第九話 再び会う人Ⅰ
久しぶりの更新となり申し訳ありません。
免許を取りに行っていたためリアルが非常に忙しくなっておりました。
注意:今回は18禁要素は無いですが、お色気シーンが多分にあります。苦手な方はブラウザバックしてください。
(へ、変なことはしてないんだからね!た、只のマッサージなんだから!)
フェルス帝国、ヴェルダンディ城にあるセレスの書斎。
「んぅ――――。はぁ……やっと終わりましたね」
そこで、セレスは体を伸ばし満足げな笑みを浮かべていた。
「これで、孤児院に関する書類は片付きましたし、そろそろ探しに行きましょうか。」
セレスはそう言いながら立ち上がると窓の外を眺め不敵な笑みを浮かべる。
すると、書斎の扉がノックされた。
「はい。どうぞ」
セレスのその言葉から数秒、扉が静かに開けられた。
「セレスちゃん書類出来た?」
「お母さんでしたか。はい。出来ましたよ」
そう言うと、セレスは書類の束をファルミアに手渡す。
「……確かに受け取ったわ」
ファルミアは書類の確認を済ませるとセレスにそう告げ、満足そうな笑みを送る。
「それにしても、貴女が急に『孤児院を作りたい』と言いだしたときは何事かと思ったわよ。しかも、こんなにもしっかりした財政案、計画まで合わせてね」
そう言ったファルミアは何処かほっとしたような表情を浮かべていた。
「そうですか?」
「だって、この間までのセレスちゃんったら何かを無くしたような表情だったもの。それが急に元気を取り戻して、かと思ったら孤児院の計画案とその計画を盛り込んだ財政案でしょ?流石に不思議に思うわよ。でもまぁ……元気になった様でよかったわ」
ファルミアはそう言うと、セレスの頭を暖かい手で優しく撫でた。
「っん……」
そんなファルミアの思いを聞きセレスは小さな手を力ずよく握り込んだ。
(そっか……こういう事だったんですね……アルク君)
セレスは、アルクと別れた時の事を思い出した。
言葉で言われる事は無かった。しかし、アルクがあの時一番セレスに伝えたかった事が今ようやくセレスは分かったような気がした。
「私を知る人の優しさ……」
「ん?何か言った?」
小さく呟いたセレスの言葉にファルミアは不思議そうな顔をする。
「いえ、何でもありません」
セレスは笑みを浮かべそう言った。
(でも、それを知るべきなのは私にそれを教えたアルク君ですよ)
と、内心思いながら……
「それじゃぁ、後は私の仕事ね。さぁ~久しぶりに頑張りますか!娘の願いを叶えるのは母親の仕事だしね」
「はい。お願いします」
二人はそう言うと笑みを浮かべるのだった。
♰
それから数日が過ぎたある日、帝都の南門にアルクとフレイヤの姿があった。
「久しぶりの帝都だけど……大分変ったわね」
審査に並ぶ列から僅かに見える帝都内部の様子を見てフレイヤはそう言う。
「えぇ、私が来たときは、ようやく落ち着いた頃だったからここまで街が賑わってはいなかった。でも、皆幸せそう……」
フレイヤは嬉しそうに、しかし何処か悲しそうな表情でそう言った。
(アルフヘイムもまたこんな街に戻れるかな……)
遠い目でアルフヘイムは内心祈るのだった。
そんなフレイヤを片目にアルクは、並んでいる商人達を観察していた。
(やけに、大きな馬車が多いな……)
ここは帝都だ。各国、各地からいろいろなものが集まる。
その為、大きな馬車が有ってもおかしい事は無い。しかし……。
「この馬車の多さは少し様子がおかしいな……」
「そうなの?ここは帝都なんだしこんなものでしょ?」
「いや、普段はここまで多くないはずだ。それに、馬車が多い所為で審査の列も自然と長くなっている。これは異常だ。帝都だからこそ、審査の列の捌きは人海戦術でものすごく早いはずだ」
「でも、こんなに並んでるわよ?」
「あぁ、だからそれがおかしいんだ」
アルクは顎に手を当て思考する。
そうこうしていると、アルク達の番が回って来た。
「ようこそ、帝都へ。早速だが入国の目的は?」
獣人の騎士が笑みを浮かべ問う。
「観光だ」
「そちらも?」
騎士がフレイヤを指さす。
「えぇ、そうよ」
「お、綺麗な声だな」
「ふふ、ありがとう」
騎士の言葉にフレイヤは微笑みながら返答する。
「それじゃぁ、軽く持ち物を確認させてくれ。そちらの女性の持ち物はそっちに居る女性の騎士に見て貰ってくれ。
