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認識


建物は無残に破壊され、地面は抉れ、森は燃えている。

俺達が着陸した時点で中継地点になっている島は破壊し尽くされていた。


「なん・・・で・・・こんなことに・・・。」


「こいつはひでえ。生存者はいるのか?」


空からは燃えた森も、破壊された建物も見えなかった。

気球の専用発着場に降り立つまで、煙たくもなかったし、戦場特有の嫌な空気感も感じなかった。

むしろ、海や森のマイナスイオンでストレスが軽減されてたくらいだ。


「島ごと魔法で見た目を変えることなんてできるかい?隠したりとかも含めて。」


「この島はそんなに大きくないですから、やろうと思えばできます。それなりの人数が必要ですが。」


ユーマの質問にさらっと答える精霊魔法剣士。


「それは精霊魔法ならってこと?それとも人間が使う魔法でもできる?」


「精霊魔法なら確実にできます。人の使う魔法でもできないことはないはずです。」


容疑者を絞るどころか増えたな。


「この中継地点はどこが作ったんだ?」


「ここはリーメリアが主導して作りましたが、他3大陸からも援助はありましたので、中央大陸に向かう必要がある場合は、誰でもこの中継地点を使えます。」


南の諜報部隊と北の女王反対派が一番怪しいけど、この島を攻撃するメリットはなんだ?


「旦那、あっしらどうしましょうか?本当ならここで帰ることになってるんですが、もし船が出ないなら、一度戻るってのも選択肢に入るでしょう?」


「確かに、港からも煙が上がっています。船も全滅してる可能性は高いですね。」


専用発着場は波や風の影響を受けない場所に作られた関係で、町から少し離れている。


「なんで発着場は壊されなかったんだろう?離れてたから見逃してしまったのか、町だけ破壊したかったのか、どれだろう?」


俺の疑問におっちゃん達が反応する。


「罠でも仕掛けたってことですかい?」


「それはあるかもなぁ。反対派が先回りしていて、シュウ殿が町に様子見に来たところを捕まえるとか。」


反対派はユーマより俺にロックオンしている。

多分、人工魔堕ちを俺で試すつもりなんだろうけど、反対派は魔堕ち実験した奴らを制御できてるのか?

魔堕ちすると理性がなくなり、凶暴になる。

そんな相手を制御するなら、それなりに強くないと殺されるだけだろう。


「う~む、旦那の強さ知らないんですかね?捕まえるにしても、旦那以上に強い奴がいるなら、そいつ使って悪巧みした方が早いだろうに。」


「エルフを庇うわけではないのですが、この惨状は反対派の協力者ではないと思います。」


精霊魔法剣士の1人が、何か諦めたような顔をして話しはじめた。


「お二人がリーメリアに来られる前から、反対派がシュウ殿を狙っていると噂はありました。勇者は魔王討伐に必要なので、反対派も手を出すことはありませんが、シュウ殿は丁度いい実験体として見られていたのです。襲撃前日に実行班がリーメリアで潜伏していると魔王が現れました。それをシュウ殿が追い払ったので、反対派の若い者達はシュウ殿を実験体にすることに異を唱えたそうです。」


かなり詳しいんだけど、反対派の人ですかね?


「内部分裂しかけていた反対派は、今日の襲撃に全てを懸けていたはずなので、この島に先回りしてシュウ殿に罠をかける時間はなかったはずです。つまり、エルフの仕業だとすると、女王派と反対派以外の派閥ということになります。」


エルフにはまだ派閥があるのか。


「君達はどこの派閥なんだい?そこまで喋ってくれるってことは、女王派かな?」


ユーマが質問ついでにスキルを発動したっぽい。


「我々はエルフの派閥ではありません。今回護衛に選ばれる為に、形だけは女王派に属していましたが。」


なんだこの良くある展開。

しかもこの展開だと、この2人すぐ退場しちゃう流れじゃないか?


