第56話:ヒーロー達のスパイ大作戦
画面の向こう側で“煙”が蠢いている。
スクリーンを隔てたゲームの世界。天使の卵の仮想空間でだ。
『――――変身名《幻影魔人》、種類『大白煙』!』
『――――変身名《幻影魔人》、種類『大白煙』!』
『――――変身名《幻影魔人》、種類『大白煙』!』
聞き覚えのある不吉な声が立ち込める。忘れることはできない友人の声だ。
荒涼とした岩石地帯から、大量の葉山たちが出現を果たした。
20~30人はいるだろうか。少なくとも両手で数えるのは諦めた。葉山たちはフフフフフと不気味な笑い声をあげる。
何をするつもりだ。と、疑問に思っていると、彼らは両腕を鳥のように広げて、“煙”という特性をいかんなく発揮した、“融合”を開始した。
『フフフフ……』
『フフフフフフッッ……!』
『フフフフフフフフフフフフッッッ……!』
空気と空気が混じり合うように、葉山たちが白煙となってお互いに結びつく。結合する。統合する。笑い声が融け合うのを聞きながら。俺は“巨大化した”葉山たちを眺めていた。
5メートルから6メートルくらいだろうか。
総勢三体。“三名”ではなく“三体”と表現するのがこの場合正しい気がする。
この俺に、君島さんの巨大化や、電極先生の変形を思い出させた。
『――――フフフ……そろそろ幻影もオシマイの時間だ…………』
葉山たちは三重奏でそう言うと、一斉に、水城先生に襲いかかった。
1年Bクラス担任――水城門錠先生は、変身名《激流槍》の水流使いだ。何もない空間から水流を自在に生み出し、相手の呼吸を奪うことが可能なおそろしい能力者である。が、酸素を含んだ煙を発生させることに成功していた葉山の前では無力と化していた。
葉山の猛攻が始まる。巨大で。それが三体だ。高低差のある岩石地帯ということもあり、葉山の攻撃は水城先生に命中した。先生の残り少ない体力ゲージはHP『0/2000』を記録する。
『……フフフフフフッ……長期にわたる連続試合』
『長い時間をかける戦いならば』
『それは、僕の“十八番”じゃないか……フフフ……』
瞬刻、けたたましいシステム音が鳴り響いてくる。
葉山の“一次選考会突破”が確定した瞬間であった。
――――――そして俺は、葉山の勝利を確認すると、満足気にスクリーンから視線を落とすのであった。
☆★☆★☆★☆★
「――また、会ったわね。新島宗太くん」
足音に顔をあげると、そこには2年Bクラスの鴉屋クロさんが冷然と立っていた。
星空のマンションの照らしだす幻惑的な明かりの中で、西洋人形のような美的で造形的な両足をスラリと伸ばしている。普通より丈の長いスカートなのか、制服というよりも品のあるドレスのように感じられた。
「……スカートの中は、覗かないでね」
余裕たっぷりの口調でそう牽制された。
このまま自然に叙述しようとしてた俺はとっさに目を逸らす。
「友人の戦いを鑑賞しながら、ましろんの実験に付き合っている“最中”なのね」
まるで何の説明も必要ない、といった確信に満ちた調子で、俺を見下ろしてきた。
しかし、クロさんの分析は完璧だ。
事実、今日の俺は葉山の試合を見ながら、こうして真白さんの実験に付き合っているのであった。
「お疲れ様です、クロさん。この通り、“失礼な状態”からの挨拶で申し訳ないです……」
「おっとっと……新島さん、動かないでください」
「ああ、すまない真白さん」
「構わないわ。ましろんの実験方法としては、“それ”がベストだろうから」
と、クロさんは、うつ伏せに寝ている俺を、右足で指差した。
器用なものである。
ちなみに、今の俺は、真白さんに踏まれながら寝ていた。
