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雅に吹く風  作者: 雅夢
第一章 僕が僕の理由
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第三話 父と娘

冬休みだったのでもっと書けると思ったのですがこれが精一杯でした。

第三話 父と娘


 四月になって大学の入学式、講座の選択など忙しい日々が続いた。ゴールデンウェークも殆ど休む間もなくバイトに勤しむ毎日、そういえば家族ともろくに会話してなかった様な気がする。

 今度の休みには少し家に居ようかな。

 もう6月頭、もう半月もすれば入梅か・・。鬱陶しい季節が始まる。

 

「あれっ、お父さん今から仕事?」

 朝起きて二階から居間に下りると、出勤スタイルのお父さんが居た。

 何か疲れた顔をしているけど大丈夫かな。

「今日は遅番だからね、雅は大学か?」

「うん、二限から英語の必修が有るから。」

「夜はバイトかい?」

 お父さんはお母さんが差し出す弁当と水筒を鞄に詰めるとそう言いながら玄関へ向かった。

 僕がその問いに頷いて答えると、お父さんはちょっと考えるような素振りをして口を開いた。

「今度の日曜日に蒲郡へ行かないか?」

「蒲郡?競艇?」

 そう僕が答えると、苦笑を浮かべて目的を教えてくれた。

「いやっ、ラジコンだよ、ラジコン。

久しぶりにどうだ?」

「いいよ、それよりお父さん、少し身体休めた方が良いよ。」

 遊んでいる時か?って思えて僕は少しきつく言った、だって僕に解る位疲れた顔をしているんだよ。

 当たり前じゃん。「休んで!」って言うの。

「そうだな、少し頑張りすぎたかな。

 それじゃあ蒲郡は、また今度ってことで。

 でも何時かグライダーの操縦、教えてやるからな。」

 そういい残してお父さんは家を出て自分の車の方へ歩いていった。しばらくして、砂利を踏む音がした。お父さんご出勤、ハイブリットカーって本当に静かなんだね。

「雅も、ご飯食べなさい。」

 居間の窓越しにお父さんの車が走り去るのを見送っていた僕はお母さんの声で台所の食卓に着いた。あっシシャモだ、僕の好物。

「いただきます。」


 朝食を済まして、大学へ行く準備、大学が隣町なのは助かるよね、JRと私鉄を乗り継いでも三十分で行けるから。

 それで、必修の英語の授業は・・、なんか面白くない。高校の授業の延長みたい。まだ回数少ないけど専門課程のほうの英語は専門書を英語で読むので難しいけど興味もあって面白いんだよね。

 授業が終わると友人たちと連れ立ってお昼ご飯、学食(学内のカフェテリア)へ向かう。

 今日は四人で行動、大学は取る授業や講義によって顔ぶれが変わるから面白い、三人の友人の内二人は高校から友人で渥美希美子さんと伊藤綾乃ちゃん、綾乃ちゃんは小中の時から一緒であの苦しい時も僕を応援してくれていた幼馴染で親友、大学も一緒で驚いたのは内緒(綾乃ちゃんサプライズを狙って僕にこの大学を受験したのも受かったのも教えてくれなかった、僕は推薦で綾乃ちゃんは一般入試だったから全然気がつかなかっただ)。二人ともふわっとしたシャツにスカート、色も明るめで爽やかな感じ、初夏の装いだね、僕にはまだ着れないなこれは。

 それともう一人は大学に入って直ぐのガイダンスの時に席が直ぐ前だった水野 薫さん大柄でボリューミーな御姐さんっぽい美人さん、水野さんは綾乃ちゃんたちとは真逆で半そでのポロシャツと半ズボン、後で聞いたらどこかのサッカーチームのユニホームのレプリカらしい。

 そんな中、僕はダークグレーの長袖Tシャツに黒のジーンズと言う地味な装い、これに最近は手放せない帽子キャップね、チョッと前まで上に羽織っていたパーカーは流石に暑くなって来たので止めました。やっぱ、私服でスカートは未だに抵抗がある、主に精神的にね。

 これに筆記用具と教科書、タブレットを入れるトートバックにスニーカーで今日の僕の大学生ファッションが完成です。


 学食へ入って、オーダーの列に並ぶ三人とは別れて僕はテーブルに向かう、よし、ちょうど空いた四人席を確保。

 僕はそのまま綾乃ちゃん達三人を待つ、さほど待つことも無くレジで支払いを済ませた三人はすぐ僕を見つけて料理が載ったトレーを持ってこちらへ歩いて来る。

 僕は皆がテーブルに着くのを確認して鞄から弁当箱を取り出して蓋を開ける。

「相変わらず大代さんはお弁当持ちなんだ、

 それ自分で作ったの?」

「大体ね、この煮物は昨夜お母さんが作ったやつだけどね。」

 興味深そうに水野さんは僕のお弁当を覗き込む、あまり出来は良くないから見られると恥ずかしいな、僕は脂っこいものが苦手だから自分でお弁当を持ってきて居るだけだし。っと流石お母さんの肉じゃが美味しいな、今度僕も挑戦してみよう。

「でも雅、それでよく持つわね。」

 本日、海鮮丼とお蕎麦のセットをチョイスした綾乃ちゃんが不思議そうな顔でそう言う。弁当箱のサイズは中学の時から変わっていないけどそんなに少ないかな?

