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世界は英雄戦士を求めている!?  作者: ケンコーホーシ
第5章 運命動乱編(後編)
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第76話:ヒーロー達の友情煙来(前編)

 葉山樹木に尋ねたことがある。


「どうして俺を生徒会長に紹介したんだ?」


 当時、俺は葉山紹介のもと生徒会長から特訓を受けていた。


 一流のヒーロー候補生直伝の厳しい試練(ハードディシプリン)だ。

 その苦しさと有用性を実感する一方――ある疑問が俺のなかで膨らんでいった。


 なぜ、葉山は、俺と生徒会長を、引き合わせたのか。


 不思議であった。

 葉山の意図が読めない。

 俺と生徒会長が出会ったことで、何かメリットを得たのだろうか。


 彼は、別に美少女ゲームやハーレム系ラノベに登場しそうな、俺が困ったときに手を貸してくれる、都合のいい友人キャラではない。


 血の通った生きた人間だ。そこには打算がある。そこには狙いもある。


 特に葉山はそうした計略に長けたタイプだ。


 そんな彼が、ライバルの俺を強くするため、“生徒会長の知り合い”という最高のカードを提供する。

 尽力を果たす。

 信じられないことであった。

 葉山も一流のヒーローになりたい気持ちは変わらない。その思いでいえば、俺より強いかもしれないのに。


 そんな彼が、なぜ?


 俺はタイミングをうかがった。そして、葉山に直接質問した。

 どうして敵に塩を送るような行為をしたのか。


 すると、彼はこう答えた。


「フフフ……そうだね。新島くんは、初めの頃、僕が言ったことを覚えているかい?」

「初めて?」

「フフッ……――僕は五分以上話した人間と、友だちになったと認識するのさ」

「ああー……」


 その言葉は――確かに聞き覚えのあるものだった。

 葉山はその台詞とともに俺のとなりに勝手についてきたのだ。


「フフ……あの時は僕は僕で必死だったからね。

 裏を返せば、五分以上話して――気が合うと確信した人間と、僕は最初の友だちになろうと決めていた」

「…………」

「僕は面倒な人間だからね。自分の中で『友達の定義を明確化しないと』何も行動できなかったのさ。

 ――三日連続で話しても興味が尽きなければ、親友。それが一週間も続くようならば、心の友になれる。僕たちは――どんな悩みでも共有できる」

「……どんな悩みでも」


 言葉を反復する俺に、葉山はめずらしく普通に笑いかけた。


「ふふっ、新島くん。君がどう思ってるかなんて僕は知らない。だけど、少なくとも僕にとって君は大切な親友なのさ。――親友の悩みを解消するくらい、この僕には苦労でも何でもない」


「…………」


「――ましてや、それが恋の悩みならね」


「…………っ!」


 焦る俺に葉山は軽々と“いつも通りに”笑っていた。


 それ以来だろうか。俺は葉山のことを親友だと呼ぶようになっていた。




「フフフフフフフフフフフフフ、君と戦うのは何回目だっけねぇ……新島くん」

「……さあな、少なくとも10回以上はやりあってるんじゃねえのか」


 黄金の通路にて、俺と葉山達が対峙する。

 その様子は戦いのような荒々しさはない。

 むしろ穏やかだ。

 当然だろう。

 これは戦いであるが、戦いではない。


 俺からすると、葉山の本体はここにいない。故に、倒すことはできない。

 葉山からすると、俺は光の剣を持っている。直接打ち破ることは難しい。


 故に、この戦いは、謂わば前哨戦だ。

 潰し合いにはならない。

 死闘にはならない。

 俺からすれば、葉山の支配するエリアから脱出できれば勝利、葉山からすれば、俺の進行を止められれば勝利、といったところだろう。


「――フフフ、新島くん、今君はこう思っているね。“俺は光の剣を持っているんだから、この分身共には直接手をくだすことはできない。なら俺はこの支配領域から早く抜け出すだけだ”――とね」


