表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/58

魔王再来


夜、空気が破裂したような炸裂音で目が覚めた。

ベッドから周りを見渡すが、変わったことは特にない。

ユーマが部屋でハッスルしすぎたのだろうか。


違うな。

外が騒がしくなってきた。

暗くされていた魔灯が明るくなり始め、街中がある程度の明るさを保つ。

またエンディールの連中がやらかしたのか?


「まさかあんなに強固な結界だとは思わなかったわぁ。予定外に大きな音がしたせいで、耳長族にばれちゃった。」


後ろからいきなり聞こえてくる、聞いたことある声。

あまり聞きたくない声でもあるが。

振り向いて、確認する。


「はぁい、巻き込まれ君。元気してた?」


間違いない、魔王だ。

頭の中が{?}で埋め尽くされる。

ここにいるはずないだろう。

ここにいてはいけないだろう。

どれだけ考えても無駄だということしかわからなかった。


「こらこらぁ、無視しないでくれるかな?君にはフレンドリーに接したいんだから。」


「ああ、すまないね。いきなり現れるから吃驚しちゃったんだよ。」


「そんなに驚くことでもないだろう。」


そう言いながらほっぺたをふくらませる魔王。

必須アイテムすら揃ってない状態で魔王が目の前にあらわれるとか、絶対に覆せない負けイベントと同じなんだが。


「聞きたいことがあるだけだから、そんなに構えないでほしいな。」


そう言うと魔王は勝手にイスに座った。

立ったままというのもあれだし、ベッドに座ることにした。


「耳長族から出された条件はなんだった?」


は?

聞きたいことってそれかよ。


「実験の手伝いをして欲しいと言われた。」


「実験・・・ね。それで、なんと答えたの?」


「まだ答えてない。どんな実験なのかも知らないのに、返事なんてできない。」


「そりゃあそうだよね。」


さっきから魔王の見えてはいけないところがチラチラ見えてるんですけど!この女魔王の布面積めっちゃ狭いから際どい通り越してちょっとポロリしてるんですけど!話に集中できねえ!!


「耳長共の実験は色々滞ってるみたいでね。そこで現れた勇者でない異世界人に、目をつけたというところか。皆殺しにした方が絶対早いよね。」


恐ろしいことさらっと言ったな。


「エルフを全滅させられると、中央大陸に行っても魔王の胎に入れないんだけど。」


「チッ、仕方ない。今から全滅させるのはやめておこう。まったく、誰だよあんな無駄な設定付けたの。開発者に会うことができたら、地獄みせてやる。」


ふむ、開発者ね。

この世界の人間では出てこない言葉だよね。


これで決まりだな。

前勇者の残した情報とも一致する。


魔王は元勇者だ。

しかも記憶はそのまま残っている。


「ああ、そうだよ。君は東の大陸で色々本を漁ってたらしいから、気付くとは思ってたけどね。ちなみにどんな情報だったのか、内容を教えてくれないか?」


いきなり何言ってんだこいつって思ったけど、気付いたことにばれたのか?


「そうだよ。精霊魔法については聞かされなかったの?」


は?

なんで魔王が精霊魔法使えるんだよ!?


「それが今代の魔王ってことだよ。更に言うなら、魔眼も同時使用で普通の精霊魔法使いよりかなり正確に把握できる。」


そんなのチートじゃねえか。


「元勇者で現魔王なんだからチートで当然じゃないかな。魔王化してからは、勇者の頃よりかなり強くなったと思うけど。」


ちょっと待て・・・。

心の声が聞こえるってことは、さっきの見えてはいけない的な内容も聞こえてたのか?


「露出狂じゃないんだけど、魔王になった時気付いたらこの服になってたんだ。着替えるとか考えることもなくなっててさ。あ、見たいなら見る?君なら別に全部見せても構わないし、なんならその先も」


全部聞こえてたー!俺の心読まれてたー!どうするどうしよう!?このままじゃ変態のレッテル貼られてしまう!魔王に!そんなのもうこの世界で生きていけないじゃん!口封じしようにも俺が勝てる相手じゃないし!ユーマ連れてくるか?いや駄目だ!今のユーマでも相手にならないはずだ!条件が揃ってないし何よりあいつ今お楽しみの最中のはずだし!


