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誤算


蟻の巣に辿りついて一言、なんじゃこりゃ。

誘拐犯であろう人物達が必死に蟻と戦っている。

首長の兄らしきドワーフは、魔法の壁に囲まれて無事っぽい。


「おいおい、なんの冗談だこれは。誘拐犯と蟻が戦闘してるとか思わないだろう。」


冒険者達も同じ考えのようだな。

考えられるのは、俺達の目的地に先回りしようとしたら、そこにいた蟻に絡まれてしまったので撃退した。

すると、どんどん湧いて出てきたので、人質である兄だけでも魔法で守っているって感じかな。

俺達が目的だとしても、首長の兄に何かあったらそれだけで戦争に発展してもおかしくない。


「どうする?首長の兄だけでも助けるか?」


それができるのはユーマか、斥候だけだろう。

ユーマに任せるか。

アイコンタクトするとユーマは理解したようで、気配を消して一気に首長の兄を攫ってきた。

あの魔法は攻撃は防げるけど、それ以外は無理なのか?


「流石に移動させるだけなら結界魔法も感知しなかったな。よし、後はあいつらが全滅一歩手前くらいまでのんびり見物するか。」


なかなか鬼畜なことを言うね。

まあ、誘拐犯にかける温情なんてないわな。


「君達は噂の勇者御一行かね?助けてくれてありがとうだね。我輩はドラフバルの兄、ボルタバルというね。」


「ボルタバルさん、詳しい話を聞かせてもらっても良いですか?」


疲れているだろうボルタバルさんは、今起きている状態の説明をしてくれた。


誘拐犯は俺達が要求をのめば、すぐにボルタバルさんを解放すると言っていた。

ボルタバルさんは、弟が自分を助けるために相応の戦力を送ってくれると信じていた。

なので、色々と安心はしていたが、蟻の巣に足を踏み入れてしまい、もう駄目だと思っていたら俺達が現れて助かった。


「あいつ等は馬鹿だね。すぐに逃げれば大丈夫って教えてやったのに、我輩の忠告を無視して蟻を殺してしまったね。1匹殺してしまうと、ワラワラ出てきて面倒なことになるとも言ったのにね。」


蟻を相手にする場合、出てきた所からできるだけ離して倒すのが常識だそうだ。

そうすることにより、援軍を絶つこともできるし、鉱石も安全に集めることができるらしい。


「目的が勇者って気付いてからは、どうやって逃げようか考えたね。結局何もできなかったけどね。」


誘拐犯はここで俺達と交渉するつもりだった。

蟻の巣にボルタバルさんを放置して、要求をのまなければ守っている魔法を解除すると脅すつもりだったらしい。

だから、ここでどれだけ蟻が襲ってきても、離れるつもりはなかったと。

結局作戦は失敗した。

自分達の仲間が死ぬというおまけつきで。

途中からは意地になって蟻と戦っているように見えたそうだ。

馬鹿だな。


「まじいな・・・。あれはアダマンアントだ。1匹で国が半壊したって化け物だぞ。」


斥候君が驚いている。

ん?

アダマンアント?

確か、次のエンドコンテンツの雑魚敵がそんな名前だったはずだ。

斥候君が知っているってことは、昔東の大陸にいたということになるが、俺の記憶にはない。

アプデ情報で初めて見た名前だった。

ゲームとの違いはあると思っていたが、まさかエンドコンテンツクラスの敵で違いを知ることになるとは思わなかったな。


「おいおい、あれはアダマンアントのクイーンじゃねえか!?なんで地上に出てきてるんだよ!?」


クイーンまで登場。

確かクイーンは通常個体より強いはずだ。

斥候君の独り言を聞くには、本来クイーンは地上に出ることはないようだ。

確かにクイーンはボスとして、ダンジョンの最奥くらいでしか見たことない。


どうしたものかと考えていると、誘拐犯は残り2人になっていた。

必死に魔法を使って、武器を振るっているが・・・。

傷1つ付いてない。

今のうちにできることはしておかないとだが・・・。


「冒険者諸君、1匹だけ誘導できるか?」


俺の問いに冒険者達は笑って答える。


「無理!」


デスヨネー。

斥候君の顔見るとそうだろうなと思ったよ。

できることなら、単体相手にして攻撃が効くか試したかったんだが。


元々東の大陸は攻撃魔法を得意とするプレイヤーが狩場としていた。

物理耐性が高く、魔法耐性が低い魔物で構成されていたからだ。

俺とユーマは物理攻撃に特化している。

ゲームで東の大陸を攻略した時は、魔法を封じ込めたアイテムを使ったり、魔法使いと臨時PTを組んだりしていた。


この世界に召喚された時は、エンドコンテンツクリア後の装備だったため、東の大陸が物理に強かろうと関係ないはずだった。

まさか次のエンドコンテンツで出てくる雑魚敵が、東の大陸に出現するなんて誰も思わないだろう。


「一度街に戻って、魔法使いを連れてくるか?」


ユーマの案はとても魅力的だが、あの蟻を倒すほどの魔法使いってこの大陸にいるのだろうか。

多分いないよな。


「無理だと思う。あの誘拐犯が使ってる魔法以上に強い魔法使ってる冒険者なんて見たこともないし。」


斥候君から助言がきた。

まあ、そうだよな。

普通に考えて、エンドコンテンツに出てくる雑魚敵ってことは、最低でもレベル100ってことだ。

この大陸の魔物はレベル30~60くらいだった。

その相手をしている冒険者もそんなものだろう。


さて、打つ手がないぞ。

手持ちのアイテムでも倒せる気がしない。

そろそろ誘拐犯も全滅しそうだし、時間もない。


「一度逃げた方がいいね。流石にあれは勇者であっても無理ね。」


ボルタバルさんのありがたいお言葉だ。

冒険者達も必死に頷いている。


「そうしよう。あれを相手にするには準備が足りない。」


戦略的撤退だ。

次は勝つ!

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