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第十話 再び会う人 Ⅱ

インフルエンザ治りましたので更新です!

今さら感ありますが、結構頻繁に書き換え問うが起こりますのでご注意ください。

二日前くらいに創世記(第一部)を削除して、別のプロローグを投稿しています。


 場所は再び南正門へと戻る。


「……フレイヤ」


 アルクは騎士が持ってきた紅茶を口に含むとフレイヤに声を掛ける。


「ん?どうかした?」


 何時ものと変わらない表情を不思議そうに見ながらフレイヤが首を傾げる。


「単刀直入に言って、近いうちに戦争が起こる可能性が高い」

「……え……っと……はぁ!?」

「声がでかい」


 驚きのあまり大声を出したフレイヤをアルクは静かに指摘し、それを受け慌てて口を押えるフレイヤ。


「ご、ごめん」

「別にいい」


 そう短く答え、再び紅茶を飲む。


「それで、それはどう言う事?」

「それは、全員そろってから話す。二回も話すのは面倒だ」

「アンタ……なら、私もその時に教えてくれればいいんじゃないの?」


 呆れ気味にフレイヤは言う。それに対してアルクは小さく溜息を吐く。


「なら聞くが、俺がもしそうした場合フレイヤさんは『何で早く言わなかったの!』と言わない自信がおありですか?」

「っ……」


 嫌味を多分に含んだ言葉はフレイヤの胸に深く突き刺さり、フレイヤはただひたすらにアルクに不満げな視線を注ぐのだった。


「はぁ……分かったわよ。なら、一つだけ教えて」


 フレイヤは、アルクの目を真っすぐと見つめ言う。


「……」


 アルクは目線でどうぞと返す。


「その戦争の原因にアルフヘイムは関係してるの?」


 真っすぐアルクの目を見つめるフレイヤの手は強く自分の服を握り込み、小さく震えていた。


「関係している」

「っ……」


 アルクの言葉にどうしようもなく絶望したような表情になり、すぐにその表情を隠す様に俯くフレイヤ。


「と言うか、この国が戦争になるんだ。すべてが要因であり、すべてが要因ではない」

「それは……どう言う事?」


 アルクの意味不明な言葉にフレイヤは不安げな表情のまま問う。


「戦争、それは端的に言ってしまえば大きな争い。それには無論、相手のトップが考える思惑や目的が一番の理由として上げられる。しかし、その下に居る人間たちの思惑や目的もまた、戦争になった理由の一つと言えるわけだ」

「それは、つまり国や王の目的以外にもその部下たちの目的もまた戦争になった理由の一つと言う事?」


 フレイヤはアルクの話した内容を短く要約し、確認する。


「あぁ、そうだ。例えば、歩兵がただの戦闘狂で人を合法的に殺せれば良いと考えていたとしよう。そうした場合、その歩兵の目的は人を殺す事であり、その歩兵にとって戦争をしている理由は人を殺して快感を得る為。つまり、戦争は大きな争いの中に小さな争い。目的の為に殺す人間と何かを守る為に殺す人間、この両者の争いだ」

「そう言う事……」


 フレイヤは納得した様に小さくそう呟くも、一度暗くなった表情はなかなか戻る事は無い。一度マイナスの考えをしてしまえば、そう言った考えが連鎖的に浮かんでくるからだ。

 しかし、そんなフレイヤをよそにアルクは話を続ける。


「だからアルフヘイムは関係しているかと聞かれれば俺は、首を縦に振る。その可能性は十分に有るからな。精霊族を差別している人間が存在する限り。そんな人間を恨む精霊族が存在する限りな」


 アルクにそう言われ、フレイヤは急激に頭に血が上り反論しようと口を開く。

 しかし、出かかった言葉をフレイヤは出す事はせず、口をパクパクとさせる。


(そっか……私は私達を差別する人間と同族(・・)なんだ……)