正確には、真白さんの両足でぐりぐり踏みつけられながら、寝ていた。
より正確には、真白さんの両足でぐりぐりと“犬のように”踏みつけられて、星空のマンションの床の上に、“むしろ楽な状態で”寝っ転がっていた。
「……絵面だけ見ると、新島くんが、同級生の女の子に言いように踏みにじられている状況なのよね」
「真顔で分析しないでください」
しかし、やはりクロさんの分析は完璧だ。
事実、俺は床に寝たままの状態で、白いニーソックスを履いた真白さんの両足で、背中とか腰とか“顔とか”を踏まれていた。
「気分的にはあれですね。浦島太郎の亀になった気分ですね……」
「イジメられている気分?」クロさんはしゃがみこんで、俺と視点を合わせてきた。スカートはきちんと折りたたんでいて見えない。残念だ。
「そういう訳ではないですけど……」
「そうね、新島くんにとって、これはご褒美みたいなものだったわね」
「そういう訳でもないですけど!」
「うわっと……新島さん、動かないでくださいってば――トォッ!」
「おぅふっ!」
と、俺の横顔に真白さんの蹴りが入る。
ただし、かけ声のわりに真白さんの力は弱く、ペチンと足裏で優しく撫でられたような、感触がしただけであった。
よかった。
これくらいなら“へっちゃら”だ。
「す、すみません! ……痛かったですか、新島さん?」
「ああ、大丈夫。むしろ、ちょうど良いくらいさ」
「ド変態ね」
クロさんはクールな表情のまま、クールにそう突っ込んできた。
もともと表情がなく、冷たい印象のクロさんだったが、
現在のクロさんは“永久凍土”とでもいう表情を見せていた。
真白さんの蹴りはさっきより強くなっていたが、もともと虚弱なこともあるのか、それほど強力な刺激ではなかった。
だから、
「……ど、どうですか、新島さん? まだ、大丈夫ですか?」
「……ふっ、あまいな真白さん」俺は一笑に付す。
「えっ?」
「その程度の蹴りじゃあ、俺を満足させることはできない。もっと、本気で蹴ってこないとな」
真白さんは一瞬だけ瞳をぱちくりとさせる。
それから、息を呑み、表情を“真剣なもの”に変化させる。
「……新島さん、――了解しました。私、真堂真白、新島さんのため、全力でお踏みしてさしあげますっ!」
「よしこいっ!」
「一見バトル漫画のようにも見えるけど、よく聞くとただのドMのおねだりよね……」
そう呆れたような台詞を述べているが、クロさん自身は眉一つ動かさず鉄面皮を保っているのであった。彼女自身、呆れているつもりはなくて、客観的な事実をただそのまま口に出したに過ぎないのだろう。
クロさんは“元Cクラス”の生徒だ。真白さんの“行動の意味”については承知しているだろう。というか、ただでさえクロさんは、情報収集のプロフェッショナル、CクラスからBクラスへの躍進を果たした寵児なのだ。辞書が生きて歩いているような人間だ。
鴉屋クロに知らぬことなど何もない。
「……そういえば、さっき戦っていたのは、1年Dクラスの葉山くんよね」
「ご存知なんですか?」
「――ええ、1年Dクラス16番の葉山樹木くん。変身名《幻影魔人》の煙のヒーロー。和泉くんの中学時代の後輩で、二年前に彼に命を救われた経験から、この学園に入学することを決める。身長184cmで、体重は52kg。血液型はAB型。中学時代は引きこもり気味で和泉くん以外の友人はいなかった。そのため、高校入学時は、この学校全員の生徒と友達になることを目指したのよね」
「めちゃくちゃ詳しいっ!?」
何だこの人怖いっ!? Wikipediaより詳しいっ!