「分かった」
「分かったわ」
アルクとフレイヤはそう言うと、バックパックを開け騎士に見せる。
「うむ。大丈夫そうだな。そっちはどうだ?」
獣人の騎士が、女性の騎士に問う。
「こちらも大丈夫です」
「分かった。それじゃぁ、最後だ。そちらの女性、フードを取ってくれるか?」
「えぇ、良いわよ」
獣人の騎士の言葉通りフードを取ろうとしたフレイヤだったが……
「その前に聞きたいことが有るんだが良いか?」
アルクのその言葉で遮られた。
「ん?まぁ、良いが短めに頼むぞ?今日はやけに馬車が多いからな」
と、獣人の騎士は苦笑いを交え言う。
「そう、その事だ。どうしてこんなにも馬車が多いんだ?」
「あぁ、その事か。そんな事気にするなんて変な人だな」
笑みを浮かべながらそうった騎士。
「確か、神聖帝国の作物が豊作過ぎて、このままだと腐らせるだけだとかで、フェルス帝国に大量に売りに来ているらしいぞ。うちの国は人口多いから食料が大いに越したことはないしな」
「そうか……それはどれくらい前からだ?」
「えっと……確か一週間くらい前からだったか?」
「はい。確かそれ位だったと記憶しております」
「そうか。ありがとう」
アルクは笑みを浮かべ騎士達に礼を言うと、隣でフレイヤが身震いしている事にアルクは気が付くが無視する。
「それじゃぁ、改めてフードを取ってくれ」
その言葉でフレイヤは再びフードに手をかけゆっくりとフードを取る。
「「っな……」」
すると、周りに居る騎士達やアルク達の後ろに並んでいる者達が驚愕した表情で固まる。
「ん?どうかした?」
「「「…………」」」
フレイヤの言葉に返答はなく、ただ無言が広がる。
「ん?」
「えっと……お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「私?」
「はい」
そう答えた騎士は全身から汗を拭き出し、顔を真青にしていた。
「私は、フレイヤ=アルフヘイムよ」
「「「っあ………」」」
フレイヤの名前を聞いた瞬間、騎士達は石造の様に固まり動かなくなった。
「ん?どうかした?」
「いえ……どうかしたではなく……申し訳ありません。こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」
獣人の騎士はそう言うと、門に併設されている来賓の待合室に誘導する。
「えぇ、別に良いわよ?」
と言う事になり、フレイヤとアルクは待合室に通されるのだった。
「ここで、少々お待ちください」
そう言い残し、待合室の中はアルクとフレイヤの二人となった。
「ふぅ……アルクの言ったとおりになったわね」
そう、数時間前にアルクはフレイヤに耳をどうするか相談を受けていた。
「私の耳は人間の方が良い?それとも今の状態?」
「今のままの方が良いだろうな。今回の目的は一刻も早くファルミア様に合う事だ。となると、アルフヘイムの姫が来たと思わせた方が良い。その長い耳はハイエルフだと一目で見抜くことが出来からな」
と、アルクの考えを聞いたフレイヤはアルクの言う通り、耳の形は変えずに審査を受けたのだ。
「こうすれば、今日中に確実にフレイヤはファルミアに合えるはずだ。邪魔が入らなければな」
「邪魔?」
「あぁ、前皇帝派の貴族がフレイヤが来たと言う報告を妨害する可能性があると言う事だ。前皇帝派はゲノムと繋がっている可能性が高いからな」
「なるほど……」
アルクの考えを聞いたフレイヤは俯き、悔しそうに顔を顰め手を握り込むのだった。
♰
ヴェルダンディ城の一室に、扉の前で待機するメイド達が一様に顔を赤らめている部屋があった。
『あ……っうっんぅ……はぁ…………』
「な、中で何が起きてるんですか?」
顔を赤く染めた一人の新人メイドが周りの先輩メイドに問う。
「うん~~別に変な事は起きてないはずよ?」
「っえ……これで、ですか?かれこれ一時間ほどセレス様の喘ぎ声が聞こえている気がするんですが……」
「えっと……私達も体験した事が有るから言える事だけど決して如何わしい事はしてないわ」
「えぇ……そうね」
「ただ、受けている方が気持ちよくなってしまうだけの……」
「だけの?」
先輩メイド達は一様に顔を真っ赤に染めもじもじしながら語る。
