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第十一話 不穏な雲行き

これでようやく三章が終了となります。

1話多くなってしまった。

ここで、先に言っておこうと思いますが、この作品はプロットお様な物だと思っておいてください。作者の考え方の変更などに様々な理由により、内容などが改変します。

いつか、完成版をお見せ出来ればと思っておりますが……無理かも?


「さて、本題に入りましょうか」


 と、ファルミアの言葉を皮切りに緩んでいた空気が引き締まる。


「フレイヤちゃんが此処に来た理由は、観光って訳じゃなんでしょ?」

「はい……」


 フレイヤは何処か、申し訳なさそうに答える。


「私がここに来た理由は……今、アルフヘイムが崩壊の危機に瀕している為です」

「崩壊の危機?」

「はい。アルフヘイムは今、世界樹の急成長の所為で極度の日照不足となり、その為領民の殆どが飢餓に陥りしまいには疫病が蔓延しました」


 そう語るフレイヤは悔しそうにスカートの裾を握りしめる。


「と言う事は、それを助けてほしいと言う事?」

「いえ、飢餓の原因となった世界樹は剪定する事で、それに伴って疫病の蔓延も落ち着きました。何方もアルク君の提案が無ければ起きえなかった事です」

「そう……それなら、私達に何をしてほしいの?」


 ファルミアは不思議そうに首を傾げる。


「私がして欲しい事は一つ。戦争を止めてください」

「……それはどう言う事?」


 唐突に放たれた『戦争』と言う言葉にファルミアとセレスは驚愕する。


「元は、私達が最初に出した帝都への使いについて助けを求めようと思ったのですが、道中の事を考えるとアルフヘイムの私情を挟んで居られなくなりました。簡素に言ってしまえば、ベルトルト領が神聖帝国と繋がりを持ち、我がアルフヘイム領へと進軍して来ると言う事です」


 その言葉を聞いたフレイヤは苦虫を噛み締める様な顔をする。


「そう……それで、その情報は確かなの?」

「一応は信頼できる人物からの情報です。恐らく……セレス様も知っていると思いますよ」

「ん?私も知っているアルフヘイムの人物ですか?」

「えぇ、名前だけならばこの国の者なら誰でも……その者の名は剣聖・パーシヴァル=ペレディル。有名なおとぎ話に登場するお姫様を守る騎士様のモデルとなった人物です」

「パーシヴァル……捕らわれの騎士か……確かにそれは誰でも知ってるわね。でも、どうして彼がアルフヘイムと?彼は人間よね?まぁ、そこにも例外は要るけどそれはほっておくとして……」


 ファルミアはアルクを横目に話を進める。


「ファルミア様、おとぎ話を思い出してみてください」


 そう言われ、ファルミアは顎に人差し指を当て考える。

 しかし、出てこないのか小さく溜息を吐く。


「うん……そう言えば私、小さい頃から本読むのが嫌いでずっと魔法か剣の練習していたわね」


 と、ファルミアは舌を出し『テヘ☆』と言う。


「っ……お母さん……今の無駄な時間を返してください。」

「な、何かセレスちゃん今日は辛辣ね……」


 セレスの言葉に引きつった笑みを浮かべるファルミア。


「それは、何処かの例外さんに行ってください。さて、それはさておき……確か、絵本の中のお姫様がエルフの国のお姫様でしたね」

「はい。その姫こそが私の祖母の姉。ゼノビア=アルフヘイムが本名ですが彼女が最後に名乗った名は、ゼノビア=ペレディル」


 フレイヤがその名を出した瞬間、辺りは静まり返った。


「ゼノビア=ペレディルって……あの灰の魔女の?」

「……一般的にはそうなっています」


 ファルミアの問いに、フレイヤは何処か苦悶した様に答えた。


「その様子だと、私達が知っている魔女の物語とは相違がありそうね」

「恐らく。大きく違うかと……」

「魔女……忌み嫌われ、疎まれ、世界を滅亡させようとした白髪のハイエルフ……。確か、60年前に起きた魔物の大群との戦いを起こしたのがゼノビア=ペレディルでしたよね」

「えぇ、神聖帝国の調査結果だとそうなっているわね」


 六十年前までアルフヘイムは独立した国だった。そしてその当時、アルフヘイムを占領しようと戦争をしていた国が神聖帝国だったのだ。

 その為、神聖帝国の国境付近で起きた魔物の大群との戦闘は、神聖帝国により沈静化、事後調査が行われたのだった。


「表向きはそうなっています。しかし、本来は魔物の大群を治めたのがゼノビアなのです。現にゼノビアの死体は無数の魔物の残骸と共に剣を持ち立ったまま無数の魔物の攻撃による死亡だったらしいです。これは、今も生きている族長達にも確認しましたが確かだそうです。私は、神聖帝国がどの様な調査結果を残しているかは知りえません。しかし、その調査が信用にするにあたるかと問われれば、間違いなく首を振ります」


