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第三話 解決策

復活なのじゃァ~

登山したせいで下半身が((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

ヤバい……右足が……左足が……み・ん・な・逃げ……うわぁぁっぁぁぁぁ

と言う事で、三章3話です。

※2018/11/26 加筆&修正


 二人は女の子を隔離施設の管理人に預けると施設を出た。


「さて、ここで『さようなら』とか言わないわよね?」


 フレイヤがアルクを睨む。


「ここまでして頂いて逃げませんよ。まぁ、確かに最初は街にさえたどり着けば後は如何にかなると思っていましたが、この惨状では無銭の僕にはどうにもできません。フレイヤ様の望む事をお教えしますよ。」


 アルクはそう言うと笑みを浮かべる。


「そう、なら良いわ」


 簡素に告げたフレイヤは歩き出し、アルクもそれに続く。


 それから、五分ほどでフレイヤの足は止まる。

 二人がここまで来る間に人と合う事は無く、この街は完全に街と言う機能を失っていた。


「ここが私の屋敷よ。っさ、中に入りましょ」

「はい」


 フレイヤの住む大きな屋敷は、屋敷と言うデザインではなく何方かと言うと城の方が近かった。

 そんな城にアルクはフレイヤに促されるまま入って行く。

 細かな細工が施された玄関を通ると左右に長く伸びる廊下が現れる。


「こっちよ」


 フレイヤに案内されるがままアルクは付いて行く。


「ここよ」


 フレイヤは一つの扉の前で足を止め、ドアノブを捻り中へと入る。

 その瞬間アルクは敵意を感じフレイヤの肩を掴み後方へ押しのける。


「っちょ……」


押しのけられたフレイヤは後ろでしりもちをついているがアルクはお構いなしに部屋の中へと入り扉の横で木刀を構えている敵意の主に拳を顔スレスレで止める。


「ん…………」


 殺気の主は、フレイヤと同じように尖った耳を持ったエルフの老人だった。


「ちょっと……急になにすんのよ!」


 しりもちをついたフレイヤがお尻を摩りながら起き上がりアルクに抗議しようと改めて部屋の中に入ると二人の光景にため息が漏れる。


「はぁ……ゲルマン。アンタ何やってるわけ?」


 フレイヤは呆れた様子でエルフの老人ゲルマンを見る。


「姫様に悪い虫が付いていると情報を得たので退治しようかと……」

「そうね、確かに悪い虫は付いているわ」

「やっぱり、こやつ!」


 フレイヤのゲルマンに対していった嫌味に反応し、アルクに敵意を向けるゲルマン。


「はぁ……悪い虫はアンタの事よ、ゲルマン。それと、スーシャもゴードも見てないで止めなさい」


 何処か疲れた様に眉間を抑え、ソファーに腰掛けお茶をすすっている、街の外で会った獣人の老婆スーシャとドワーフの老人ゴードにフレイヤは目線を送る。


「ッホホホ。いやぁ、面白くてのぉ」

「うむ。面白かったわい」


 二人の言葉で疲労が加速するフレイヤだった。


「それで、姫様。そ奴は本当に誰なんじゃ?」


 ゴードは訝しげにアルクを見る。


「スーシャから聞いたでしょ?彼はアストルフォよ。どうしてこの森に入って来られたのか分からないけど、そのまま放置するのも私の精神衛生上良くなかったから連れて来たのよ。まぁ、それだけじゃないけど……」


