ゆーしゃみーつまおー
ザンッ
剣閃が光り、魔獣が倒れ伏す。
そして今し方魔獣を切った青年、勇者レイは階段を駆け上がりながら思った。
(ようやくか…)
ここは世界を侵略した魔王の一人、魔王ネルの城、彼は単身で乗り込んでいた。
(魔王の一人を倒せば少なくともこの拮抗は崩れ、人類に有利になるはずだ。)
そう、実際魔王と戦った者はいても魔王を討ち取った者はいまだに一人もいない。つまり彼が本当に魔王を倒せば世界は大きく変わるのだった。
(魔王を倒せば俺は注目を浴びて友達もてきて…いや、もしかしたら彼女もできるかも)
…どうやら変わるのは世界だけではないようだ。
そして彼は階段を駆け上りきり、ついに魔王の間への扉の前に来た。
(この先は魔王の間、どんな罠が仕掛けてあるのか分からない…)
彼は緊張していた。無理もないだろう、彼はこれから単身で誰も勝てなかった魔王に挑むのだから。
(ここまでくれば後はもう行くしかない。)
彼は大きく息を吸い込むと
「おい魔王!いままで貴様のせいで死んだ人々の仇だ!この闇雷勇者レイ様の黒聖剣の錆びになれー!」
そして扉を蹴り開けた彼を迎え入れたのは魔王ネルでも、狡猾な罠でもなく
大音量で流れるアニソンだった
そこは奇妙な部屋だった。とてつもなく大きな部屋ではあるが、部屋中に大量の二次元の少女のポスターが貼られ、壁には大量のフィギュアとゲームが飾られとても大きなスクリーンがあり、そこには魔法少女モノのアニメのopが映し出されていた。そんな光景に
「…は?」
彼は呆然としていた。
(落ち着け、状況を整理しろ、まず俺は魔王の間に来た。決してオタクの部屋に来た訳ではない…そうか!)
彼は全身を緊張させ、周囲を警戒した。
(これは来た者を混乱させるための部屋で、混乱してる間に死角から不意打ちを食らわせるつもりだ。一瞬でも気を抜けば殺される)
そんなとき、それは現れた。
それは美しい少女の形をしていた。それは寝起きなのか、とても眠そうだったそしてそれは
積み上げられた漫画やゲームの中から出てきた。
「…は?」
彼はまたもや呆然とした。そしてそれはそんな彼のことを知ってか知らずか辺りをキョロキョロと見回し
「…あと5分」
もう一度眠り始めた。
これが実力はあるが友達はいない勇者レイと世界を滅ぼす力はあるがやる気のない魔王ネルの初めての出会いであった