 フレイヤは、何かを訴えるようにファルミアの目を見て真っすぐ言った。

 その発言を聞いたファルミアにフレイヤの確固たる覚悟と意志が伝わって来た。


「そう……」


 ファルミアは、フレイヤの意志も含め今後の方針を思考する。


「そして、恐らく今回の戦争になる原因は、その60年前の魔物の襲撃の原因を作った人物にあります」

「それは、どうしてそう思うの?」

「……」


 ファルミアの問いにフレイヤは一度、息を整え再び息を吸う。


「それは、今回の報告をして来たのがパース……パーシヴァルだったからです。セレスちゃん。おとぎ話の最後覚えてる?」

「確か、魔物に殺されたお姫様を騎士様が助けに行くんだけど、間に合わずお姫様は亡くなってしまうんです。そして、その魔物の襲撃の原因がとある男だと知った騎士様は、その男を殺す為に旅に出るんですよね」

「はい。それであってます」

「そっか……」


 物語を振り返るとセレスは何かに気が付いたのか、下を向いて考えていた顔を上げる。


「あぁ……そう言う事ね」

「お母さんも気が付きましたか?」

「えぇ、60年前にゼノビア姫を殺されたパーシヴァルがこの情報をフレイヤちゃんに与えた。と言う事は、パーシヴァが狙っている人物と今回、アルフヘイム……私達(・・)に戦争を吹っ掛けようとしている人物は同一人物の可能性が高い……いえ、同一人物なのでしょうね」


 ファルミアの言葉にフレイヤは小さく頷く。


「そう……それで、最初の理由を私達にも話してくれる?事と場合によっては、私が掃除に行くことになりそうだしねぇ~」


 フレイヤは、怒気を放ちそう言う。


「お母さん……私達に怒気を放たれても困ります」

「おっと……これは失礼」


 セレスに注意されたファルミアはすっと怒気を鎮めると、お淑やかに笑みを浮かべる。


「えっとですね……」

「あぁ、いい加減その堅苦しい喋り方辞めない?フレイヤちゃんも疲れるでしょ?」

「え……ですが……」

「マッサージしちゃうわよ?今この場で」

「分かりました……分かったわ。ファルミア様」

「それでよし」


 渋々、口調を戻したフレイヤに対しファルミアは相変わらず他者を揶揄って遊ぶのが楽しい様だった。


「それで?」

「えっと、アルク君が来る前に私達も飢餓を如何にかしようと、帝都に使いを出したのよ」

「ん?そんな人来たっけ?」

「いえ、来ていませんよ?」


 疑問に思う二人にフレイヤが答えを提示する。


「その疑問は簡単ですよ。使いの者は帝都には来ていませんから」

「っと、言う事は……差別されたわね」


 ファルミアの言葉に無言でフレイヤは頷く。


「お母さん。どうして真っ先にそう思ったんですか?」


 セレスは不思議そうな顔をで問う。


「簡単よ。二人の恰好と急な来訪を加味すればね。それにハイエルフの姫様が旅しているのにこの街でも一切噂になって無いでしょう?」

「そう言えば……フレイヤちゃんが旅していれば、この街に来た商人などが噂していてもおかしくありませんね……門兵達も一切そう言った噂は……」


 フレイヤから送られた目線に門兵達は首を横に振る。


「ね。わざわざ、隠れて帝都まで来る理由なんて正面から通れないからとしか考えられないのよ。それに、事前連絡もないとなると尚更ね」

「お見事です」


 フレイヤは下を向きそう答えた。

 フレイヤは悔しいのだ。差別される現状にあるアルフヘイムの領民に何もして上げられない現状が……力を持たない自分が……。


「フレイヤちゃん。そこまでは彼方の背負う事ではないわ。特にあなたの様な子供(・・)はね。それに何処かの子供(・・)みたいに消えようとされても困るしね」

「アハハ……耳が痛いです」


 ファルミアの横目にセレスは愛想笑いを浮かべ、項垂れた。


「どうして、あなた達の様な子供の皇族は全てを背負おうとするのかしら?」


 不思議そうにするファルミアにアルクが口を開いた。


「それは、簡単ですよ。そこに答えが有るからです」

「答?」

「はい。自分の理想とする。自分があこがれる存在がそうしてた。そう振舞っていた。子供とは、そう言った人物の真似をする者ですから。フレイヤ様は誰だか分かりませんが、セレス様の……」