 フレイヤの言葉を聞き小さな老人ゴードは立派なひげを撫でながら目を細め問う。


「ほぉ~ようやく姫様にも恋の季節が来たかのぅ?」

「……っはぁ⁉」


 あまりにも突拍子の無い問いにフレイヤの脳は一瞬フリーズした後ゴードの言葉を理解したのか顔を真っ赤に染める。


「っお!顔が赤くなった。これは図星かのぅ?」

「何?姫様それは本当か?」


 フレイヤをからかうゴードの言葉をエルフの老人ゲルマンは本気にし、フレイヤに激しく迫る。


「違うわよ!ゴードの冗談に決まってるでしょ!あんたも勘違いするんじゃないわよ!いい⁉」


 迫って来たゲルマンを蹴っ飛ばしたフレイヤは扉の前で立っているアルクに念押しする。


「していませんからご安心ください」

「それはそれで、ムカつくけどまぁ良いわ」


 フレイヤは、悪戯好きな老人二人と、馬鹿真面目な老人の相手に疲れたのか、スーシャとゴードの向かいのソファーに倒れ込むように座る。


「ふぅ……アルクも座りなさい」


 フレイヤはそう言うと自分の隣をポンポンと叩く。


「はい。では失礼します」


 アルクはフレイヤに言われた通りにフレイヤの隣に腰を下ろした。


「さて、アルク本題よ。彼方をここに呼んだのはこの三人にあの病の事を説明してほしいのよ。勿論、私を含めてね。」

「分かりました」

「ちょっと待て、あの病と言うと……あの病か?」


 アルクの了承を聞いたゲルマンが質問する。


「そうよ、ゲルマン。アルクは今アルフヘイムの街を襲っている疫病について知っている様なの」

「この小僧が?」


 マントを羽織ったままのアルクはゲルマン達から見れば薄汚く見えるのだろう。ゲルマンはアルクに訝し気な視線を送る。


「そうよ。まぁ、今の格好だと何処かの貧乏人の詐欺師っぽいけど……アルク、マントを取りなさい」


 アルクもフレイヤの意図を察しマントの紐をほどく。


「「「っな……」」」


 アルクが来ている服は、自分の存在(・・)一度(・・)消える前に来ていた服。つまり、マーリン学園の制服だった。


「私も今日の朝に思い出したわ。まさかアルクがマーリン学園の生徒だったなんてね」

「そうか……それで姫様はこの街に連れてきたわけか……」

「えぇ、ゴードの言う通りよ。何処かの貴族の可能性もあるから。念のためね」


 何処かの貴族だった場合その貴族家または領地に対して恩を売る事ができると言う事だろうとアルクは内心推測する。しかし、アルクは口を開きこの誤解を解く。


「僕は貴族ではありませんよ。平民で運良く学園に入学することの出来た、ただの子供です」


 アルクのあまりにも落ち着いた対応に老人三人組は黙り込む。


「今はアルクの身元はどうでも良いわ。それより、この街を襲っている疫病の正体は何?」


 フレイヤは黙り込む老人トリオを放置して話を本筋へと戻す。


「この街を襲っている疫病は『ペスト』や『黒死病』と言われる病です。

主に四種類の症状に別れ、身体の一部がこぶし程の大きさまで膨れ上がり『ペスト菌』が生産する毒素により、意識混濁などが出る症状。

二つ目が皮膚に穴などができる症状。

三つ目が昏睡状態や皮膚に黒い斑点ができる症状。この症状を主に黒死病と言います。

最後に、激しい咳、くしゃみ、下痢や、激しい発熱などが起こる症状があります。

二つ目の症状以外はすべて数日で死亡に至る致死性の高い疫病です」


 アルクは、説明を終えると息を少し吐き脱力する。


「「「……」」」

「隔離施設に居る人の全ての症状が今アルクが言った症状に該当するわ……」


 ここでアルクは既に知っているフレイヤ以外の三人にとって最も地獄を見るであろう言葉を発する。


「先に言っておきます。この疫病の治療は存在しません」

「「「っ……」」」


 アルクは三人が治療できるという夢を見る前に現実を突きつけたのだ。それは、三人の為でもあった。


