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いざ、蟻の巣へ

再開します。


俺とユーマの暴走は小一時間続いた。

事態を収拾するために、首長は条件を提示してきた。

蟻を壊滅させれば、1人ずつアピールする時間をくれるそうだ。


「まったく。我がここに来たのは、こんなことを言うためではないのだが。」


すいませんね。

運命の人に出会ってしまったのだから仕方ないでしょう。


「先程エンディールから苦情が来たよ。君達に協力するのならば、勇者の恩恵を得ることは無いと知れと言われたよ。意味がよくわからないんだけど、君達ならわかるかな?」


わかるわけがない。

勇者である俺がドラフバルにいるのに、恩恵も何もあったもんじゃないだろう。

召喚された時に勇者と言われてるのに、今更勇者は別の人でしたなんて言われたら、エンディールに対する信頼は0になるぞ。


「君達は既に蟻退治に出発したということにした。無論、間者はいるだろうけど、すぐに動けるのは少ないだろう。」


いくら魔法があると言っても、俺達より早く移動するにはクリスタルを使った転移しかない。

ゲームでは、自由に転移を利用できるのは俺達プレイヤーだけだ。

NPCは王族であろうと貴族であろうと、ギルド長であろうと転移を利用することはない。

現実となった今では多少違うだろうが、事前に申請がないと無理だろう。

勝手に転移すれば、それこそ戦争になってもおかしくない。


「明日は朝一で動いてもらえるかな。ギルド長には我から伝えておくよ。」


首長はそう言うと天使ラズちゃんを連れて出て行った。

ちくしょう。



日が昇り始めた頃目覚めると、ユーマはベッドにいなかった。

外で素振りでもしてるんだろう。

昔からの習慣ってやつで。


さっさと準備を終えて食堂へ。

弁当も注文して朝飯を食べる。


「朝からよく食うな。俺の分は注文してくれたのか?」


「当たり前だろ。早く準備してこいよ。食ったら出るぞ。」


やはり素振りをしていたユーマは、部屋に戻っていった。


朝飯を食って外に出ると、冒険者のチームが待っていた。


「3ヶ月は遊んで暮らすんじゃなかったのか?」


昨日お世話になったチームがいた。


「これでもランクAチームなんでね。勇者の護衛をギルドから直接依頼されたら、断るわけにもいかないんだよ。もう1人はどうしたんだい?」


もう来るよと伝えてから、蟻の情報を聞く。


単体ではそんなに脅威ではないが、集団になると数の暴力で全滅するチームも多々ある。

それが蟻の普通の評価。


今はクイーンが複数いるためか、単体でもかなり危ないらしい。

普段の倍は凶暴だと言われているらしく、ランクCの冒険者が単体相手にやられたそうだ。

助けたかったけど、後ろに複数体居たために、チームのメンバーは逃げ出すことを優先した。

まあ、普通だわな。

俺達もそうする。


「単体ならランクDが1人でもなんとかなる相手のはずなんだ。それがランクCがやられたとなっては普通の状態とは言えないだろう。」


冒険者達からすると、いつもなら楽勝な相手がいきなり強敵になったもんだから、油断したやつが悪いとは言いきれないと思っているらしい。


そんな話をしているとユーマが出てきた。

これで出発だな。


「待たせたみたいだな、すまない。」


全員が揃ったので、一番気になっていることを聞く


「人探しもしてほしいと言われたんだけど、何か聞いてる?」


冒険者達は顔と目でここでそのことを喋るなと伝えてきているようだった。

てか、めっちゃ顔怖いんだけど。

とりあえず外に向かうことにしよう。

話すタイミングが来れば向こうから話してくれるんだろう。


門に着くと門番から、エンディールの間者が数人出入りしたことを聞かされるが、俺達が聞いてもどうにもできないんだけど。

それでも尾行はされているってことだけでも頭に入れておけと言われた。

確かにそうだな。


街の外に出て、冒険者に先導されて歩く。

人の気配がなくなった頃に俺とユーマを中心にして、冒険者達が小声で喋り始めた。


「探して欲しいのは、ドラフバル首長の兄だ。恐らく誘拐された。」


犯人に心当たりはあるらしい。

エンディールの間者だ。

なぜそこまでするのか疑問だが。

そして、俺達が来る前に誘拐される意味があるとは思えないんだが。


「本当は有能な冒険者が行方不明になったのを探してもらうはずだったらしい。それが昨日の夜、首長の兄が帰って来なかったので、急遽探して欲しい相手を変えたってことだ。多分だが、あんた達に協力しているのが原因だと思われる。」


ちなみに、首長の兄は外に出たりすることはなく、事務仕事をして過ごすそうだ。

仕事部屋で生活しているので、行き帰りに襲われることもない。

その兄がいきなりいなくなるということは、誘拐以外ありえないというのがドラフバルの結論。


「それじゃあ、今向かっているのは蟻の巣ではなくて、誘拐された兄の所ってことか?」


「いや、蟻の巣に向かっている。誘拐犯もそっちに向かったそうなのだ。」


なぜわざわざ俺たちが向かう方に行ったんだ?

馬鹿なのか?


「もしかしたら、俺達のせいで首長の兄は死ぬんだとか言いたいんじゃないか?」


ユーマが嫌そうな顔で言う。

確かにそれはあるかもしれない。

俺達の我侭で世界を危機になんたら言ってたもんな。


「だとしたら、エンディールは無能の集まりになったってことか?俺達が知ってるエンディールはもう少し冷静で計算高かったと思うんだが。」


冒険者達も腑に落ちないみたいだな。

まあ、蟻の巣付近まで行けばわかるんだ。

着く前に作戦でも練っておこうか。


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