 フレイヤは内心そう思うと力なくソファーに座り込む。


「……」


 アルクは無言のまま紅茶を一口飲むと、口を開く。


「気が付いたか?それが戦争の核の部分だ」

「……」


 手荷持ったティーカップの中で波紋を浮かべる紅茶を眺めながら淡々と語るアルクにフレイヤは息を呑んだ。

 しかし――、


「ただ、その事を忘れなければ彼らと同族になる事は無い。戦争は結局どちらかが妥協する事でしか決着はつかない。そんな不毛な争いなんだ」


 と、アルクは何処か悲しそうな表所をフレイヤに向けそう言った。


「……うん。覚えておくわ」


 フレイヤは手を胸に当て小さくそう言う。


 そんな少し沈んだ空気の室内にノックの音が響く。


「フレイヤ様、よろしいでしょうか」

「えぇ、大丈夫よ」


 フレイヤの了承を聞き、騎士が緊張した面持ちで中に入って来る。


「誠に勝手ながらフレイヤ様のご来訪を皇帝陛下にお伝えさせて頂きました」

「そう」


 フレイヤは簡素に返事をすると、紅茶を一口飲む。

 その反応に騎士は何処か表示抜けしたのか、頭を少し上げフレイヤの顔色を窺う様な仕草を取る。


「そんなに不安そうな顔しなくても怒らないわよ」


 フレイヤは笑みを浮かべそう言う。


「し、失礼しました」

「それで、皇帝陛下の所へ行けばいいのかしら?」


 フレイヤが騎士にそう尋ね立ち上がると、騎士はバツが悪そうに目線を扉の外に映した。


「ん?」


 フレイヤは不思議そうに首を傾げていると、アルクが静かに立ち上がり扉の前に立ちドアの部を捻るとそのまま手前に扉を引く。


「「っあ」」


 扉の向こうから現れたのは、この国の皇帝とその娘だった。


「はい……と言う訳で、もうすでに来ています」


 騎士はそう言うと一歩横にずれる。


「久しぶりね、フレイヤ姫」

「こちらこそ、お久しぶりです。ファルミア陛下。本来はこちらがヴェルダンディ城まで出向かなければならない所、お越しいただき誠に申し訳ありません」


 フレイヤは外装を素早く脱ぎ、スカートの裾を摘み頭を下げる。


「と、堅苦しいのはこの位にして、昔みたいにフレイヤちゃんと呼んでも良いかしら?」

「はい。お好きなように呼んでいただければ」


 肩の力を抜いたファルミアの言葉を聞き、フレイヤも頭を上げ笑みを見せる。


 しかし、そんな二人とは対照的に、無言の人物が門の騎士を除いて二人いた。


「さて、私もフレイヤちゃんと話したいことは山ほど有るんだけどね……」

「はい。多少の話は私も聞いていますので、どうぞ御三方で話し合ってください。私が邪魔なようでしたら、この部屋から出て行きますが?」

「それは、大丈夫よ。フレイヤちゃんにもそこに居る少年について聞きたい事があるからね」

「そうですか。では失礼ながら居座らせ頂きます」


 再び、フレイヤは頭を下げる。


「さて、そこに居る少年?覚悟は良いかしら?」

「マッサージ以外の罰なら、どんな罰でも受けますよ」


 アルクが冗談交じりに笑みを浮かべる。

 その声を聴いたセレスは、立ちすくんでいたその場で崩れ落ちてしまう。


「ほ……んとうに…………………」


 セレスは小さく、消えてしまいそうな声で呟いながら、大粒の涙が頬を伝い落ちていく。


「申し訳ありません。誠に勝手ながらアストルフォ只今戻りました」


 アルクはへたりこんでいるセレスの前に片膝を付くと、そう告げた。


「う……うぅ……良かったぁです……」

 セレスは涙を堪え、必死に笑みを取り繕いそう言う。


「取り合いえず、座りましょうか」


 ファルミアの促しもあり、各々が席に着く。

 今回は、フレイヤ、アルクと机を挟んでファルミア、セレスの順で座りアルクの向かいにはセレスが座っている。


「それじゃぁ、話して貰おうかしら?なぜ私達の前から姿を消したのか、その詳細をセレスもね?」


 ファルミアは何処か影のある笑みを浮かべた。


「何故……ですか……」


 アルクは困ったような笑みを浮かべながらも、ファルミアはその表情が何処か意味ありげに見える。


「セレス様からは何処まで?」

「全くよ。彼方が口止めしたんでしょ?」

「そうですね」


 そう答えたアルクは、横目でセレスの様子を伺う。

 下を向き、学園の制服のスカートを握りしめるセレスの姿を見た、アルクは小さく溜息を吐くとセレスを真っすぐ見つめ言う。


「どうしますか?」

「っえ……そうですね……それは私が説明します。こうなった原因はすべて私ですから」

「そう」


 セレスの決意を横目にファルミアが短く答える。


「まず、私がお城から消えた後、すぐにアルク君が私を見つけてくれました」

「それは、私もなんとなく予想が付くわ。アルク君が居なくなる前の最後の姿だし」


 そう言うファルミアは何処か苛立った様子だ。


「その時の私は……この世から存在が消えかかっていました。それは私の『消えたい』と言う願いのもとに……」

「っえ!」


 セレスの説明に驚きの声を上げたのは、フレイヤだった。


「消えるって……」

「文字通りの意味だ。存在が消える。書類上からも記憶からも何もかもな」


 冷淡にそう告げたアルクの言葉がフレイヤのなんの覚悟もしていない心に重くのしかかり、俯く。


「それで?」


 しかし、そんなフレイヤをよそにファルミアは話を進めるように、冷淡な口調でセレスを促す。


「はい……。私は、如何にかアルク君に説得され『消えたい』とは思わなくなりました」

「その言い方だと、彼方が完全に存在している訳では無いのよね?」

「……はい。私がこうなった原因……ではありませんね。原因は私であり、その責任を他者に押し付けるつもりはありません。こうなった理由として、過去に噛まれた蛇の毒が関係しているそうです。この辺りはアルク君の方が詳しいですね」


