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クイーンを倒す手段は見つけた。

毒を使う。

外皮が硬くて物理攻撃で毒をあたえることはできない。

毒魔法を使っても、アダマンタイトの特性のせいで魔法がとおらない。

なので、毒は効かないと思われていた。


毒は効くのだ。

体内に直接ぶちこんでやれば、確実に身体を蝕む。

知ることができたのは完全に偶然だ。

昔の文献を漁っていた斥候君のお手柄だ。


「ヒヒイロアントのクイーンに毒を食わせて倒したって文献があったよ!」


ヒヒイロアントはアダマンアントより上位の存在だ。

ただの上位存在ではなく、オーアント系の最上級だ。

ヒヒイロアントのクイーンより強い存在はいない。

そして、この世界では上位の存在に効く攻撃は、下位にも効く。

蟻系という括りにしてしまうと、ポイズンアントってのがいるからまた別になるんだけどね。

あくまでも、オーアント系だけの話だ。



ヒヒイロアントのクイーンは、600年前に倒されていた。

この時犠牲になった人数はたった1人。

毒の研究のために身体に毒を溜めこむ人がいた。

この研究者が食われたことにより、ヒヒイロアントのクイーンは死んだ。


研究者は自分から志願したそうだ。

自分を食って生きているなら、この大陸は滅びるだろう。

でも、ヒヒイロアントのクイーンが自分を食べて死ねば、オーアント系には毒が効くということになる。

結果、クイーンは死んだ。


ちなみに毒の種類も書かれている。

そしてその毒は大量に生産することが容易なものだった。


「毒で倒してくださいっていうチュートリアルか?」


ユーマの言いたいことはよくわかる。

ゲームでも毒を使うことは多かった。

ガス状にしたり、水に混ぜたり。

ボスクラスにも効く相手が多かった。


「毒の準備は我々でやるから、勇者御一行は首長のところに行ってくれ。一段落ついたら絶対に呼ぶように言われてるんだ。」


義理の父になる人なのだ。

行きますとも!


義父のところに顔を出すと、嫁の姿はなかった。

テンションだだ下がりである。


「2人してその落胆の色はどうにかしてほしいね。」


おっと、ユーマも同じ考えだったようだ。

絶対に譲らないからな!


「君達を呼んだのは色々あるんだがね。まずは、兄を助けてくれてありがとう。」


親戚になる人だからね!

助けるのが当然でしょ!


「兄から個人的にお礼がしたいと言われてね。君達が喜ぶものを考えていたんだよ。」


天使ラズちゃんとの結婚を許してくれるなら他には何もいりません!


「色々考えたんだが、ドワーフで最高の腕を持つ鍛冶師に会わせようってことになったよ。」


笑顔でいう義父。

違うそうじゃない。


「君達が娘を好いてくれているのは良くわかっている。でも、娘がほしいなら惚れさせることだね。娘が選んだ相手なら我は何も言わないよ。」


言質取ったり!


「さっそく行こうか。」


ラズちゃんのところですねわかります。


義父について行くと、どうみても女性がいるような場所ではなかった。


「彼がドワーフで最高の鍛冶師、ヴァルヌだ。君達の武具を一段階上に引き上げてくれるだろう。」


は?

ラズちゃんのところに連れて行ってくれるんじゃねえのかよ!こんな髭の生えたおっさんに興味ねえんだよ!大体俺達の武器はこの世界で伝説になってるレベルだぞ!こんなおっさんになにかできるわけねえだろ!さっさとラズちゃんのところに案内しやがれ!


「変な顔してないで、さっさと出せ。」


上から目線のおっさんだな。

黄龍の叫びくらってみるか?


ユーマが素直に出しているので、仕方なく俺も出す。


「ほう、黄龍の剣は本当に存在したんだな。む、この刀は無水か!」


見ただけでわかるとは、このおっさんなかなかやるな。


「両方共、素材が足りんな。」


えぇ・・・。

おっさん以外のここにいる人全員ずっこけたぞ。

コントじゃないんだから・・・。


「無水はアダマンタイトがあればできる。黄龍の剣は色々足りんな。」


つまり今回の蟻退治が終わったら、ユーマの武器は次の段階にいくわけだな。


「俺の方はどれくらい足りないんだ?」


「北の大陸で取れる神木と、中央大陸にあるといわれる魔導鉱だな。それ以外はここにある。」


別の大陸にいかないと駄目なのかよ。

さっさと蟻退治して、ユーマの武器だけでも強化するか。



準備はほぼ終わった。

後は水だけだ。

ユーマのマジックボックスには、今も海水が流れ込んでるはずだ。

準備している間ずっと溜め続けて、作戦開始前に持ち運び転移装置を出す。

ユーマとは違う場所に設置し、開始と同時にまた扉を開けて2方向から水攻めすることにした。


マジックボックスを開け続けるので、ユーマは動けなくなる。

なので俺が毒を担当。

主に投げつけるだけだが。


今回一番危険なのは、間違いなく冒険者達だな。

俺達に蟻が近づかないように牽制しないといけないからな。


水が溜まるまでできるだけ時間を稼ぎたかったが、蟻はまったく動く気配がなかった。

冒険者と連合国軍が協力して蟻を見張っているので、動きがあればすぐに連絡がくる。

蟻は巣を拡大しているのではないか、大量の兵隊蟻を生んでいるのではないか、などなど色々とお偉いさん達が話し合っているそうだ。


蟻が動かないので、巣の近くに簡易的な前線基地を作ることになった。

今はそこで作戦開始まで待つことにしている。


最初は、俺達のタイミングで始めていいと言われていた。

なのに、国の危機だからこっちの言う事を聞けと、連合国軍の幹部連中が喚き始めた。

義父からは無視してくれと言われたので、俺達は俺達で動いている。


作戦開始は明日の夜にした。

アダマンアントのクイーンが発見されてから、既に6日経つ。

オーアント系は1週間で卵が孵化すると言われたので、攻めるならこのタイミングがベストらしい。

もちろん、そんなに上手く事が運ぶとは思っていない。

水を溜めている間にも使える物がないか探した結果、一番効果があるものを見つけることができた。

いざというときは、それを使えば問題なく終わるのだ。



昼頃に起きて、蟻に動きがないか確認。

まあ、昼まで寝てる時点でないんだけどね。


ユーマと着いてきてくれる冒険者チームと最後の確認。

これも特に問題なし。


日が落ちて、蟻がおとなしくなるであろう時間。

作戦開始。


実にあっさりと終わった。

水が捌けるまでどうなったかわからなかったが、無事に全滅していた。

クイーンが合計7匹発見された時は、流石に肝が冷えたが。


「素晴らしい戦果だね。オリハルアントまでいたってのは驚きだけど。」


義父、来てましたか。


「君が見つけたものってなんだったんだい?水攻めと毒で倒せなかったときに使うはずだったんだろう?」


「水を別のものに変えることができるマジックアイテムです。1度しか使えないので、使わずに済んでよかったですよ。失敗していたらと思うとゾッとしますし。」


蟻退治は終わったが、ユーマの武器を鍛えるのに数日かかるらしい。

北の大陸に渡るのは、武器ができてからなので、俺はその間本を読むつもりだ。

斥候君が持ってきた本は東の大陸の歴史だけではなかった。

勇者の歴史について書いてある本があったのだ。


よく考えれば、エンディールでは何も教えてもらっていない。

この機会にゲームとは違う、この世界の歴史についてもしっかり学ぶとしよう。

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