「……そうだが、それがどうした」


「フフッ、別に、ただちょっとね。その考え方は甘いかなって――!」


 煙葉山がグンッと片腕を伸ばす。合わせて分身の一体が空を舞う。

 俺は待ち構える。

 左斜めから近接する。

 光の剣を持つ右手とは逆サイド。

 距離を詰め、拳にエネルギーを集中している。


「――はんっ!」


 と、対する俺は足先を回転させ、光の剣を振るう。

 タンッ、と軽快な音を鳴らし俺は回り終える。

 結果、襲来してきた葉山の存在は消えてなくなる。


 それから、剣舞でも披露するように、通路の一部に向かい光を振り下ろす。

 通路の一部を覆っていたはずの白煙は、風でも吹かれたように霧散する。


 死角を襲ってきた葉山、

 命令を出してきた葉山、

 待機して“機”をうかがっていた葉山。


 三体はそれぞれに別の行動をとっていたが、俺の一振りの前に掃討される。

 目の前にはクリアになった世界が広がるのみ。


 ふぅっ、と一息つき、黄金に輝く景色を前にひとりごちる。


「……知ってるだろうけど、俺の光の剣は、ヒーローエネルギーが“間接”さえしていれば、連鎖的に消し去ることも可能なんだよ。イマジンブレーカー的なものとはまた違う。直接触れなくても、この密閉した空間ならば、煙同士を連鎖させて――お前ら全員を倒せるんだからな」


 真白さんに謂わせれば、光の剣の仕組み“そのものが”ただの消滅能力とは異なるらしい。

 どちらにせよ、ヒーローエネルギーに対して無敵の強さを誇るこの武器は、俺の最強の相棒であり、葉山の煙すらも敵ではない。


 ――だが。


「――――フフッ、フフフフフフフフフフフッ、わかってる、わかってるさ、そんなことは。僕だって君のことを何も知らない訳じゃないんだからねぇ……」


 と、通路沿いの一部に白色の煙が集中し、凝縮し、形成される。気づいた瞬間には、葉山がふたたび復活する。


 その位置は、さほど遠くない。もしここが単なる密閉した白煙空間ならば、消しされたばずの位置だ。


(……なるほどね、あえて煙のない余裕を作ったか)


 俺、白煙、白煙、煙無し、白煙、白煙、煙無し、白煙、白煙、って感じだ。


 どらやら、この葉山――白煙と白煙の間に、意図的なスペースを作ったのだろう。

 密集しないことで、救世剣による連鎖消滅を防いでるようであった。

 俺対策、ってことだろうか。

 どうやら突破には時間がかかりそうだ。


「空気の層か。面倒だなー、余計な手間がかかりそうだ」


 だけど、それじゃあ不十分。

 俺を倒す根本的な解決になっていない。

 確かに面倒だ。手間がかかる。

 だが、それだけだ。

 裏を返せば、それは――時間をかければ進めるということに他ならない。


 光の剣を携える。

 大丈夫。

 この力が俺にあれば。


「――無事に抜けだせる、とでも思ったかい?」


 その時。

 通路内に“激しい風”が吹いた。

 その風は、その後方から吹きだした風は、その勢いを増大しながら“何か”を運んでくる。

 突風で木々が飛ばされる時のように、その何かは、俺の背後に向かってくる。


 俺は振り向く。


 白煙に運ばれて(・・・・・・・)、俺の目の前に“何か”が現れる。


「SRUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU――ッ!」

「MORUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU――ッ!」


「な、はぁ……っ!?」


 とがった角と鋼のような身体。動物に例えるなら、サイに近い生き物。

 軟体動物模した触手の塊。見覚えのあるタコのような海洋性の化け物。


 間違いない。その容姿は間違いない。

 怪獣だ。

 怪獣達が、白煙に運ばれて、俺を襲ってきたっ!


「フフフフフ、頑張ってね、新島くん」


 葉山が笑う。分身を始めて構える。おいおいおいおい。まじかよ。


「マジかよ……」


 俺は咄嗟に超変身のボタンを入力していた。

 ――迫りくる怪獣たち、第二層における葉山との戦いは、予想外の形で終止符を迎える。

 次回「第77話:ヒーロー達の友情煙来(後編)」をお楽しみください。

 掲載は4日以内となります。

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