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第五話 模擬戦

今回は短めです……

更新遅れてすいません……

 昼食を済ませたアルク達は一面芝生が植えられた屋敷の中庭に集まっていた。


「さて、これからアルクとゲルマンで模擬戦をする訳だけど……大丈夫?」


 フレイヤは二人……主にゲルマンを心配して声を掛ける。


「ん?わしは大丈夫です。それより、そこの小僧の方が心配ですな」


 しかし、等のゲルマンはフレイヤの心配をよそに強がって見せる。


(いや、私が心配しているのは主にアンタなんだけど……まぁ、良いかゲルマンだし)


 と、フレイヤの内心で粗雑な扱いなゲルマンだった。


「僕は大丈夫ですよ。それより、この模擬戦のルールは如何しますか?」

「そうね……」


 フレイヤが、如何しようか悩んでいるとゲルマンが提案してきた。


「おい、小僧。お前は魔法と剣技、素手どれが一番得意だ?」

「……しいて上げる程得意な物はありません。僕はどれでも良いですよ?」


 そう真顔で言いきったアルクにゲルマンはこめかみをピクつかせる。


「ほほぅ……なら、複合戦でどうだ?相手が『参った』と言うか戦闘不能になる。もしくは審判がワシか小僧のどちらかに死亡判定を下した時点で決着。それでどうだ?」

「っちょ、それは……」

「はい。それでいいです」


 ゲルマンのルールにフレイヤが異論を唱えようとしたが、被せるようにアルクが返答した為フレイヤは何も言えなくなってしまった。

 フレイヤはゲルマンのルールに死亡または相手を死に至らせる攻撃を禁止と言っていなかった事が気になっていたのだ。


(こうなったらどうしようも無いのよねぇ……それが精霊族が模擬戦や決闘を行う際の掟だし……誰よ、両者が了承したルールを他者が干渉してはいけない。とか変な掟作った奴……。もしアルクに何かあったら私、セレス様とかに殺されそうなんだけど……よし、決めた。)


「ゲルマン後で殺すから」

「っえ!何でぇ!?」

「自業自得だな」

「そうじゃのぅ……」

「お前らもか!」


 ゲルマンは身内全員に突き放され落胆する。


「まぁ、私が殺す前にアルクに殺されない様に頑張りなさい。一応言っておくと多分アルクはこの国で一、二を争う強だと思うわよ」

「へぇ……それは楽しみだな」


 ゲルマンはそう言うと笑みを浮かべた。


「ゲルマン筋肉ムキムキのじじぃの笑みとか需要無いから辞めなさい。キモイ」

「はいぃ……」


 ゲルマンがフレイヤに怒られている間に模擬戦の準備が整った。


「さて、そろそろ始めましょうか。二人とも準備良いわね?」


 フレイヤはまずアルクに目線を向ける。


「はい」


 アルクは先ほどと変わらずマーリン学園の制服を着ており両手も何も持っていなかった。


 アルクの返事を聞いたフレイヤは続いてゲルマンに目線を送る。


「わしも大丈夫ですぞ」


 ゲルマンは、精霊族特有の衣服に直剣と盾と言う姿で立っていた。


「そう。それでは、アルク対ゲルマンの模擬戦を始めます。両者、始め!」


 フレイヤのその声が中庭に響くとゲルマンがアルクに向かって一直線に走る。

 しかしアルクは直立のまま動かなかった。


(どう言うつもりじゃ……分からん)


 ゲルマンがそう考えながらもアルクとの間合いを詰める。

 しかし、まだアルクは動かない。

 ゲルマンはアルクの考えが分からないまま、剣を振り上げる。

 その直後、アルクは姿勢を低くし、ゲルマンの懐に入り込もうとする。


「っふ……」


 ゲルマンはそんなアルクに笑みを浮かべた。


『ブースト』


 ゲルマンがそう小さく呟くと、剣を振り下ろす速度が二倍以上に早くなる。


(このままいけば、小僧の魔法もしくは拳よりもわしの剣の方が早く到達する!)