「アルク君それ以上言ったら、これから毎日マッサージしますよ?」


 アルクの言葉は遮られ、セレスの黒い脅しの言葉により強制的に口は閉ざされた。


「ん?セレスの何なの?」

「いえ、何でもありません」

「そうです。何でもないんです」


 あまりにも、光の無いセレスの目を見たファルミアも気になりつつも、引き下がった。

 こうも簡単に引き下がる理由は過去の出来事にあるのだが、それはまた別の話だ。


「それで、アルク君が言いたかった事は、理想があってその存在を目指している。でも、自分がその存在の様に振舞えないから自分を責めると……そう言う訳?」

「はい。そいう言事です」

「そう……でも、それはお門違いというものね」

「……」


 ファルミアのその言葉は、二人を突き放すような重みがあった。

 しかし……、


「人は人を目指すものじゃない。自分の中で描いた理想を目指す者なのよ。誰かの真似をするのは良い。誰かに教えを乞うのも良い。でも、誰かになるものでは無いのよ。自分が正しいと思った事を目指すの。そこに特定の人物を置くと、それに縛られて人は迷宮に迷い込んでしまうもの」


 ファルミアの言葉の続きは暖かく、二人をしっかりと導く言葉だった。


「まぁ、これは私のお姉ちゃんの言ってた言葉だけどね」


 そう言うと、ファルミアはアルクにウインクする。


「そう……その言葉、私の中で大切にします」

「私も、そうさせてもらいます。お母さん」


 二人は、笑顔でそう告げた。


「それじゃぁ、ここで話し続けるのもなんだし、城に行こうか」


 ファルミアがそう言って、立ち上がろうとした瞬間アルクが立ち上がる。


「すいません。それはもう少し待ってください」

「ん?どうかしたの?」

「先に報告しておく事が一つ」

「何?」

「門兵の皆さん。行商の馬車はどれ程審査を通しましたか?」


 アルクの唐突な、問いに門兵たちは戸惑いつつも答える。


「まだ、一台も通しておりません。先頭に並んでいた馬車に聞いた所、同じ場所から来た行商人らしく、後でまとめて行おうと思っておりました」


 その言葉を聞き、アルクは小さく息を吐く。


「そうですか。でしたら、その行商人は街に通さない方が良いかもしれません」

「アルク君。その理由は聞いても?」

「もちろんです。恐らく、彼らはこの街に武器を搬入している神聖帝国関連の行商人だと思われます。確定はしていませんが……」

「どうしてそう思ったの?」


 アルクの目を真っすぐ見つめ問うファルミア。


「これは、只の推測に過ぎません。一つは神聖帝国からの行商人が多すぎる事。そして二つ目は神聖帝国は今年、雨期の長期化により作物はあまり育っていないハズです。それこそ……他国に売るほどの量など到底無理」


 アルクの言葉にファルミアが『確かに……』と思考する。


「これは、只の僕の妄想です。しかし、その者達を通すなら、荷物をの中身をすべて確認する事、そして馬車の隅々まで確認する事をお勧めします。それこそ、馬車の床をはがす位までやるべきかと……」


 アルクの言葉で事の重大さを認識した門兵たちは息を呑む。


「分かったわ。今アルク君が言った事を審査で実施しなさい。でもこれは行商人と馬車を持っている者に限定するわ。それと、昨日以前に入った者達の行方とその荷物の行き先をすべて調べさせて」


 アルクの提案により、ファルミアが門兵や私兵に指示を出す。


「こんな所で大丈夫?」

「後は、ベルトルトに密兵を派遣してください」

「分かったわ。あとで命令しておく」


 こうして、この場での話し合いは終わりを迎えた。



 とある、場所のとある大きな部屋――

 そこで、とある老人が笑みを浮かべ、チェスの駒を触っていた。


「どうじゃ、計画の動向は」

「っは、着々と進んでおります」

「そうか……これで、手に入るのだな、あれが」

「はい。私達の研究ではそう言う事になっております」

「っふ、ふふふ、そうか。そうか」


 老人は笑みを浮かべる。白のキングを人差し指でいじりながら……。


「必ず成功させよ。そしてわが手に世界の記憶(・・・・・)を!」


 そう叫びながら老人は立ち上がる。

 その光景は神々しく、しかし、何処か影があった。


「その為にも……セレスティーナ=ジャンヌ=フェルスとフレイヤ=アルフヘイムをわが手に……」


 老人は白のクイズを持つと粉々に握り潰した。


「さぁ、キング()の首を取りに行こうぞ!」


次回四章に入る前に定番の間章が入ります。無論、花桜里や凜sideのお話です!

さらに、消えた日本のGPS衛星が四章に登場!など次回予告をサラッとしておき今回はここまでです。

最後までお読みいただきありがとうございます。続きが気になると思ってくださった方、そうでない方もぜひ、ブックマーク、評価、感想等お待ちしております。

(できれば批判等の感想もお待ちしております。何処が面白くないのか知りたい……)


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