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01 俺が神と話すまで

今日で何話か、明日も何話から更新します。

うっすらと目を開ける。

知らない天井だ……


「ってはっ!?」


突然の光景に頭をあげて……めまいでまた倒れる。


「なんだこれ……」


そこは、広い部屋だった。

貴族の私室の様なものだろうか、あちらこちらに豪華なものが置いてあった。

謎の絵画や、大きな本棚。そして、王様が座りそうなイスに、横に長い机。

机には、下まで垂れて、完全に中が見えない様な大きな白いテーブルクロスが掛かっていた。


俺は立ち上がって周りを確認して……他にも人がいる事が分かった。


「……おいっ!」


一瞬思い出せなかった。

なにせ、入院していてまったく会っていなかったから。

クラスメイト全員が……倒れていた。


とりあえず、倦怠感が渦巻く体を壁際まで動かして壁にもたれかかる。

疲労感のようなものが何もしていないはずなのに、ずっと付きまとっている。


状況を整理しよう。

俺は、あの時たしかに歩道橋から落ちて、トラックにひかれたはずだ。

だけど、体中を確認しても怪我はほとんど見当たらない。

あるのは、倦怠感だけだ。


なら……死後の世界?

でも、それならクラスメイトがいる理由が分からない。

俺が死んだ時に爆破事件に巻き込まれた……てこともないだろうし。


直前に起きた、お金が燃える現象と関係あるのだろうか。

特になんとなくやったあの魔法陣も、この場所に関係あるのだろうか。


「……あ」


……入院中に暇つぶしに呼んでいたネット小説にもこんな感じのものがあったはず。

これは俗に言う……異世界転生とか、勇者としての呼び出しとか、クラス丸ごと転生ってものではないか!?


ちょっとだけうきうきしていた。

だって、現実では妄想でしかできなかった魔法とか、そう言う事ができるんだよ!

あまりあっち側ではイイ事がなかった俺にとっては、そういうのは小さな憧れだった。


酷い苛めとかにあっていたわけじゃないが、いい待遇ではなかった。というか、嫌がらせは結構受けていた。

まぁ、別によくある復讐とかがしたいわけじゃないけど……そこまでいい印象はないというぐらいかな……


「うっ……」


どこからともなく呻き声が聞こえてくる。

辺りを見渡すと……一人のクラスメイトが起き上がろうとしていた。

それにつられて、段々とクラスメイトが起き上がっていく。


「え……」

「なんだ……ここは?」

「ちょっと!ここどこよっ!」


小さなうめき声から、段々と叫び声に似たようなものへと変わっていく。

そして、段々と揃ってきて、帰せコールが始まった。

大合唱があまりにもうるさくて、耳をふさぐ。


だが……一人のクラスメイトがこっちを向いたとき、小さな悲鳴を上げた。


「……颯太!?」


それをきっかけに、他の静とも俺に気がつき始める。

……俺ってこんなに注目されるやつだっけ。


と思った直後、ズザザと盛大な効果音と共に全員が俺から一歩距離を取った。

……え!?


