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02 俺が神を殴るまで

「さてっと」


神様がイスから立ち上がる。

目の前にある長いテーブルまでゆったりと歩き、横に持っていた本をパラリと広げた。

すると、パラパラと本が勝手にめくれ、それと同時に光が浮かび上がりいろいろな形を作り出す。


剣や杖、サーベルのようなものから刀まで、中には指輪や本のようなものまである。


「一応、多めに50個と」


浮いていた光が数え切れないほどになる。

そして、その光は前にある横に長い机に飛んで、一斉にゴトリと音をたてた。


「これは、全部能力を具現化したものだ。君たちには好きな物を一人に一つあげよう!」


言いきった後、ふぅと微かに聞き取れるため息をつき、神様はイスに座る。

それと同時に、体にかかる負荷が消滅した。


「ちなみに、能力は最強になれるものから、ピンキリのものまで様々だから、早めに良いのを持ってた方がいいかもね!」


誰も動けなかった。

だが、徐々に空気は張りつめ互いを牽制しあう。

最初に動いたのは……空気を読まないランキング一位の厚川宏だった。


一気に厚川は走り出し、一番豪華そうな武器を取った。

直後、武器は光になり厚川の胸に突き刺さる。

すると、厚川自身も一瞬光になり、消えていった。


「ちなみに、能力を選んだ人から転送するから安心してねー!」


この

言葉を皮切りに、クラスメイトが机に殺到した。

できる限りいい力を手に入れようと、見た目が派手な物に殺到していく。


「どけよっ!こいつはおれのだっ!」

「どいて!あれは私が使う!」


武器はしっかりと両手で掴まないと意味がないのか、少しふれたところで他の人に奪われる。

力の無い者は押し飛ばされ、容赦なく踏みつけられる。

いつもおしとやかだった女子も、泣きながら突っ込んでいった。


動けないのは……俺と、あと一人だけだった。

昔、微かな好意を抱いていた女子、姫野静香。


「う……!」


姫野は、頭を抱え込み小さなうめき声をあげる。

表情からは、この状況への困惑、混乱、迷いなどが読み取れた。


「姫野さん!」


声を張り上げる。


「佐竹君!?」


手を掴み、強引に立たせる。


「いい?できれば杖、だめなら指輪とか小物を選ぶんだ!大丈夫?」


一気に俺はまくしたてる。


「な、なんで!?」

「剣とかは近接武器!だから、近接系の能力が手に入ると思う!だから、反対に杖とかは遠距離系の能力が手に入る可能性が高い!少しでも生存率を上げたいなら……身を守ってくれるお守り系か、遠距離から一方的に攻撃できる遠距離系を選ぶんだ!」


あくまで推測。

もしかしたら、見た目自体あまり関係なくランダムなのかもしれない。

でも、あの神様なら……そんなことはしないと謎の確信があった。

あと、一つの推測……


「あと、派手だから強いと思うな!ひっかけかもしれん!分かったら横から取りに行くんだっ!」


そう言って、姫野を突き飛ばす。

少し姿勢を崩しながらも、姫野はしっかりと地面を踏みしめ一瞬こちらを振り向いた。


「ありがとう!佐竹君!」


その顔に迷いは無かった。

俺も迷いを振り切る。

俺が取ろうと思っているのはただ一つ。あの発言から、別に絶対机の上にある物から取らなくていいともとることもできる。

なら……あれも手に入れられるはず。


俺は人ごみの中に……体を低くして、一気に突っ込んだ。


     ★



「全員行ったかな……」


僕は、イスに預けていたからだを起こす。

机の上には選ばれずに取り残された武器が並んでいる。

それをしっかりと掴んで、本に入れていった。


「やっぱり、これは余っちゃうよね……」


ひとつだれにも触られなかった木刀。

この木刀に込められた力はたぶん今回出した力の中で一番強いものだった。

この能力は無力化。それは、どんなものであれ生き物だったら触るだけで無力化できるというもの。

たとえ、魔王だろうと、ドラゴンだろうと。いっちゃえば神様でも無力化できるもの。


「見た目ってのは重要な物なのかな……」


そこで、一つの事に僕は気がついた。


「あれ……」


もう一つ残っていると思った物が残っていない。

あのボロボロの物を持っていく物好きがいたとは思えなかった。


「まるで、あいつみたいだな……」


少し昔の、自分が担当しなかった人を思い出す。

やっぱり、これも因果なのだろうか。


そうたそがれていた。


直後、下から衝撃が走った。


     ★



決まった。

手ごたえだけでそう感じる。


力を込めて下から振り抜いた拳は、神様の顎に入り、小柄な体が吹き飛んでいく。


「うっ……」


呻き声を上げた神様を無視。

そして、最初から狙いを定めていたあの能力を出した本を見つけた。


好きな物を持っていっていい。

なら、この能力を取り出した本も持っていってもかまわないだろう。


地面に開かれた状態で落下しようとする本を取る為に俺は頭から飛び込んだ。


「とぉりゃぁっ!」


少し出張ったお腹を地面に打ち付けるも、なんとかキャッチに成功する。


「よし!」


慌てて手に持った本を握りしめる。


だが……何も起こらなかった。


「神様を殴るなんてイイ度胸してるね?君?」


あ、死んだなこれ。

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