「先に聞いていたけど、改めて聞くと辛いわね……」


 フレイヤは気落ちした様に下を向き手を握りしめる。


「ですが、これ以上患者を出さない事は出来ます」


 アルクのその言葉でフレイヤ達は少し明るい顔色へと戻るが、未だ暗いままだった。


「それで、その方法は何?」

「まずは、衛生環境を良くしてください。今の街の状態ではだめです。水が原因かと想い水路を塞いだのだと思いますが、それは逆効果です。水路に水を流してください。

次に、住民全員毎日、お風呂または水浴びを行い体を綺麗に保ってください。

次に、街に住み着いているネズミを殺してください。この疫病の一端を担っているのはネズミです。

次は、食料の確保です。これも、今回の疫病の流行を促進させた一端です。

そして、最後に世界樹を『剪定』してください」


 アルクがそう言った瞬間、老人三人組は顔つきを変えた。


「アストルフォとやら、それはどう言う事だ?」

「今から説明します。今回、疫病の流行を促進させたのは、三つ目に言った食料の問題でしょう。現に隔離施設には、病に抗う力の弱い老人や子供が多くいた。それは住民が飢餓状態にあったからです。恐らく、そうなる前に皆さんも他の領地から食料を買おうとしたと思います。しかし、それが何らかの影響で出来なかった。そして、次は森で狩りをしようとした。しかしそれも強力な魔物の出現により出来なかった……こうなってしまったらもう、自分達で作るしかありません」


 アルクは昨日の時点で森の中に強力な魔物が存在すると言う事は気が付いていた。その所為もあり、アルクは睡眠をとらなかったのだ。


「「「「……」」」」


 フレイヤ達はアルクの考察力、推理力に呆然とした。四人にはアルクがとても子供には見えなくなったのだ。


「以上が、世界樹を剪定する理由です。べつに切り倒せとは言っていません。ただ、枝を数本斬るだけで良いんです。そうすれば日光が射し作物が育つはずです。」

「しかし……」


 老人三人はアルクの予想通り納得を示さなかった。ただ予想外だったのはアルフヘイムの姫であり、巫女の様な役割をしているフレイヤがアルクの提案を批判する様子を見せなかった事だった。


「アストルフォと言ったな……我ら精霊族にとって世界樹と言うのは己の命よりも重い存在だ。それを切れと言われ『はいそうですか』とはいかん」

「……」


 ゲルマンの言葉にフレイヤは何処か苦悩したような表所を見せる。


(確かにゲルマンの言う通り……でも本当にそれでいいの?)


 フレイヤは領主としてこの街の方針を決めなければならなかった。領民の“命”か“信仰”か。


「それは、そうでしょう。僕は別にあなた方を助けようとしている訳では無いので無理強いはしません。僕は、ただ一つの解決策を提示したに過ぎず、あなた方を助けるつもりも有りません。あなた方が死のうが僕にとってはどうでも良いですからね」


 薄っすら笑みを浮かべそう言ったアルクに老人三人は恐怖を……いや底知れない不穏な存在を見た気がした。

 しかし、フレイヤはそうでは無かった。


(はぁ~だから私は、アルクを助けたのかもね……)


 フレイヤはそう思と笑みがこぼれ出た。


「っふ……面白いわ。世界樹を剪定し、もう一度、帝都に救援要請しに行くわ。今度は私が直々にね」


 何処か吹っ切れた用意フレイヤは言った。

 今のフレイヤにとってアルクとの位置関係はとてもありがたかったのだ。

 フレイヤにとってアルクは数少ない全く気を使わなくて済む相手だった。


「ひ、姫様急に何を……」

「姫様はそう決めたのかい?」


 動揺するゲルマンに対し、スーシャとゴードは真剣な眼差しでフレイヤに問う。


「えぇ。何方にしてもこの惨状が続けばこの街は崩壊する。領民有っての信仰なのよ?そんな事も分からない精霊様だったら精霊様を敵に回した方がまだ可能性があると思わない?」