てか俺の知らないことまで知ってる。いろいろ混じってる。
何だこの人マジ怖えーよ。
「へー、やっぱりクロさんは物知りですねー」
「いや、物知りとかそういうレベルじゃねーよ。普通の物知りさんは一般生徒のプライベートにまで精通してないよ」
確かに知らぬものなしとは言ったが、伊達や酔狂で使っていい言葉じゃなかった。
格が違う。
クロさんは、もっと恐ろしいナニカだった。
「すげースーパーコンピュータみたいだ……」
「新島さん、スーパーコンピュータ見たことあるんですか?」
「いや、それはねーけど……」
そこは、こう、イメージだよ。人の例えを深追いしないでくれ。
実際問題、スパコンがどう凄いのかもよく知らない俺であった。
「というか、何でそんなこと知ってるんですか……?」
「んー、そりゃあ私が、鴉屋クロだから、に決まってるじゃない」
わけが分からなかった。
どこをどう取れば「決まってるじゃない」になるのかもさっぱりだった。
まあ、まったく意味がわからないけど、ともかくカッコよくはあった。
ついでに、無表情のクロさんの背後から、なんとも言えない「ドヤオーラ」が感じられた。
この世にはよく分からないものほど、偉大さを感じられる風潮があるのだ。
とにかく、クロさんの圧倒的なまでの博識ぶりならば、俺がこうして踏み続けられている理由もご存知のことだろう。
そうでなければ、クロさんは、理由も分からずに、自分の後輩が同級生の男の子を、ふみふみしている光景を延々と見続けていることになるのだ。そんなのは嫌すぎる。
……なお、ここまでのナチュラルな会話の最中も、俺は当然のように、真白さんの細いおみ足で、ぐにぐにと背中を弄ばれているのであった。さすがに内履きは履いておらず、新品の白いニーソックスに履き替えてからの行為であるが。
さらに言うと、制服のままだと、いろいろマズいこともあるので、白と紺色の体操着に着替えてもらっている。
と、それはまあいい。それはそれとして。――私の文章には、ずいぶん、そうしてそれからが多いでしょう、by太宰治『トカトントン』より抜粋。
ともかく理由である。
理由。俺がこうして真白さんに踏まれている理由。
もちろん、これは俺の性癖を披露した結果でもなければ、真白さんの趣味でもない。
……いや、後者は完全には否定することができないが。
至極単純な理由として。
これは、Cクラスのヒーローの能力診断方法なのであった。
☆★☆★☆★☆★
「Cクラスの生徒――といいますか、鍛えれば誰でもできることなんですが、
ヒーローの能力を診断する方法で、最も効率的で、正確性の高い方法は、こうした“触診”なんです」
真白さんは、俺の背中にぐりぐり体重をかけつつ、そう言った。
「一流の武道家や達人がお互いに拳を合わせた瞬間、相手の実力を見極める、というのがありますよね。
原理そのものは違いますが、発想は同じです。
ヒーローに触れてヒーローの力を感じ取る。
ヒーローに触れてヒーローの力を変化させる。
ヒーローエネルギーとは肉体に内在した力ですから、“意識的な接触”はその力の調査・変容に有効なんですよ」
「また、同時に、ヒーローの体内を調整する上でも、こうした“触診”は効果的です。
私の場合はこうして“足で踏む”ことで『調整』を、逆に“足で踏まれる”ことで『診断』を行なうことができます」
と、真白さんは“もっともらしいこと”を並べた上で、俺を踏み始めたのである。
当然、この話を聞かされた当初――というか、具体的に昨日は、信じることができず「何いってんだこいつは……」と可哀想な人を見る目で可哀想に見てあげていたが、実際に踏まれてみてその“凄さ”を実感することができた。
力がみなぎってくる。