 そう言われ、アルクは手に持っていたティーカップを置く。


「蛇とは古来より神聖視される生き物です。難しい話も何ですし簡素に答えてしまえば、今回の理由の一つとなった『蛇の毒』と言うのは、言い換えれば『蛇神の起こした奇跡』となるんです。蛇神が心優しいセレス様を認め願いを叶えた。それが『消えたい』と言う願いだったと言うだけで……」

「そして、アルク君が私の存在をこの世界に残す為に蛇の毒を自分に映したんです」


 そう言い終えたセレスは何処か、暗い表情をしていた。


「後は簡単です。毒をうつした僕も『消えたい』と願った。ただそれだけ……」

「ただそれだけ?ふざけないで!!」


 笑みを浮かべ治めようとしたアルクの言葉にファルミアは引きつった笑みを浮かべた後、机を強く叩き叫んだ。

 それに対し、セレスとアルクは何処かバツが悪そうな表情をしていた。

フレイヤも急に怒鳴ったファルミアに驚きビクンと体を跳ねさせていた。


「私がどれだけ、彼方を大切に思っているか分かる?私が彼方を本当の家族だと思っていると知ってる?私が……どれだけ彼方を……彼方を……愛しているか分かる?」


 そう言いながらファルミアは瞳に溢れる程の涙を浮かべていた。


「お、母さん」


 ファルミアの姿を見たセレスは自分の願った事の愚かさを再び思い知る。


「……」


 しかし、そんな二人の様子を見てもアルクは何も感じない。何も思わない。


「……」

「あなたにとって、私達家族はそんなにどうでもいい存在?」

「あ……」


 否定しようと声を上げるアルク。しかし、否定する言葉をアルクは持ち合わせていなかった。

 アルクはただ俯く。


「いいえ、ごめんなさい。急に怒鳴ったりして」


 そこで、ファルミアが涙を拭きながら謝罪する。


「答えなくても良いわ」

「っえ……」


 セレスにとってその言葉は何処か冷たいものに聞こえた。


「あぁ、違うわ。アルク君が答えを持っていない事は分かってるからね。これでも伊達に六年間二人の母親(・・)をやって無いわよ」


 と、何処か誇らしげに言う。


「まぁ……六年経っても答えを見つけて貰えなかった自分の力不足が心底嫌になったけどね」


 と、はかなげな笑みをファルミアは浮かべる。


「すいません」


 アルクは俯いたままそう答えるしかなかった……。


(どんな顔してそんなこと言ってんだ……)


 と、内心で自分を責めながら……。


「さて、ここからはアルク君に話して貰うわよ?何で、フレイヤちゃんと一緒にいるわけ?」


 そう言ったファルミアはこれまでと打って変わってウキウキしたような表情だった。

 そして、アルクはアルフヘイムで起きた事をある程度、話した。


「と、言う訳です。今なぜ僕が此処に存在しているかは自分でも不明です。」

「ふ~~~~ん。まぁ~色々聞きたい事はあるけど……」


 と、ファルミアは目線を落とす。

 そこに居たのは、何処か黒いオーラを発するセレスだった。


「ふ~~~ん。アルク君はそんな事をしていたんですか……そうですかぁ……」


 そう言ったセレスの言葉には怒気が多分に含まれているのか言葉としては曖昧でも、的確にアルクをヒシヒシと攻撃していた。


「まぁ……セレスちゃんその辺でね。何が有ったかは私もあまり言いたくないけど……」

「フレイヤ様、誤解を招くような事を仰るのはあまり懸命とは……」


 若干汗をかきながら言うアルクの隣で、フレイヤが片目を閉じ小さく舌を出し『お返しよ』と小さく呟いた。


「はぁ……勘弁してくれ」

「何をですかぁ?」

「いえ、何でもありません」


 闇を感じたアルクはすぐさま向き直り、笑顔で返答する。


「それでは、今回の事がひと段落着いたら、アルク君は私とお母さんによるマッサージの刑です。ついでにフレイヤちゃんもやります」


「はぁ……分かりました」

「っえ!?っちょ、何で私まで!?」


 素直に諦めたアルクに対してフレイヤは驚愕の表情をする。


「えっと……理由を言うと、適度に育った、少女の体を……ジュル」


 セレスは鼻息を少し荒くしながら答える。


「段々、ファルミア様に似て来たな……」


 と、何処か遠い目でアルクは呟いた。


やっと再開させられた……今後の展開としては争いがメインになっていきます。

それが終われば、現実世界と関る!?かも?


最後までお読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが気になると思ってくださった方、そうでない方も、ブックマークや評価、感想等お待ちしております。


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