「なるほど。で、君達は敵なのかい?」


「我々の事は町の様子を確認して、落ち着いた後にでもお話致します。」


「背中からいきなり斬りつけたりしないよね?」


「信じてほしいとしか、言えません。」


まあ、いいだろう。

ユーマにおっちゃん達任せれば安全だろうし。


「わかった。町の様子を見に行こう。精霊魔法が必要になることもあるだろうから、着いてきてくれ。」


気球はユーマのマジックボックスに入れた。

緊急事態だから仕方ない。



町に近づくと原因がわかった。

魔物が大群となって町に押し寄せているのだ。


「これだけ大騒ぎになっているのに、なんで発着場には何も聞こえなかったんだ!?」


ユーマの叫びに精霊魔法剣士が答える。


「認識阻害の魔法を感知しました。誰かが意図的に隠しています。」


「犯人を捜すことは出来るか?」


無茶振りかもしれないが、できるならしてもらいたい。


「できます・・・が、それをすると私はここから動くことができなくなります。」


よくあるデメリットだな。


「できるなら頼むよ。魔物は俺とシュウでどうにでもなるから。」


「そうだな。おっちゃん達もここにいてくれ。魔物の群れは俺達2人でいい。」


精霊魔法剣士もおっちゃん達もわかったと言うと、草陰に隠れはじめた。


『さて、勇者様の作戦を聞かせてもらおうかな。』


『やめてくれよ。それに作戦を立てるのはシュウの役目だろ?』


『作戦って言っても、単純に左右から挟めば終わるだろこれ。』


『・・・確かに。』


作戦は決まった。

立ち位置から俺が右でユーマが左だな。


一呼吸おいて、一気に走り出す。

ユーマもほぼ同じタイミングで走り始めた。

木が生い茂っているが、ちょうどいいブラインドになって魔物から俺達の姿を隠してくれている。


『ユーマ、いきなりぶっ放すから当たるなよ。』


『ええっ!走り出す前に言ってくれよ!』


今思いついたんだ、すまんな。


少し大回りして魔物の群れがよく見える場所に位置取りができた。


「さて、ユーマは射線から外れたかな?」


必死に後方に走ってるのか、砂煙が立っている。


『撃っていいか?』


『いいぞー!』


よし、真ん中にでかいやつらが集まってるから、そこを狙うかな。


「剣の力解放!黄龍の叫び!」


グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


相変わらずうるさいし眩しい。

まとめて敵を薙ぎ払えるから重宝してるけど、中央大陸に渡ったら材料が集まるので、剣は次の段階に進むことになる。

黄龍の叫びを撃てるのも、後何回あるだろうか。

そう思うと、少し寂しくもある。


MP回復薬を飲みながら、どれだけ魔物が減ったか確認すると、何か違和感を感じた。

何が違うのかわからないけど、何かが違う。


『おいおい・・・どうなってんだよこれ。』


ん?

ユーマは何かに気付いたのか?


『ユーマ、どうした?』


『どうしたも何も、地形変わってるぞ!木がなぎ倒されたとかそういう次元じゃなく、小さい山が消し飛んでるぞ!』


あー、なるほど。

違和感は目の前にあった小さい山が無くなったからか。

・・・・・・・・・・嘘だろ。


『発着場は無事かな・・・?』


『発着場は全然方向違うぞ。おっちゃん達がいる方だから。』


ならいいや。


威力だけじゃなくてなぜか範囲まで広がっていたおかげで、群れはほとんど消し飛んだ。

残っているのは門付近にいた魔物だけだが、轟音と光のせいか呆けていた。

門を守っていた冒険者らしき集団は、この機を逃さず残った魔物を片付けている。

最前線ではないけど、それなりに高ランクの冒険者が揃ってるってことか。


しかし、範囲も大きく広がっているな・・・。

数メートルずれてたら、町まで破壊してたかもしれん。


『今回はシュウだけで終わったな。何もしてないぞ俺。』


俺だって1発で終わるなんて思ってなかったよ。

なんで威力も範囲も向上したんだ?

レベルはカンストしてるし、装備も変わってないのに。

後でステータス確かめてみるか。


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