「「「マッサージなのよ……」」」
「マッサージ?」
先輩メイド達の答に、新人メイドは拍子抜けし呆けたような表情になってしまう。
「えぇ、ファルミア様のマッサージは天国に上る様な気持ちよさで、私達の経験で見た目年齢が最低五歳は確実に若返るわ」
「ご、五歳……」
新人メイドは、そのあり得ない効果に思はず唾を飲むのだった。
♰
外でメイド達がファルミアのマッサージを思い出している頃、室内では……
「お、お母さん……何も毎日マッサージを受けなくても……っう……あっぁん!」
「ん?あぁ、気にしないで。私のただのリラックスの為にやってるだけだから。セレスちゃんを揶揄うのはね」
と、ファルミアは裸でマッサージベッドに寝そべるセレスのマッサージしながらにこやかに答える。
「り、リラックスですか?」
「うん。最近やけに不審者が多くてね、騎士団長達と警備体制の見直しをしていた所だったったのよっと!」
「っん……っあぁん」
二人がそうやって話していると、部屋の扉がノックされた。
「失礼します。至急ファルミア様のお耳に入れたい事があります。入ってもよろしいでしょうか?」
と、部屋の前で待機するメイドが言う。
この部屋の付近は男性禁制の場所となっており、今までに入った事のある男性はアルク一人だったりする。
「ん?えぇ、良いわよ」
ファルミアはそう言うと、ベッドから降り肩の力を抜く。
「失礼します」
静かに、部屋の中に入って来たメイドは素早くファルミアの下まで行くと、ファルミアにだけ聞こえる声で報告する。
「南正門にアルフヘイムの姫であるフレイヤ=アルフヘイム様がお越しになっているそうです」
「……っえ!?それは本当に?」
「はい。審査をした騎士の報告によりますと、ハイエルフの証である長い耳が確かにあったと」
「それは……本人そうね……流石にハイエルフを語る愚か者は居ないだろうし……」
「そうですね……そんな事をする人間は神話を知らぬ人間でしょう……」
ファルミアはメイドの言葉に頷き顎に手を当て思考する。
「ただ……」
「ん?どうかした?」
何処か浮かない表情をするメイドにファルミアは思考を一時中断し問う。
「はい。その騎士によりますと、フレイヤ様の傍付きが人間の少年であるとの事です……」
「人間……確かに、それは少し変ね……」
ファルミアは再び思考を再開する。
(アルフヘイムは精霊族しか入る事ができなければ、街にたどり着くことが出来ない。そんな場所のはず。私も、前の姫のおかげで一度だけアルフヘイムには行った事があるけど、あそこに人間は一人も居なかった。それなのに、いま南門に居る姫は人間の少年と一緒にいる……。謎ね……)
そこまで思考し、ファルミアは思考するのを辞めた。
「面倒だから会いに行きましょうか。セレスも来る?」
「はい?どこにですか?」
体にタオルを巻いたセレスが不思議そうに首を傾げる。
「あなたのお友達の所よ」
「お友達?」
「えぇ、アルフヘイムの姫、フレイヤ=アルフヘイム姫の所にね」
「フレイヤ……ちゃん?フレイヤちゃんが来ているんですか!」
一瞬理解が遅れたがセレスはフレイヤが来ている事を知ると勢いよく立ち上がり、嬉しそうな笑みを浮かべる。自分がタオルしか巻いていな事を忘れ……
「うん。嬉しいのは分かったわ。でもまだ、かも知れないと言うだけだからあまり期待はしないでね」
「はい!」
そう言われたセレスだが、久しぶりに友達に会えるとなってテンションマックスのセレスだった。
真っ白いタオルがゆっくりと落ちているとは知らずに……。
「せ……」
慌てて、注意を促そうとしたメイドをファルミアが笑いを堪えながら制止させ、指で目線を落とす様に誘導する。
「ん?」
ファルミアの合図に気が付いたセレスは徐々に目線を落とすと、目を見開き顔を真っ赤にすると慌ててタオルを巻き戻すのだった。
「お母さんは意地悪です!」
と、涙を浮かべながら講義をするのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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次回、ようやく再開するかも!(絶対するとは限らない) さらばだ!フハハハハハh