「ふむ、ショックのあまり最後の方は聞こえてないねこれ。」


「え?」


「いや、こちらの話。ついでに今のも全部聞こえてるからね。」


いいいいいいいいいやあああああああああああああああああ!


「落ち着いて。気にしてないし、男が女の裸に興味もたない方が問題じゃないか。」


なんて男に都合の良い考え方をしてくれるんだこの魔王!

女神か!?


「いや、魔王ですけど。」


さて、とりあえず落ち着こう。

今のところ俺とは敵対するつもりはないと判断しても良いみたいだし、この際色々聞かせてもらうってのもありじゃないだろうか。

エルフの実験内容とか。


「耳長族の実験が何か知りたいのか。私の知っている範囲で良いなら教えるよ。」


心読まれるってある意味便利ね。

シリアスモードだと特に。


「耳長族の実験は人間から魔力を抽出し、マジックアイテムやそれに近い物のエネルギーにするというものだね。でもエネルギー効率が悪いから、思った以上に悪い結果しか出てないらしい。」


「それって命の危険は?」


「もちろんあるよ。勇者なら莫大な魔力が備わっているから、100人や200人分の魔力を抽出してもなんともないだろうけど、君だと死ぬだろうね。そんなに魔力量も多くないから確実に。」


エルフ・・・俺を殺す気満々じゃねえか・・・。


「勇者が生きていれば魔王討伐は成る。なれば今回なぜか付いてきた勇者の同胞。実験体にするにはこれ以上に適している存在はいない、と考えてるみたいだね。」


「はぁ・・・、約束守れそうにないな。ごめん。」


エルフは最初から俺を実験体としか見てなかったってことか。

エンディールも本当なら俺の事を実験体にでもしたかったんだろうが、ユーマの目があったから、ぎりぎりそうならなかっただけだろう。


「何言ってんの。約束は守ってもらうよ。」


「いやいや、実験に手を貸さなかったら、クリスタルはもらえないんだ。中央大陸に渡ることはできても、魔王の胎には入れないじゃないか。」


「だから、実験に手を貸さなくても、クリスタルがもらえる状況を作ればいいんでしょ?例えば、いきなり姿を現した魔王を君が追い払ったらどう?」


おお、なるほど。

それならクリスタルを要求しても断ることはできないだろう。

ゲームと違って、決まったことだけやっていればいいわけじゃない。

むしろ、こっちから相手が折れる状況を作れば良い。


「エンディールから逃げ出したって聞いたから、思考誘導から逃れたと思ってたんだけど違うみたいだね。」


思考誘導?


「気付いてなかったのね。そうすると、エンディールから逃げ出したのは偶然か。」


「説明してもらっていい?」


「勇者は行動を誘導する魔法がかけられてるんだよ。召喚された時には既にね。」


最初から決められたレールを歩かされてただけってことか。


「エンディールから逃げ出すって行動は、その中には入ってないんだよ。だから君には期待したんだけどなぁ。」


なぜ思考誘導から逃れることができたのか?

一度逃れたのに、また誘導にかかったのはなんでだ?


ゲーム的な考え方をすると、選択肢は ”はい” しか選べないってことかな。

”いいえ ”を何回選んでも話がリピートするか、聞き間違いかなって言われるやつだ。


「この話は中央大陸に着いてからでも遅くないし、今は約束を守ってもらうためにも、私を北の大陸から追い払ってもらおうかな。勇者には邪魔をしないように伝えておいてね。」


仕方ない。

新しい悩みは増えたけど、クリスタルゲットのために、魔王との約束を守るために、名脇役並の演技を見せてやろうじゃねえか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