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 目が覚めるとそこは見知らぬ場所だった。



 先程までいた教室とは違い、日の光が射さない閉鎖的な空間。ゴツゴツとした床はひんやりと冷たく、じとっと汗ばんだ手から体温が奪い取られている様な気がした。


 灯りが弱いためぼんやりとしか見えないが、さっきまでいたグループの連中もそこにいる様だった。

 だが皆何を見てるのかこちらを背にして全く動かない。


 放置された事に密かにショックを受けながらも、私怒ってます!とばかりに少し語彙を強めて説明を求める。




「ちょ、!なにがあっーー」




「うっせぇ!!黙れ!!」



「...」



 ...いや、お前の方がうるさいだろう。てゆうか突然知らない場所に連れてかれ、放置された挙句喋る事も出来ないってなんだよ。ドッキリにしても誰得だよ。

 ああそっか、俺が慌てふためく姿を見てクラスの連中の見世物になるんですね、わかります。




「冬川くん 前見て」




 左の方にいた秋山が視線を前に向けたままでこそりと声をかけてきた。

 言われるがままに4人の前方に視線を向ける。その瞬間全身の毛が総毛立ち、血の気が一気に引くのがわかった。



 そこにいたのは全身が黒いマントに覆われた不気味な集団。フードを深くかぶっているため顔の部分が影になっていてみる事が出来ない。

 そんな連中がボソボソと意味不明な言葉をつぶやいている。



 ...あぶねぇ マジで絶叫する3秒前だった。



 最初にこいつら見てたら余裕で絶叫していた自信がある。むしろ絶叫しながら走って逃げ出した挙句転んで顔面を強打まである。




 いや待て、ここが絶叫ポイントなのかも知れない。

 ここで無反応でいる事で後からドッキリを仕掛けてきた連中が、「はぁ なにこいつ面白くなっ マジ空気よめねーのな」みたいな会話が繰り広げられ、俺悪くないのに何故か俺が悪いみたいな流れになるかもしれん。

 かといって慌てふためけば残りの高校生活ビビりの称号が追加されることは必須。



 どれが最も良い選択なのか頭の中でライフカードを並べていると、不意に黒マントの集団から聞こえてきた穏やかな声でその思考は打ち切られた。




「突然な事で驚いているじゃろう。まずわし達は敵ではない、その点では安心して欲しい」




 ゆっくりとした足取りで集団の中から現れたのは、周りより一際背が大きい白髪の老人。

 俺より頭一つ分位の背丈で、ゆっくりと近づいてくるだけで威圧感がハンパない。他の奴らも同じように思ったのか矢つぎ早に言葉をつなぐ。




「止まれ!お前らが敵じゃない保証がどこにある!いきなりこんなところに連れて来やがって!」



「ホッホッホ 確かに、その通りじゃな」



 何が面白いのか先程と変わらない穏やかな声色でにこやかに微笑んだ。その表情は作っているように見えず、本心から喜んでいるようで、尚のこと不気味に見えた。

その異様さを同じく感じ取ったのか狂犬君が後ろに身じろいだ。



「身勝手に諸君らをこんなところに連れて来て本当に申し訳ない。じゃが、少しだけ説明する時間をこの老いぼれにくれんかの?」




その変わらず穏やかな声に更に頭に血が昇ったのか、青筋をたて殴りかかろうと足を一歩踏み出したところで秋山がその肩に手を置いた




「ここでお互い睨み合っていてもしょうがない。ここがどこかもわからないし、一先ず彼らの話を聞こう」




 秋山の一言で狂犬君は渋々といった様子で牙を収めるが、その鋭い眼差しは老人に向けられており、警戒を解こうとはしない。

 みんなもそれに賛成なのか黒マントの集団の後ろに続いてゆっくりと歩き出す。ここに一人残るわけにもいかないため、俺も最後尾からそれに続く。







 ...あれ?これってドッキリじゃないの?





 この後冷静になるまで軽く1時間くらいかかった。

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