「お前!死んだんじゃねぇのか!?トラックにひかれて!」

「お化け!?幽霊!?」

「どいて!やだっ!こんなところっ!」


完全に幽霊扱い。

腫れものに触るどころか、道端の核廃棄物の様な扱いになっている。


「ちょ、ちょっと待てよ!足だってついてるし!生きてるから!」

「うそっ!絶対死んだって!お葬式にまで行かされたんだからっ!」


クラスの女子の内の一人が叫ぶように言う。

確か……水林晶子、よくクラスの中で力のある男子や女子に金魚のフンの様にくっついていたやつだ。

というか、行かされたという言い方にとてつもない毒を感じる。俺、死んだ方がいいのかな。


「は~い!終了!」


パンと手のひらをたたいた音が響く。

顔を向けると……あの豪華なイスの上に小さな男の子が座っていた。


あまりにも突然の登場に、誰もかもが静まり返る。


「さぁさぁ座って!」


その無邪気な一言の後……とてつもない重力が体にかかった。

思わず、膝を付く。自分だけでないようで、他のクラスメイトも同様に倒れ込んだり正座していたり。


「さて!ようこそ世界の狭間へ!君たちにはこれから別世界に行って勇者として戦ってもらう!」


小さな男の子は……そう告げた。


「どういう事だよ!」

「元の場所に私達を返してよっ!」


お決まりの様なセリフをクラスメイトは一気に吐きだす。

体にかかる重力はそのままだから、少しばかり声がかすれているが、結構な騒音だった。

男の子は一瞬だけ顔をゆがめ、


「うるさい。」


その一言で全員を黙らせた。

静寂が流れる。

突然の事で口を動かそうとして……動かせない事を自覚する。


「まったく、神様の前まで来て文句言うなんて無礼にもほどがあるな……よし、面倒だから質問制にしよう。適当に10人当てるから、好きな質問をしてね?」


そう言って、男の子……いや、神様は片手を高く上げた。

直後、体にかかっていた負荷が少しだけ緩まる。だが、声を出すことはできない。


「最初は……そこのパーマの男子!」


神様が指さしたのは、クラスの中で独自の立ち位置を持っていた三田厚志。


「ったた……なんだよこれは……」

「私語は慎むように!」


その声と共に、三田の体がピクリと動く。


「で、質問は?」

「あ……なんでこいつは死んだのに生きてるんだ?俺らは死んでるのか?」


三田は、震えた手で俺を指差した。


「質問は一つまで!だから先に出した方を答えるね!」


そう言って、神様は上げた手を握り締める。

途端に、三田は地面に倒れ込んだ。


「こればっかりは答えづらいんだけど、時間枠の跳躍というか、九か月前の死ぬ直前の体を呼びよせたってところかな。で、君たちと合流させたわけ。クラス転移はやっぱりこうじゃないと!」


簡単に言うと、自分の体は死ぬ直前に引っ張り出された物ということだろうか。

だから、トラックに衝突した時の痛みを感じることも無かったという事だろう。


「あっちの方だったら、彼はもう死んだ事になってると思うけど、ちょっとその辺りの矛盾は面倒くさいから自動修正って事で死んだってことにしただけで、まぁぶっちゃけ今ここにいる彼も、あの遺体もどっちも本物ってところかな。じゃぁ、次の人に当てようか。」


パンパンと作業の様に神様は一人ひとり当てていく。


出た質問は結構偏っていた。


私達は向こうではどうなっているのか。という質問には一応彼以外はこの人数の世界の変更は矛盾ができすぎるから、存在そのものがなかったということにされていると答えていた。

それに流れる感じで次の質問は、なら俺たちには帰る場所がないのかというのだった。それに神様は、もしこっちの世界に帰れるようになったら、帰って来た人の分だけ存在は修復され、元の様な生活に戻れるし、まぁ詳しい事は帰る時に説明するそうだ。


そんなこんなで、いくつかの質問が飛び交った。

あんまり有益な質問は出なかった。

向こうで何をするのかという質問には、お楽しみという返答。

元の場所に帰せという抗議には、無理との一言で終わらされた。


「じゃぁ……最後の質問といこうか……そこの孤独な君!」


指さされたのは……俺だった。体の負荷が消え、声が出せるようになる。


「質問は?」


考える。

チャンスは一度きり。聞けるのは一回。

なら、その一回の質問でできるだけ多くの情報を引き出す。


これまでの質問ともかぶらず、それとともに大事なところが分かる物。


「……俺らはどこに送られるんだ?」

「ふふ……あははっ!」


この問題は一番受け取りの幅が広い。

性格の悪い神様なら、異世界だけで終わる。

だが、多少の善意を持った神様なら余計な情報をくれるだろう。


「いい質問だ!もっともいい質問だ!」


神様は、愉快愉快というように笑う。

途端、体に大きな力が掛かった。


「答えを言おう!君たちが送られるのは……異世界だ。」


最悪の答え。

必要最低限どころか、底辺を突き破っている。


『当たりかな』


ミスったという事実を自覚した直後……頭に声が響いた。


『こんなにイイ質問をしたのに、御褒美をあげないのはさすがにないかなーと思ったからね』


神様の方を見ると、こっちを見て軽く微笑んでいた。

……テレパシーの力ってすげー


『行く場所は君の思い浮かべているようなものと一緒だと思うな。魔物も、魔王もいる。とりあえず、君たちは召喚の儀式を行ったひとつの国に送るけど、そこからの行動は君たち次第。でも、行動によっては命にかかわるかもね。まぁ、上げれる情報は今のところこれくらいかな』

「ってことで、本題に入ろうか!」


テレパシーが切れ、普通に声が聞こえる。

頭の中で伝えられたことを考えて……あ。


これって、チートとか手に入れてハーレムとか無双とかできるパティーンじゃねぇか!

やばい、うきうきしてきた。命の危険があると分かっていても、やっぱり男のロマン。あ、やっぱハーレムは嫉妬とかで刺されるのは嫌だから三人までで!


「じゃぁ、勇者として送りだすからには強い力を授けないとね!というわけで能力振り分けに行こうか!」


……へ?

できれば評価をしてくれるとありがたいです。

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