4.悪役令嬢の視点 04
4話が短いので、本日二話分、投稿致しました。
現在屋上にて。
「ねーね。最後の台詞、俺、格好良かったと思わない?惚れ直した?」
「…自分で言った時点でアウトでしょうよ。と言いますか、惚れ直すも何も、惚れてなんかないんですからねっ」
「え、何それ、ツンデレ属性だったの、君」
嬉しそうに笑うなーっ。
「そ、そうじゃなくて、さっきの何です。婚約って」
「うん。まずは18歳で婚約、19歳で結婚準備でしょ。女性は準備がかかるものだからね、理解しているよ。あ、ただし、婚前行為は許してね。さすがに結婚まで待つのは辛いから。ちゃんと避妊はするから大丈夫。それから20歳で結婚、もしこのまま君が大学に進みたいなら学生結婚となるね。うわー、学生結婚か。何故か背徳感の香りがあって、それもいいな。あ、そうだ。挙式はやっぱりウエディングがいいのかな?俺としては白無垢もそそるんだけどね。それと結婚後はしばらく二人でイチャイチャしたいから、子供は二、三年作らないでおこう。大学行くなら尚更ね。それから子供は男女両方欲しいから最低でも二―」
「待て待て待て~っ!」
私は真っ赤になりながら、まだまだ続きそうな彼の妄想をストップさせる。
「そう、そうじゃなくてっ!!婚約の話でしょ今は!!」
「婚約が何?」
「どうして私とあなたが婚約するのってお話ですっ」
「そりゃあ、愛し合っている二人だから」
「一方通行です!」
「そんなっ!俺は君を愛しているのに気付いてもらえてないの!?」
「ちょっ、ちょちょっ!!ま、待ちなさい。な、何で私があなたを一方的に愛している事になっているんですっ!?」
「だから大丈夫だって。俺も君の事を愛しているから」
「ち、違いますってば!そうじゃなくて、私がどうしてあなたを好きなのかと言っているの!」
「だって俺の事好きでしょ」
「か、勝手に決めないで」
「好きだよ。君は俺が好き。自分で気付いてないの?」
あまりにも自信満々に言われて、私は怯んだ。
私は自分で気付いていないのだろうか。
彼が好きなのを…。
私をからかってばかりの彼を。
だけど私の心を救ってくれた彼を。
「君は俺が好き。俺が好きなんだよ」
戸惑う私の頬に手を伸ばして呪詛のように囁く彼。
愛を囁かれるよりもはるかに胸が高鳴るのはなぜだろう。
もしかして本当に…。
……って、イヤイヤイヤ!!
洗脳されてる!
洗脳されてるよ私!
「待って待って待って!」
ちっと舌打ちが聞こえたのは気のせいですか。
「私、私、父の愛を再確認したばかりですの。タイミングが悪うございましたわね」
そう、これから私と父は改めて愛情を確かめ合うのだ。
だが、彼は平然とした表情を浮かべてみせる。
「大丈夫大丈夫。親の愛情と男女の愛情は棲み分けできているから、愛情の比率が変わる訳じゃないよ。だから全然オッケー!」
何が大丈夫なのだ!
何がオッケーなのだ!
彼はひたすら戸惑う私の手を取ると、顔まで持ちあげる。
そして私の瞳を覗き込みながら、左手の薬指に口付けた。
指から伝わった熱が頬にまで上昇する。
「…愛しているよ」
低く囁く声に胸がどくりと高鳴った。
「君は俺を愛し、俺は君を愛している」
何てずるい人だろうか。
心臓の鼓動が高まって呼吸が苦しい。
だが、この言葉が嘘でも本当でも、この鼓動の高鳴りだけは本物だ。
「と言うわけで。愛し合う二人の最後はやっぱこれがセオリーでしょ」
彼はそう笑って、端正な顔をゆっくりと近づける。
「っ。わ、私は、あ、愛まで行ってないですからね。せいぜいこ、恋までなんですからねっ」
最後の抵抗を見せる。
だが彼は…。
「ツンデレ彼女、大好物」
…この人には勝てる気がしない。
それにしても。
自分の道は自分で決めろと言った彼の引いたレールに乗りかけている自分が何とも皮肉な事だなと思いながらも、彼の唇を受け入れる為に私は目を伏せたのだった。
これで「悪役令嬢視点」は終了です。
次回からは「攻略対象視点(サブタイトル未定)」を開始致します。
引き続き、お付き合い頂けますと嬉しいです。