第三話 突風と共に……
遅くなりまして申し訳ございません。
出来る限り早く更新はしたいのですが、引越しをする為三月、四月は少々登校が遅れます。
※この物語はプロットの為、完成版に合わせ続きを執筆をしていきます。その為、前話と話の辻褄か会わない可能性がありますが、ご了承ください。
二週間の時が過ぎ、アルク達はアルフヘイムの街へと到着していた。
「姫様……これは?」
精鋭騎士達10人と共にアルフヘイムに帰って来たフレイヤに、驚愕の表情を泡らにしながらスーシャが問う。
「助けを求めた結果がコレ……と言うのは説明を省き過ぎよね……」
長旅の所為かフレイヤは少し疲れた表情をしながら頭をかく。
「まぁ、良いですよ。アルク殿のおかげでアルフヘイムの食料自給率は既に回復しております。それどころか飢餓に陥る前よりも収穫量が良い位です」
スーシャはそう笑みをこぼす。
長年、アルフヘイムに住むスーシャ達長老はようやく一安心と言う感じだ。
「そう。それは良かったわ」
簡素に言うフレイヤだったが、目を細め優しい眼差しをしており、正しく目は口程に物を言う、と言う言葉を体現している様だった。
「フレイヤちゃん」
そう言い、フレイヤの後ろから現れたのは短パンに動きやすい服を纏ったセレスだ。
「ん?セレス……様どうかし……ましたか?」
「フフフ、いつも通りで良いですよ」
話しにくそうにしているフレイヤに笑みを浮かべるセレス。
「うぅ……なれないのよねぇ……敬語って」
「精霊族は同族を家族の様に隔てなく接すると聞いています。慣れていないのは仕方が成都思いますよ?それに、フレイヤちゃんも公式の場だとちゃんと敬語仕えていますから大丈夫です」
「そう?」
「はい」
二人がそう会話している横で口を開け呆然としている老人が三人いる事を二人はまだ気が付いていない。
「セレス様、フレイヤ様、スーシャさん達が呆然としていますので話を本筋に戻してください」
二人の後ろで表情一つ崩さず待機していたアルクがここにきてようやく声を発した。
「そうですね。申し訳ありません」
アルクの言葉で気を取り直したセレスが未だ口を開けている三人に軽く頭を下げる。
すると、三人の表情はみるみる青ざめていく。
「こ、皇女殿下が頭をさ、さ、さげるなどどどど……」
「そ、そ、そ、そうですぞ……」
「………」
ものすごく動揺しているスーシャどゴード。そして未だに口が開いたまま、徐々に青ざめて行くゲルマンだった。
「はぁ……三人ともどんだけ緊張してるのよ」
「ふふ、そこまで緊張しなくても大丈夫ですよ?取って食おうと言う訳でもありませんから」
呆れ気味にため息を吐くフレイヤに対して、普段城内とわずかな学友としが接していないセレスにとってスーシャ達の反応は新鮮で少し面白い様く、軽く口を押え笑う。
「セレス様がそんな風に笑うのは珍しいですね」
「っむ、アルク君。その言葉は酷くないですか?」
「そうですか?」
「女の子に対して冷徹と言っている様なものですよ!」
セレスはぷんぷんと擬音が出ていそうな程、怒りをアルクにぶつける。
しかし、二人の姿を傍から見ていると――、
「二人とも、一応ここ公衆の面前だから……そのやり取りは後にして……」
と、フレイヤが呆れる程、仲良さげにじゃれ合っているようにしか見えないのだ。
「そうだ、姫様」
ようやく気お取り直したスーシャが切り出す。
「何?」
「精霊様が目を覚ましたようですぞ」
「っ!本当⁉……って……はぁ……」
フレイヤは驚きを露わにした直後、何処か微妙な表情に変わる。
「えぇ、昨日わしの下に来て姫様が帰って来たら神殿に来るようにと、それと……」
しかし、安心したフレイヤに言い難そうにスーシャが言葉を濁す。
「ん?どうかした?」
「精霊様はアルク殿と皇女殿下を一緒に連れてくるようにと……」
「そう……」
スーシャの言葉を聞いたフレイヤも同様に気を落とすと、セレスが疑問を口にする。
「フレイヤちゃん、私とアルク君が呼ばれると何か不味いのですか?」
「いや、そう言う訳じゃ無いのよ……ただ……」
そう言い、フレイヤは付かれた様に大きく溜息を吐く。
「それは会えば分かるわ。行きましょ、二人とも」
「はい……分かりました」
何処か納得していないセレスだが、言われるがままフレイヤについて行く。アルクもその後をついて行くが、さらにその後ろに精鋭の騎士達が続こうとする。
「申し訳ありませんが、騎士の皆さんはここで待っていてもらえますか?」
フレイヤが丁寧な口調で騎士達に言う。
すると、今回この騎士達をまとめる騎士団長が声を上げる。
「私達は姫様を一人にすることはできません!」
「ん……」
騎士の事盤フレイヤは少し困った様な顔をする。
「精霊様が居る神殿は精霊様がお呼びした者しか入る事が許されません。そして入る事すら出来ません」
「ですが!」