いや、みなぎってくるという言葉は適切ではないかもしれない。なんだか、身体の一部が生まれ変わっていくような、強力なマッサージをしてもらった後に、身体がやけに軽くなっていて驚いた時のような、そんな“肉体の変革”が、俺の内側で起きていた。
「す、すげぇ……」
「本当でしょう?」
「ゴメン、明らか俺を“下僕にしたいがための嘘”だと思ってたわ。これスゴイわ……」
後で聞いて知ったのだが、この調整方法は、『月見式ヒーロー診断法』と呼ばれ、かの2Bクラスの担任にてトレーニング広場の管理人である月見酒シロさんの考案した診断方法であるらしかった。
そう言えば、あの人も他人に抱きつくことで、その人のスペックを読み取ることができた。狗山さんは彼女のことを『ステータス分析』ができると言っていたが、真白さんの戦法もまったく同じものなんだろう。
真白さん曰く、月見酒先生の域に達するには、何年も修行が必要になるらしい。
……むしろ、修行すれば、誰でもできるという事実に俺は驚愕していた。
☆★☆★☆★☆★
「――今、思えば、真白さんに初めに会った時、
いきなり踏まれに来たのも、俺の能力を計るためだったんだよな……」
「まあ、そういう目的もありましたね」
と、真白さんは頭をぐりぐり踏みながら、返答をした。
「この診断方法は、人によってやり方が異なりますからね。
もう少し、細かい話をしますと、ヒーローエネルギー同士には共鳴する力がありまして、その共鳴効果をうまく増幅させるには、ヒーローごとの適正にあった“接触方法”があるんですよ。
私の場合は、この“足踏み式診断”が一番いいんです」
「ふーん」
ネーミングだけ聞くと、随分と淫靡な名前だな。
と、俺は適当に相槌を打ちながらも、あまり話を真面目に聞いていなかった。
というか、むしろ眠たげにウトウトしていた。
この踏まれるという状況、一見するとお姫様とその下僕みたいな構図だが、見方によっては女子高生に優しくマッサージされているシチュエーションと捉えることも可能なのだ。
「いえ、私の知っているマッサージは、足裏で顔を叩いたりしないわ……」
クロさんがそう訂正してきた。違うかな。そうか。
「流石、歩く地球の本棚と呼ばれるクロさんですね」
「いえ、常識的にね。あと、私にその二つ名はない」
クロさんが冷静に突っ込んでくれた。この御方、案外、スルーすることなく的確に突っ込みを入れてくれる。
「というか、今日は饒舌ですね。クロさん」
「……そうかしら?」
「以前お会いした時は、もっとダウナー系というか、無気力そうな喋り方をしていましたけど」
無表情なのは今も変わらないけど、選考会初日に会った時は、もっとやる気のなさそうな話し方をしていた覚えがある。無表情・無関心・無感情、この三拍子が揃ってこそのクロさんなのだ。
「……ああ。私って、基本的に朝とか寝起きはダルくてうまく喋れないのよね」
「低血圧なんですか!?」
何、そういう口調とかじゃなくて、単に血の巡りが悪かったんだ。何だこの人!?
「あと、他の人が同じこと喋ってると、口パクでも何とかなるって思わない?」
「思わないよ! 完全にダメ人間の思考だよ!」
「……っとと、新島さん動かないでください――テヤッ!」
「おぅふ!」
テンションが上ったせいで、真白さんがバランスを崩しかけていた。かかと落としが背中に決まる。
「……同級生にかかと落とし決められてる人に、ダメ人間って言われた……」
「いや、クロさん知ってますよね。俺が踏まれている理由……」
「――――そういうのをライフワークにしてる人なんでしょ?」
「違うよ! 月見式ヒーロー診断法だよ!」
カッコイイなあ、月見式ヒーロー診断方法って!