 ゲルマンはそう確信すると、笑みに溢れていた。しかし、それは一瞬にして崩れ去った。


「っ……え」


 ゲルマンが、次に見た光景は視界一杯の緑だった。


「そこまで!ゲルマン死亡判定により、勝者アルク!」


 ゲルマンが状況を飲み込む前にフレイヤによる勝者のコールが告げられた。


「ふぅ……」


 ゲルマンは状況を理解しようと、辺りを確認する。

 そして、気が付いた。

「小僧……いつの間にわしの上に乗った……」


 そう、アルクはゲルマンの背中に乗っていたのだ。しかも、ゲルマンの両手を拘束した状態で。


「えっと……ゲルマンさんが剣を振り下ろした直後でしょうか」


 アルクはゲルマンが剣を振り下ろした直後にゲルマンの体重の乗っている足を払うと同時にゲルマンの肩を手前に引き、ゲルマンの体重が前方に掛かるように仕向け後は重力に従って転ぶゲルマンの手首を背中で拘束しながらアルク自身の体重で起き上がれない様に拘束した。

これが今アルクが行った事だった。


「そうか……これは、完全にわしの負けじゃな……姫様を頼んだぞ」


 ゲルマンは潔く負けを認めると自分の上に乗っているアルク頭を下げる。

 そんな、二人の下にフレイヤとスーシャ、ゴードがやって来る。


「ねぇ、アルク。あなた本当に人間?」

「やけに皆さん僕を人外にしたがりますね。僕が認識している範囲なら僕は人間ですよ」

「そう。なら、彼方はもう強くない……」

「はい。僕は別に強くは無いですよ?」


 フレイヤの言葉にアルクは自分が一番知っていると言わんばかりに応えた。


「姫様は、この小僧が強くないと言いたいのですか?」


 ゲルマンはそう言いながら立ち上がる。


「あぁ、ごめん。ちょっと違う。私が言いたいのは、アルクの強さはもう、強い弱いのベクトルでは無いと言いたいのよ」


 フレイヤは、言葉足らずの発言をそう修正した。

 しかし、脳みそ筋肉のゲルマンには理解できないのか首尾を傾げている。


「はぁ……脳筋に説明するの面倒だな……簡単に言うと、アルクは強いと言う物差じゃ図れない程、強いって事。分かった?脳筋君」

「酷いですよ……姫様……」


 あまりにも脳筋と言われショックだったのか、ゲルマンが項垂れる。


「だから、じじぃのそんな恰好見ても誰の得にもならないしキモイから辞めろ」


 フレイヤはそう言うと、ゲルマンを蹴飛ばす。


「ぐっふぉ……やめてくださいよ……違う扉開いたらどうしてくれるんですか!」

「大丈夫よ。そうなったらアンタの息子をエルフの族長にするから」

「そんなぁ~」

(えっと……フレイヤ様の方が年下だよな……)

「そうじゃよ」


 アルクの心を読んだように話しかけて来たのはスーシャだった。


「ビックリさせないで下さいよ……」

「ビックリ?わしが来るのに気が付いて若干横に移動した奴が何を言っておるのじゃァ?」

「あれは、足が疲れたので体重をかける足を右足から左足に変えただけですよ」

「ホホ、そう言う事にしておこうかのぅ」

「はい。そうしておいてください」


 二人がそう話しているうちにゲルマンとフレイヤのやり取りが終わった様だった。


「新しい扉が開きかけた……」

「黙りなさい。さて、話を戻すけどアルクは、もう強い弱いのベクトルじゃない。強いと言うカテゴリーのそれ以上の力を持っていると言って良いわ。例えるなら、一国を一人で潰せる程と言えば分かる?」

「えぇ……」

「何処か、思い当たる節でもある様な顔をしているけど?」

「いえ、国()滅ぼした事はありませんよ」

「ふ~ん。」


 アルクの気になる言い回しにフレイヤは突っ込まずに流した。


「さて、模擬戦も終わった事だし、明日の準備に行きましょうか」

「明日の準備と言いますと、剪定の準備ですか?」

「そうよ。ゲルマン。私とスーシャアルクは社に行ってくるから、ゲルマンとゴードはのこぎりとかの準備をしてちょうだい」

「「分かりました」」


 フレイヤからの命令に二人は返事をし、各々の方向へ歩いて行った。


誰か私に時間をください……

『あぁ~コンビニで売ってないかなぁ~時間……』


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