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勇者はチート


ドラフバルから気球とヒーラーがやってきて、その日のうちに俺の足は生えた。

出発は明日。

足が生えたので、お世話エルフはいなくなった。

くそが。


準備はほとんど終わってた。

まあ、俺達には準備なんて必要ないからな。

気球の調整や、積み込まないといけない荷物の準備が終わればすぐに出れる。


「つい最近わかれたばかりだってのに、また会いましたな旦那!」


気球操縦のドワーフのおっちゃんだ。

義父からこのおっちゃんに伝言を渡しておくと、通信魔法を使った時に伝えてきた。

最初は変な喋り方するなぁとか、変なポーズとってるなぁと思ってたんだけど、途中からこれ何か伝えたいんだって気付いたのだ。

もっとわかりやすいのあっただろうと思ったが、特に思いつかなかったので言わないでおいた。

最終的にはユーマがエルフの気をひいて、その間に直接伝えてもらった。

通信魔法には、録画や録音機能がついてないのは確認しているので、ばれる心配もない。


「おっちゃん、今度は中央大陸まで頼むよ。」


他愛無い話をしつつ、久しぶりにあって喜ぶ友人のようにハグしたりする。

エルフはあまりドワーフのことを好いてないので、近づいてもこない。

なのでゆっくりと伝言をもらう。


「首長がまた本を見つけたそうです。旦那が探していた作者の絵本に間違いないと仰ってました。」


義父、探してくれていたのか。

ラズちゃんは俺が幸せにします!


「それとですね、南から色々と送り込まれたそうです。諜報員やらなんやら。」


やっぱりそうなったか。

ドラフバルはエンディールにケンカ売ったわけだしな。

何かしらしてくると思ったけど、純粋に人員送り込んできたか。


「何か被害は?」


「今のところはないそうです。冒険者達が頑張ってくれてるそうです。旦那達が倒してくれた蟻共から、色々装備が作れたおかげみたいですよ。」


「それは良かった。中央大陸にドラフバルの協力者はいるかい?」


「ドワーフはほとんど首長の息がかかってます。旦那達のことも伝えたそうです。」


「今回気球に乗るのは何人だって聞いてる?」


「旦那達とあっしら、それからエルフの護衛が2名だそうです。」


「わかった、ありがとう。後は何かある?」


「いえ、伝えてほしいと言われたことは伝えました。」


握手をしてわかれる。


『ユーマ、そっちはどうだ?』


『もう少しで終わるよ。そっちは終わったのか?』


『ああ、終わったよ。予定通りだ。』


『わかった。終わったらそっち行く。』


ユーマには女王やその側近からできるだけ情報を引き出してもらっている。

勇者の特殊能力に、異性に対して嘘をつかせないという隠れスキルがあるそうだ。

これを教えてくれたのは魔王。


勇者時代に、なぜか男共が素直になるなと思っていたらしい。

魔王になった後、スキル解析というチートを手に入れたので、勇者のスキルを解析したら隠れスキルが出てきたそうだ。

勇者専用スキルは全部で5つ。

その5つ全部に隠れスキルがある。


勇者はチートって昔から決まってるけど、まさかここまでとはね。


『終わったぞ。マジックアイテム必要ないなこれ。』


効果は抜群だったようだな。


『色々聞けたけど、一番やばいのは俺達を使って南の大陸と戦争しようとしてたことかな。準備はほぼ終わってて、最後の詰めとしてシュウを実験体にして、人工的に魔堕ちさせようとしてた。魔王の話とは少し違うな。』


人工的に魔堕ちさせる?

マジで魔王の話と違うな。


『魔王が嘘ついたのか、実験が複数あって人工魔堕ちは気付いてなかったのか。どっちにしろシュウを実験体にすることはないだろうし、魔王が研究所に爆撃したから、俺達がいる間は問題ないな。』


研究者が向かうところを確認して、地下に施設があっても大丈夫なように念入りに爆発させてたからな。

俺をそっち方向に誘導して。


『リフィも心から感謝してたよ。魔王を追い払うってのは差別意識すら無くすんだな。』


そうか。

名前で呼ぶ関係か。

そりゃまあ、毎日毎日朝から晩まで汗流してればそうなるよね!


『年寄りが集まってできた集団があるらしいんだけど、そこだけは気をつけた方がいいみたいだ。女王派の敵対派閥らしいから、逆にシュウを狙うかもって言ってた。でも、普段はリーメリア付近にいないらしいから、明日出発するなら大丈夫だろうってさ。』


完全にフラグじゃねえかそれ。

襲撃があると考えておいた方がいいな。


『で、ユーマはいつこっちに合流するんだ?』


『いや、その・・・明日いなくなるっていうんで・・・な。リフィが離してくれんのだ。』


内緒チャットをそっと拒否して、不貞寝した。



ドンドンドンドン!


うるせえなぁ。


ドンドンドンドン!!


「シュウ殿!起きてくださいシュウ殿!敵襲です!」


飛び起きて周りを確認する。

少し煙いか?


「すまない、起きた!もしかして、火をつけられたのか!?」


「そうです!急いで逃げる準備をしてください!気球はすぐにでも飛べますので、さっき気球が降りた所に向かってください!」


やっぱりフラグだったか。

ユーマはどこだ?


『ユーマ、今どこだ?』


『シュウ、なにしてたんだ!ずっと連絡してたんだぞ!』


熟睡してたようだな。


『疲れが残ってたみたいで、熟睡してたみたいだ。』


『はぁ・・・気球のところで待ってるぞ。』


『わかった、すぐ行くよ。』


ドアを開けようとすると、外から金属がぶつかりあう音が聞こえた。

護衛君が戦っているとすると、いきなりドアを開けるのは良くないだろう。

どうしたものか。


『シュウ!そっちに暗殺者が向かったらしい!生きてるか!?』


『生きてるぞ。どうしてわかった?』


『精霊魔法の1つで遠見ってのがあるらしい。それによると、護衛がドアの前で陣取って暗殺者を食い止めてるそうだ。』


ドア開けなくて正解だったな。


『わかった。どうにかして護衛君がドアから離れるように伝えられないか?』


『何か思いついたのか?』


『ドアごと斬ってやろうと思ってな。』


『わかった、どうにかできないか聞いてみる。』


さて、護衛君がどいてくれた時のために装備は出しておかないとな。

流石にここで黄龍の叫びを使ったら、建物自体崩壊してしまうだろう。

単純に斬るだけが最善だと思う。


『シュウ、やれるらしい。準備はいいか?』


『やってくれ。』


『3、2、1、いなくなったぞ!』


「剣技、真空刃無式!」


真空刃ほど遠くを攻撃できないが、威力は16倍という上位の剣技だ。


『うわあ、一斉にドアに向かったせいで全滅したぞ・・・。』


成功したらしい。

心がモヤっとする。

ああ、そうか。

見た目は純粋な人間と少し違うけど、人を殺したのはこれが初めてか。

ワー・ワー連合の時は顔が完全に動物だったから、魔物として見てた。

諜報部隊も直接手を下したわけではない。

放置はしたけど。


自分の手を見る。

別に血塗れってわけでもないし、斬った感触が残ってるわけでもない。

ゴブリンを斬った感触は今でも忘れてないけど。


「おお、流石シュウ殿です。助かりました。」


護衛君が恐る恐るこちらを見ていた。


「ああ、無事で良かったよ。気球まで案内頼めるかな?」


「はっ!お任せください!」


今は余計なことを考えるな。

ユーマと合流して、さっさと中央大陸に行こう。


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