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魔王


気球に乗って、快適な空の旅を満喫していたら、目の前に紫色の肌をした女性が現れた。

服装がとても際どく、大事な部分がギリギリ隠れている状態だ。

空を飛んでいるので、風に吹かれて服がずれないかとても心配になる。

誰か魔法使い呼んで来て!強風の魔法使える魔法使い!


「ひぃい!」


「いやだぁ!死にたくない!!」


この空飛ぶ紫色の肌の女性を見てから、気球の操舵をしてくれる二人が、恐慌状態に陥ってるんだよね。

無料で異性の裸が見れるかもしれないのに、そんな反応したら失礼だよ?

かなり美人だし。


「私を見て恐慌状態にならないということは、お前らが異世界から来たんだな。」


おっと、とんでもないこと言ったね今。


「ふむ、なるほどなるほど。今回はそうなったのか。エンディールは本当に愚かな国だと証明されたな。」


俺とユーマを見比べてぶつぶつ言っている。

ユーマは状況がわからないからか、刀に手をかけてはいるけど、抜こうとはしていない。


俺は装備を出してもいない。

本読んでたんだよ。


風を受けながらの読書は面倒だけどそれなりに楽しかった。

憂鬱な気分にならなくて済んだからな。


「ほほう、お前は・・・そうかそうか、今回はそういうことになるのか!」


何か気付いたようだ。

状況が動きそうな予感。


「私は魔王だ。」


ユーマはすぐに抜刀術を発動。

俺はマジックボックスから、髑髏マークが描かれている薬瓶を出して投げつける。

魔王と名乗った美女に届くことはなかったが。


「おいおい、いきなり攻撃とか酷いじゃないか。しかも、無意味だとわかってて攻撃するのはお勧めしないぞ?お前らはそんなに馬鹿じゃないだろう。」


確かに、本物の魔王だとすると、今の俺達だと攻撃しても意味がない。

なぜそれをこの魔王が知っているのか、そこが一番知りたいところだが。

やっぱり、北と南の図書館に行く必要があるなぁ。


「その本は東の大陸にあったのか?」


俺の手にある本を見て聞いてくる。


「そうだけど、それが何か?魔王ともあろう存在が知らない知識でもあるのか?」


「知らないことばかりで嫌になるよ。でも、今のお前よりは知ってることが多いな。」


短気ってわけじゃなさそうだ。

皮肉を返してくる程度の頭もある。


「あんたが魔王って証拠は?なぜ今現れた?」


ユーマが割って入ってきた。


「貴様ごときのために、なぜそんな労力を使わねばならん。」


なかなか冷たい反応だ。


「俺達を殺しにきたとか?」


ないと思うけど、一番大事なことなので聞いてみる。


「いや、今殺す気はない。確認のために来ただけだ。」


ん?

俺には優しくないか?


「確認が終わったんなら、どこか行ってくれないか?俺達だと気球を動かせないんだ。」


今度はユーマが柔らかく問う。


「貴様が決めるな。動かせないならその気球破壊してやろうか?」


決まりだな。

魔王との交渉は俺が担当するべきだ。

選手交代、代打俺!


「それは困る。できれば穏便にすませたい。」


「穏便にすませたいなら、その男に喋らせるな。」


ユーマが初対面でここまで嫌われるなんて、今まで見たことないぞ。


「それで、どうすれば見逃してくれる?」


「そうだな・・・、北の大陸でやることが終わったらすぐに中央大陸に来るか?」


「そうしたいと思ってるよ。南の大陸が不穏な動きしてるし。」


「ふむ、ならば良い。穴の中で会えるのを楽しみにしているぞ。」


ニヤリと笑って魔王を名乗る美女は飛んでいった。

方向的に中央大陸に向かって。


とりあえず、気球を動かすためにおっちゃん達起こさないと。

振り返ると既にユーマが万能薬を使っていた。

恐慌状態を解除するには万能薬を使うしかないのだ。


「貴重な部類に入る消費アイテムを、こんなところで使うことになるなんてな。」


苦笑いしながら言うユーマに、同じく苦笑いしながらそうだなと返しつつ魔王が飛んでいった方を見る。

問題発言ばかりだったなぁ。

東の大陸で見つけた、数冊の本。

これを読んでなかったら、今頃パニックだったろう。


「北の大陸で色々調べ物しないとだな。俺達が知ってることと違いすぎてるぜ。」


あまり事前に情報を集めないユーマも、等々情報が必要だと気付いてしまったか。

まあ、あの自称魔王が言ったことを聞いて、そう考えなかったらユーマじゃないよな。


「ユーマ、北のクリスタルを手に入れて、中央大陸に着いたら言うことがある。」


「今言ってくれないのか?」


「おっちゃん達が起きたからな。寝てても言えなかったけどさ。」


「わかった、俺も言うことがある。中央大陸に着いたら言うよ。」


「そうか、どっちの話が衝撃的か楽しみだな。」


起きたおっちゃん達は、急いで色々修正していた。

かなり風に流されてしまったようで、予定より1時間は遅れるらしい。


おっちゃん達は、自分がどこにいるか魔法で知ることができるそうだ。

特殊魔法らしく、使えるのは東の大陸ではこの2人だけ。

なので、この2人が1台しかない気球の操舵を任されているらしい。


その後、俺は本の続きを読み、ユーマは寝た。

魔王が現れることもなく、快適な空の旅を満喫することになった。



北の大陸はエルフの女王が治めている。

クリスタルをもらう以外にすることは特にない。

と、勇者に関する本に書いてあった。


こう見ると、東の大陸以外はクリスタルを貰うしか行く意味ないんだよね。

ゲームの時は薬草類の種類が多いので、魔法を使えない俺達は重宝した。

中央大陸に渡ってからは、プレイヤーマーケットで買うことにしたけど。

高いんだよね、NPC売りの薬草類。


「それじゃあ、わしらはこれで。お気をつけてください。」


操舵のおっちゃん達にお礼を言って、気球が無事飛び立つまで見送る。

名残惜しいというのもあるけど、一番の理由はシンプルだ。

俺達が逃げたら気球狙うだろうからな、この周り囲んでるやつら。

おっちゃん達が気付かなかったのが幸いだ。


「どうする?気球が見えなくなったら、逃げるか?」


「いや、やろう。ついでに1匹捕らえようか、聞きたいことあるし。」


さあて、暴れるぞー。

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