 フレイヤは、スーシャとゴードの問いに満面の笑みで答えた。


「姫様がそれで良いなら、わしもゴードもえぇえよ」


 スーシャとゴードの二人は久しぶりに見たフレイヤの笑顔に満足していた。しかし、ゲルマンは只一人、不服そうな表情をしていた。


「わしは認めん。世界樹と精霊様は同一。精霊様を傷つける行為は断固として反対だ」


 ゲルマンの譲らない態度にフレイヤは目を吊り上げる。


「ゲルマンさん。木々にとって剪定と言うのは大事な行為です。木々は日光を必要とします。しかし、世界樹の枝の所為でこの辺りの木々は活力を失い始めています。その所為で他の精霊にも影響を与えかねない。そして、剪定する事は、世界樹自体にもいい影響を及ぼします。例えば、害虫や病などを対策する事にも繋がります」

「ぐ……」

「今のままでは、世界樹にとってもいい結果はもたらさない可能性があります」


 アルクの言葉にゲルマンは暫く苦悩した後に首を縦に振る。


「ふぅ……。それじゃぁ明日、皆にこの方針を伝えましょうか」

「そうじゃな。しかし、姫様。帝都に行くと言っておったがどうやって行くつまりじゃ?恐らく、わしら精霊族は誰一人通してもらえないと思うが……姫様のアレ(・・)を使う訳にも行くまい」


 スーシャの疑問を聞いたフレイヤは、口角を上げ自信に満ちた表情そする。


「大丈夫。アレ(・・)は私もできれば使いたくないわ。でも今、非常事態な事には変わりないわ。だからファルミア様とセレスには悪いけど法律を無視して、街道の検問を無視して帝都まで向かわせてもらうわ」


 その言葉に老人三人は、険しい表所になる。


「姫様、それはつまり街道を通らずに帝都を目指すと?」

「えぇ、そう言う事よ」

「……それは、反対じゃな……」


 やる気満々のフレイヤの回答をゴードは俯きながら否定する。


「まぁ、そう言われると思ったわ。でも、今回は秘策が有るから大丈夫だと思うわよ?」

「秘策とは?」


 ゲルマンに問われたフレイヤは笑みを浮かべ、目線でその秘策を示した。


「……それが姫様の秘策ですか?」

「えぇ」


 フレイヤが示した秘策。それはアルクだった。


「実力、その他は相当なもののハズよ。それに、アルクだって帝都に戻りたいでしょ?」

「そうですね……絶賛職務放棄しているので、帰らないと全身マッサージの刑になりそうです」


 フレイヤの提案にアルクは苦笑いしながら答える。それ程アルクにとってセレスのマッサージは嫌なのだ。


「しかしのぅ……」

「うむぅ……」

「認めん!」


 老人三人はアルクの実力を見たわけではないので信用できないのだろう。


「だったら明日、剪定の発表をした後に、そうねぇ……この街の戦士でもあるゲルマンと模擬戦をしてゲルマンに勝ったらアルクが同伴ってことで良い?」


「それなら……」

「まぁなぁ……」


 スーシャとゴードはフレイヤの事が相当心配なのだろう。だが、赤ん坊のころからフレイヤを知っている二人はフレイヤの強情さも知っている。だから、ここで引いたのだろう。


「姫様、本気を出して良いのですか?」

「えぇ、良いわよ。私の見立てだと彼方でも手も足も出ないだろうから」


 そんな風に言われるアルクは若干顔を引きずっていた。


(なんか、俺の意志関係なく話が進んでいるのだが……)


「そう、なら決まりね」


 と、フレイヤの上機嫌な言葉でその場はしめられた。


ブックマーク・評価よろしくお願いします。

また、誤字等の報告や感想も受け付けています。

感想はTwitterでも受け付けています。内容批判でも大丈夫ですよ!?心だけは無駄に強いので。

(リア友に、ウルツァイト窒化ホウ素(世界一固い物質らしい)なみに頑丈と言われた……)


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