「雅ちゃん何、ダイエット?そんなにスレンダーなのに。」

 渥美さん、本日のBランチのササミチーズカツを頬張りながら、サラッと恐ろしいことを仰る、これ以上痩せたら僕死んじゃうよ。ただでさえ僕はあまり発育が良くないのだから。

「良いよね、大代さんはスタイル良くて。

 私なんか油断すると直ぐ体重が増えるから。」

 と申しながら、水野さんはドライカレーのプレートランチを召し上がっています。僕じゃ直ぐ胃がもたれそう。って待って水野さん、今何やら理解不明な文言が・・・。

「雅は、まあ色々有ったからね。

 この娘はもう少し太った方が良いと思うけどね。」

「僕もそう出来たら良いんだけど、

 無理しても食べれないから・・・。」

 綾乃ちゃんが援護してくれる、本当に助かる、何しろ無理して食べると全部吐いちゃうから。拒食症ほど重症では無いけど、以前のパニック障害と同じで中学時代に溜まったストレスの影響らしい。高校生活を通して大分改善できたけどまだ少し残っている。

 お陰で成長期に栄養が偏り僕の成長は止まってしまっている、一見すると高校1年生?人によっては中学生に見える事も有るらしい。

 なのに・・。

「スタイルが良い?

 僕が?」

 危うくスルーするところだった、いや、それで何の冗談ですか?

「大代さんって、小柄だけどスタイルが良くて、華奢で儚げでよね。」

 あのそれ誰ですか?って、突っ込もうとしたら綾乃ちゃんに先手を取られた。

「水野さん、駄目だよこの子、無自覚系だから。」

 綾乃ちゃん、器用に音を立てずに蕎麦をすすっている、じゃなくて幼馴染だからって“無自覚”ってそれは無いでしょ、いやその何に無自覚なんだか解らないけど・・・。

「雅ちゃん、前にうちのゼミの男どもが騒いでたでしょ?」

「前って、ゼミのガイダンスの時?」

「そう、それは気が付いていたのね・・。」

 僕は同意の意味で頷いたけど、水野さん説明は有り難いですが、そこで脱力しないで欲しい。

「あれって、何で?」

「・・・・・。」

 何、この沈黙?

「ねっ、でしょ。」

「だね。」

「無自覚の上に鈍感系か・・。

 先が思いやられるな。」

 いや、何で三人とも思わせぶりな会話なの?水野さん、無自覚の上に鈍感系って意味解りません。

「まあ、それが雅の良いところだしね・・。」

「そうね、まあ私らが気をつけれるしかないか、

 そうじゃないと本人のあずかり知らないところが修羅場になりそうな予感が・・・。」

「大丈夫、雅 (さん)(大代さん)は私たちが守るから。」

 僕って皆に迷惑かけているのかな。?ちょっと落ち込み気味に三人を見ていると、三人とも同じような笑顔で何故か頭を撫ぜてくれた。

 うっ嬉しい?喜んで良いのか僕?

 悲しい気もするけど、結局、僕は皆に支えられて辛うじて生きている、そんな気さえする。

 苦しいけど、申し訳ないけど、でもそれが普通に成っていた。

 少しも普通じゃないのに、皆に甘えていたのかもしれない。

 それは一種の幻想だった。


 そんな幻想を一本の電話が葬り去った。


 食事後、みんなとお喋りしていた僕のスマホに着信があった。

 誰だろうと思って表示されている相手を見るとお母さんだった。

「はい、もしもし雅だよ。」

 と。何時もの調子で電話に出る僕。

「・・・。」

「お母さ・・・、だよね?

 どうしたの?」

「雅、良い落ち着いて聞いて。」

 何か変だ、普段のお母さんと違う。

「どうしたの?」


「お父さんが、倒れたの。」

 それは僕が予想もしていなかった内容だった。その後、色々お母さんが言っていたど何も耳に入らなかった。

 

 気が付くと、僕はお父さんが搬送された病院、救急処置室の前にいた。お母さんと弟の輝、大叔父さんや大叔母さんも駆けつけていた。


 でも、お父さんは一度も意識を取り戻す事も無く、息を引き取ったんだ。

 僕との約束をそのままにして。

読んで頂きありがとうございます。

女子大生のガールズトークって書いたの初めてです。オジサンには想像できない世界なので踏み込みが足りません。申し訳ないです。

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