多分、ノリノリで先生も名前を付けたに違いない。
クロさん口元だけ動かして「冗談よ」と言った。
「知ってるわよ。そもそも、ましろんに診断法を教えたのは私なのだから」
「えぇー、なら、散々イジらないでくださいよ」
「ちなみに、私は“相手を舐める”ことでヒーローとしての適性を計るわ」
「…………」
と、ジト目のまま、舌をニョロっと口から出した。
無表情のまま、口だけ動かすのってやっぱり怖いな。なんだかヘビみたいだ。
「……ああ、だから。“星空のマンション”で会った際に、唐突に舐めてきたんですね」
「そういうこと」
いや、冷静に考えると、どうして舐めてきたのかの説明には全然なってないが、俺は突っ込まないことにした。
真白さんもそうであるが、人を診断するなら、その前に一言断って欲しい。
☆★☆★☆★☆★
「……ん、そろそろ時間ね」
会話の最中、クロさんはおもむろにそう呟いた。
時間を見るような素振りもせず、体内に時計でも持ってるような物言いであった。
「そう言えば、クロさんがこの時間にいらっしゃるの珍しいですね。
お仕事はもう終えられたんですか?」
「ううん、まだ予定はあるんだけど、今は休憩中。
あとは、ちょっとシステムの定期的なチェックをしようかな、って」
と、クロさんはソファーに座る。すると、途端にシステムが起動を開始し、彼女は流れるような手つきでスクリーンを操作しはじめた。
まるで、ゲームの最速動画でも見ているような速度で、クロさんはスクリーン上を操る。
「おぉ……」
思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
「――やっぱり凄いですよね、クロさん」
真白さんも同じ気持ちだったのか、共感するようなつぶやきが聞こえる。
「入学直後に才覚を現し、一年生の夏には学園を裏から操るトップとして君臨、この星空のマンションを始め、多くの拠点を作り、今では“学園の監視人”としての役割まで担っているんですから」
「……監視人?」
「はい、この学園は、無数の監視カメラや感知器により、変身装置の持ち出し・悪用を防ぐ仕組みが作られているんですが。その仕事の一部を、クロさんは任されているんです」
「へぇ~」
それはすごい。
監視カメラねぇ……。
これだけ巨大な学園に、生徒数の分だけ変身装置が置いてあるんだ。
そりゃあ、悪用する生徒が出ないための監視は当然されるべきだろう。
以前の俺ならば、一介の学生にそうした防犯対策をやらせるのは、どうかなと思ったかもしれない。だが、今は違う。クロさんの“凄まじさ”を実感している今ならば、そうした事情も納得がいった。
パソコンに熟達した人間は、キーボードを見ないでタイピングができると聞く。
ブラインドタッチというやつだ。
おそらくクロさんは文字通り、目隠しをされていようが、暗闇のなかだろうが、平然と、何十ものマシンを並列で操作してしまうのだろう。
「…………っと、そうだ」
ふと、クロさんの動きが止まり、首を垂らすようにコチラを向いてくる。
「新島くん、多分あと3分もすれば、その調整終わるよね?」
「はい? ……終わりかどうかは、真白さんに聞かないとわかりませんが……」
と、変わらずふみふみしている真白さんを見る。
俺の角度からだと、紺色の短パンと白いお腹しか見えないんだよな。
彼女は(何故か鼻歌まじりに)言葉を返した。
「あ、はい。あと3分で終わります。本当に丁度ですよ」
「なら、それ終わったら、ちょっと来てもらっていいかな?
新島くんに“アルバイト”をお願いしたんだけど」
「……アルバイトですか?」
なんだろう。正直、あんまりいい予感はしないんだが。
クロさんはそんな俺の反応を気にすることもなく、平然と話を続けた。
「うん、監視員のお手伝いのアルバイト」
「監視員?」
「ちなみに時給は1万円」
「一万円!?」
「変身ヒーローにしか頼めない仕事なんだけど、お願いできるかしら?」
「…………そんなことを言われたら、断れないんですけど」
お金もないしね!
以前、話したかもしれないが、我が家の財政状況は、戦時下の日本経済ばりにヤバイのである。
「いいですよ、ちょうどお金が欲しいと思ってましたし。なんでもやりますよ」
「ん?」
「で、それで何をすればいいんですか?」
「そうねぇ……ミッションの名前は――題して『スパイ大作戦』」
「スパイ大作戦」
今思い返せば――。
この出来事を境として。
俺の運命はまた、変な方向へと傾きはじめた気がする。
鴉屋クロから任されたミッションをこなした新島は、つかの間の平穏を得る。彼が手にしたアイテム、それが彼の運命を狂わせることとなる――。
「第57話:ヒーロー達の足蹴による休息」をお楽しみください。
掲載は4日以内を予定しています。