透明化
「やつらから出来る限り情報を引き出す。終わったら使いを出すからそいつの指示に従ってくれ。」
17人は吸血鬼君に任せて、俺達はエンディールに向かうことにした。
公爵が捕まった時、状況を見ていたのはエルフだったらしく、精霊を使って会話までバッチリだったそうだ。
その内容を聞いて、助けることにした。
「公爵様は、勇者様をエンディールに近づけないで済むように、行動していたそうなのです。我々以外のメンバーをエンディールの隠れ家に集めたのは、裏切り者がいる可能性があったからだと。なかなか動かない裏切り者をあぶりだすために公爵様が動いたら、諜報部隊に囲まれたそうです。」
公爵の思いは精霊のお墨付きらしい。
行動は完全に裏目ってるけど。
おっちゃん達に気球を飛ばしてくれないか頼んだら、義父から俺達が頼み事をした時は断るなと言われていたそうで、快く承諾してくれた。
気球で移動してる間に、わかっていることを聞く。
「公爵様が閉じ込められた場所もわかっているようです。諜報部隊は精霊魔法を使えないので、精霊を付けてもばれません。おかげで簡単に尾行できたそうです。」
仕事はできるけどマヌケなんだな。
「勇守隊の裏切り者はわかったの?」
目的が公爵なら逃げてるかもしれないけど。
「公爵様が捕まった後、隠れ家で自殺をした者がいるそうです。懐には30万Fと暗号で書かれた指示書の様な紙があったと。今解読中です。」
「なんで自殺すんの?自分が裏切り者ってばれてないなら、いくらでも逃げれただろうに。」
「それは・・・、公爵様を裏切った罪の意識からか、隠れ家で裏切り者探しが始まって逃げれないと悟ったか・・・。30万Fなんて大金普通に持ち歩いているわけないですし、暗号の紙もありますし。」
「隠れ家って、そんなに狭くてプライベートもないの?全員ずっと同じ部屋で寝泊りしてるとか?」
「いえ、1人1部屋ありますし、広さで言えば貧乏貴族の屋敷よりはずっと広いかと。」
ますます自殺する意味がわからん。
「その自殺した人って、殺されたんじゃないの?本当の裏切り者に。」
俺の意見を聞いたニンブルとリンドは絶句している。
「そんな・・・、裏切った挙句に仲間に罪を被せるなんて・・・。勇守隊にそんな非道な者はいません!」
「丁度良いから聞くけどさ、その勇守隊に入るにはどうすればいいの?テストに合格しないといけないとか、メンバーからの紹介じゃないと駄目とか、そういうのある?」
「特にありません。勇者様を守りたいという志があるなら、来るものは拒まないと。」
頭痛くなってきた。
さっさと公爵助けて、公爵から話を聞こう。
「わかった、2人は精霊使って更に情報集めてくれる?」
「任せてください!勇者様!」
良い返事だね。
俺は勇者でもなんでもないんだけど。
「おっちゃん、交代で飯食っちゃって。酒も付けたいところだけど勘弁してね。」
「おお、美味そうな飯だ!遠慮なくいただきますぜ、旦那!」
ユーマのマジックボックスから出した飯を振舞う。
ニンブルとリンドにも勧めたが、精霊を使役してる時に飯食ったりすると、精霊が怒るそうだ。
「公爵が捕まってるのは、南の大陸の一番東にある遺跡だそうです。遺跡の周りには諜報部隊が姿を隠して待ち構えているので、安易に近づかないようにと。」
気球はすぐに方向を修正した。
流石おっちゃん達は仕事がはやい。
どうやって救出するか、作戦を考えるがなかなか良い案が出てこない。
おっちゃんの話だと、もう少ししたら遺跡が見えてくるそうだ。
気球は目立つから、どこか別の場所で降りないといけないのに、その場所すら探せてない。
「認識阻害の魔法使えたらなぁ。気球ごと消して近づけるし、公爵様救出も楽になるんだが。」
『シュウ、マジックアイテムに姿消すやつあったよな?低レベルでも、高ランク素材を取れるようにするために開発されたのに、結局PKギルドが買い占めたっていう。』
『あ!あったな!認識阻害魔法と違って、姿消すだけのやつな!確かにあれなら、特殊効果で気球も隠せるな!』
マジックアイテム、インビジブルリング。
特殊効果は乗り物も消すことができる。
大きすぎるとだめだけど、この気球ならいけるはずだ。
更にリング同士を接触させた後につけると、そのリングを使っている相手の姿は見える。
PTで使えるようにと職人が頑張ったのだ。
認識阻害の魔法と違って、透明化を解くには装備を外すか、装備が壊れない限り解除されない。
装備しても自分の姿は見えるので、リングの場所がわからないなんてことにはならない。
『何個持ってる?俺は1個。』
『ユーマってこういうアクセ興味ないと思ってたわ。俺は8つだな。フレの職人にF貸した時の担保。』
返してもらう前にこっちに飛ばされた。
ユーマが事情を説明して、リングをつける。
すぐに姿が見えなくなり、気球も消えた。
大慌てのおっちゃん達を見て効果が確認できたので、すぐにリングを外すユーマ。
「持ってる感触はあったのに、いきなりハンドルが消えたぞ!」
大騒ぎのおっちゃん達に準備を終えたリングを渡し、全員が付ける。
これで今は誰にも見えない状態で空を飛んでいるのだ。
聴覚や嗅覚は誤魔化せないので万能ではないけど、今回の救出作戦には充分すぎるアイテムだろう。
「見えたぞ、あれが遺跡だ。」
「公爵様がまったく口を割らないので、拷問することにしたようです。準備のために道具を近くのアジトから持ってくるとみたいですが。」
今まではお話で済ませようとしてたんだな。
「もう道具を取りに出発したの?」
「今から出発するようですね。5人で行くと。」
「シュウ、先にその拷問道具取りに行く奴らから片付けるか?」
「そうだな。アジトに案内してもらって、壊滅してからでも大丈夫だろう。」
アジト内にいるやつ片付けたら、遺跡の方で多少暴れても増援きたりしないだろうし。




