08 俺が命の危機を感じるまで
テロリロリーンと派手な音が流れる。
外から何の反応もないという事は、これまでの音はすべて自分以外誰にも聞こえていないと思っていいだろう。
『SSSR!』
……運10倍のステータスがこんなところで活用されるとは。
関係するとか全く考えていなかったから、SRとか出ればいいなーと気楽に思っていたのに、こんな風に作用するとは。
これまで、ソシャゲで最高位のレアリティなんてほとんど出たことないし、出たとしても役に立たないザコだけだった。というか、元の世界での運は数字にしたら10ぐらいしかなかっただろう。
『FNP90を獲得しました』
……あれ?
P90って……サブマシンガンのあれだよな?
あの、元の世界の武器だよな?この世界の武器ってわけはないよな?だれも拳銃とか持ってなかったし。
ガチャが終わった時の形式美で、入手したもののステータスが新たな窓で出てくる。
御丁寧に写真のようなイラスト付き。
『FNP90』レアリティ:特殊
攻撃力:不明
耐久力:不明
重量:不明
修復:可能
状態:未使用
(特殊メニュー)
カスタム:なし
弾丸:5.7×28mm弾×50
発射速度:900発/分
うん、やっぱり銃だ。
どっからどう見ても、しかも俺が個人的に一番好きだったやつ。
この世界で銃が通用するのかはわからないけど、あるだけで少し安心できる気がする。
とりあえず、窓を一旦閉じる。すると、『メニューの中の所持品から実体化できます』という案内が出た。
とりあえず、言われた通りにトップページからメニューを開く。購入履歴などのいくつかの中から所持品というのを選ぶと、簡単な表のようなものが出た。
一番上にある『FNP90』を触ると、手のひらの上に光が集まり特徴的なフォルムの銃が出てきた。
というか、思ったより軽い。ステータスの影響か、重い物は重いのだが持てないほどではなかった。
で、膝の上にあるマガジン。初回だけついてくるとかさっき小さな文字であったから、このマガジンを使い切ったらマガジンを買わないといけないのだろうか。
と、考えた瞬間目の前にポンと勝手に窓が開いた。端っこに広告と書かれていて、中にはマガジンのイラストと共に、
『FNP90用 50発マガジン』 1000000ポイント 【購入】
とかかれていた。
うん、やっぱり元の世界の物品は値段がおかしいんだな。
銃一丁に10億越えは普通に値段がおかしい。
とりあえず、重いからと銃を置く。
さて、どうやってしまおう。
と考えた瞬間、端っこにチュートリアルと書かれた文字と共に『アイテムをしまうには、収納と思い浮かべて新たな窓を出し、そこに触れさせればできる』というのが出てきた。
まぁ、従った通りに収納と思い浮かべて新たな窓をだし、銃とマガジンを放りこむ。
消えたのを確認して、もう一回トップページを出す。
なんか、無性にハンバーガーが食べたくなってきたのだ。
さっき夜ごはんという名のパーティーが開かれたので、空腹というわけではないのだが、なんというのだろう。あの懐かしい味が食べたくなったのだ。
検索から、ハンバーガーを調べる。
そして、出た物は、1万ポイントの物だった。
うん、やっぱり物価がおかしい。下に申し訳程度に出ているただのパンなんて50ポイントだぞ。鉄釘25個だぞ。簡単に拾えるぞ。
「というか、待遇悪すぎだよな……王様殴ったから仕方ないけど」
何と言うのだろうか、生理的に無理だったから殴ったってことだろうか。
この後は、お風呂に案内されるらしい。
お湯を沸かすのに時間がかかってしまうから、部屋でくつろいでてだそう。
「あー!やっちゃったな!……ん?」
ガサリ
窓の方から、草むらをかき分ける音がする。
「まさか……魔物?」
慌てる俺。
だって、魔物なんて見慣れてないんだぜ。しかも、剣とか防具とかなんにも持ってきていないし。
「確認しないと……」
寝ている間に襲われて死にましたなんて、冗談で済まされない。
逃げるなり戦うなりなんとかしないと、やばいというのだけは分かる。
で、窓を開けたら……少し離れたところから思いっきり俺の事を見ている人型の魔物がいた。
緑色の肌に棍棒。ぼろ布のような物を腰に巻いた、代表的な魔物……というか!めっちゃこっち見てる!口の端からよだれが出てる!絶対俺を食べようとしてる!
と、思った瞬間、頭の中でここにいては不味いという直感が湧いた。
俺の顔に位置しているところは……数秒後に切り裂かれると。
体を下げ、窓枠の下に身を隠す。
直後、俺の顔がさっきまで位置していた場所に茶色の棍棒が跳んできて、虚空を切り裂いた。
勢いそのまま、棍棒はまっすぐと跳んで行って……壁を爆発させた。
……あれ、これ勝てなくない?
通路丸見えだよ?
なんか通路の反対側の堅そうな壁に当たって跳ね返った棍棒が俺の足元に帰ってきてるよ?
しかも、なんか煙出してるよ?
……だれか助けて