フレイヤの説明に尚も食い下がる騎士団長にフレイヤは本格的に困った表情でセレスを見つめる。
「騎士団長、私の護衛は私の騎士であるアストルフォに一任しています。同伴はアストルフォに聞いて下さい。アストルフォが騎士団の同伴が必要と判断した場合はどうにか出来ない私も考えます」
そう言ったセレスは小さな体に威厳を纏わせていた……はずだった。
と言うのも、そう言い終わった直後アルクにだけ見えるように下を出し悪戯っ子の様な顔を向けたのだ。
(アルク君、後はお願いします)
要は、アルクに丸投げしたのだ。
それにアルクはため息を吐きながらも一歩前に出た。
「護衛は僕一人で十分です。皆さんは皇帝陛下から承った任を遂行してください」
「……分かりました」
アルクの言葉に渋々と言う感じで騎士団長は退いた。
「はぁ……」
「ありがとうございます。アルク君」
何処か疲れた様に舌を向きため息を吐くアルクに、セレスは顔を覗き込み笑顔を向ける。
「珍しいわね、セレスちゃんが誰かに問題を丸投げするなんて」
と、傍から見ていたフレイヤは驚いた様に言う。
「そうですね。少し前の私なら絶対しませんでした。でも、アルク君に教えて貰ったので、私の周りに居る人たちの事を」
胸に手を当て、暖かそうに微笑むセレス。
そんなセレスにフレイヤは、
「そう」
と、笑みを浮かべるのだった。
「それじゃぁ、生きましょうか精霊様の下へ」
こうして三人はアルフヘイムの街から外れ、木々が生い茂る狭い道を進んで行った。
♰
「はぁ……はぁ……すごい道ですね……」
息を切らしながらそう言ったセレスはハンカチを取り出し汗を拭う。
「そうですね」
「普通の人間はセレスちゃんの様になるのが普通だから気にしないで」
そう言いながらアルクにジト目を向けるフレイヤ。
と言うのも、いま三人が歩いているこの道は獣道より酷い悪路だ。それを平然と歩けるのは経験とそれに伴って身に付く体力、筋力の賜物だ。息を切らさず歩けているアルクがおかしいのだ。
「ふふ、アルク君は普通の人間じゃありませんからね」
「……普通の人間ですよ」
と、ワントーン低い声で呆れた様にアルクは言う。
「……」
「……」
そんなアルクに二人は困った様に向かい合い……、
「それはない(です)」
二人が呆れた目でそう言った。そんな時だった――、
三人を暴風が遅い、体重の軽いセレスとフレイヤが飛ばされそうになる。
「っきゃ!」
「っえ……」
急に浮いた自分の体に悲鳴を上げるセレスと、驚きをお露わにするフレイヤ。
そんな二人の手を素早く掴むと自分の下へ抱き寄せ、片手で二人を抱えると近くに生える木の枝に手を伸ばし掴む。
「ん……」
「ちょっと……」
顔を赤くし俯くセレスと、同じく顔を赤く染めアルクを見つめるフレイヤだったが、アルクはそんな事を気にしず体が飛ばされない様、木の枝を掴んでいる手に力が入る。
そうして、しばらくすると暴風は収まる。
「ふぅ……」
アルクはゆっくりと地面に足を着けると、二人を抱いていた左手を離す。
すると、セレスは何処か名残押しそうに見ながら未だ顔を赤くしていた。
「アルク、急にあんな事しにゃいでよ。ビックリするじゃにゃい‼」
フレイヤも同様しまくりだった。
「それは申し訳ありません。フレイヤ様は飛べましたね」
アルクはその事を思い出し笑みを浮かべた。
「べ、別に怒ってないわよ。ありがと」
フレイヤは口を尖らせながらも小さくそう言った。
「それで、あなたが精霊様ですか?」
アルクはまっすぐ続く道の先を見つめそう言った。
「ん?アルク君?」
セレスはそんなアルクを不思議そうに見る。
「驚いた。アンタ精霊様が見えるの?」
「まぁ、一応」
アルクは分が悪いのかフレイヤから顔を逸らす。
すると――、
「フフ、面白いのが来たな。いや、私が呼んだ何だな。ワハハ」
何処からともなくそんな声が三人に聞こえる。
「精霊様、お久しぶりです」
「うむ、久しいなフレイヤ。それで……」
軽く挨拶を済ませたフレイヤと精霊だが、何処か訝し気な雰囲気で言う。
「初めまして……ではありませんね。その節はありがとうございました」
アルクは、精霊を知っている様な口ぶりで挨拶をする。
「アルク、精霊様を知っているの?」
驚くフレイヤだが……。
「フハハハハ、気が付いておったのかお主」
大きく笑う精霊の声で遮られた。
「気が付いたのは今です」
「そうか……それじゃぁ、私の事も?」
「過去を司る精霊……ではありませんね。過去を司る神――、ウルド様ですね」
アルクの言葉に暫く沈黙が支配する。
その間にフレイヤは額から汗を一筋流す。
「正解だな。まぁ、当たり前か。異世界の者」
沈黙――。
そして、沈黙――。
「「ん!?」」
ようやく声が響いたのはフレイヤとセレスの驚愕と疑問の声だった。
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