後、俺とユーマで中に入る。ニンブルとリンドは入り口で待機。外に出てきたやつを片っ端から倒してくれ。情報がほしいからなるべく殺さないでね。」
「「はい!」」
良い返事だね。
少しは元気になったのかな。
透明になってから、突入までは早かった。
突入してからも、そんなに時間はかからなかった。
地図が完璧すぎて迷うことすらない。
『まじかよこいつら。情報を簡単に渡すなんてありえないだろう。』
『確かになぁ。アジトで見つけた他の情報も正しい情報かもしれんな。お、ユーマが向かった方に書庫があるっぽいぞ。マジックボックスに入れておいて。』
公爵が閉じ込められていた部屋は地下だけど、今俺達がいるのは最上階。
見張りが歩くルートを見ると、上から潰していけばばれないんじゃねってなったからだ。
もちろん、この見張りが歩くルートもアジトから見つけたもの。
『なんでこんな襲われやすい見張り方してんだこいつら?』
『たぶん、透明になって侵入されるとは思ってないんだろう。自分達が使った手段なのにな。これこのまま進むと合流だな。目の前に3人いるから同時にやるか。タイミングはユーマに合わせる。』
順調に見張りを潰し、休憩中の奴等も潰し、最上階から1階まで特に問題もなく降りた。
ちなみに最上階にいたのは、この部隊をまとめていた隊長。
偉そうに下っ端にグチグチ言ってたから、ユーマと同時に殴ったら面白い顔して倒れた。
地下に降りる階段には鍵つきの扉があった。
確認してから行動したわけじゃなかったけど、結果的に正解だったな。
鍵は隊長が持っていたのだ。
地下に行くか。公爵以外にも面白そうなものあるみたいだし。




