第47話:ヒーロー達の一次選考会(6)
新島宗太『HP:18/2000』 紅翔子『HP:410/2000』
砂の大地に横たわり、俺は紅先生の声を聞いていた。
「――新島さんご存知ですか? 『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する機体、汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンを覆っているあの装甲板は、すべて力を抑えるための『拘束具』なんだそうですよ」
紅先生の声が接近する。目が焼けるような黄金色の太陽。煌めきが映しだす黒色の影法師が、ゆっくりと、ゆっくりと、俺へと近づいてくる。
「――新島さんご存知ですか? 『仮面ライダーウィザード』は教育上の配慮から、拳で戦うことを封じ、刀剣と拳銃のみで戦闘を行なっているそうなんですよ」
紅先生の声が接近する。呼吸することもままならない灼熱の空気。燃焼の中で生まれる一陣の風を引き連れて、ゆっくりと、ゆっくりと、俺へと近づいてくる。
「――騙していた訳ではないのです。本気の力を出すのは、残りのライフが四分の一を切ったらと心に決めていたのです。――しかし、冷静に考えれば当然でしょう。どこの世界に、戦闘中に、わざわざサングラスをかけて長ランを着たままで、真剣ではなく竹刀で、戦うヒーローがいるというのですか?」
俺の正面に紅先生が到達する。
「邪魔な帽子も学ランもサングラスも、全部捨て去りました。今の私は自由です」
紅先生は大きく右腕を振りかぶる。
「やっぱり戦いは『拳』が一番です。これこそが戦いの本質です」
外さないように正確に狙いを定める。
「さあ、――――――――――始めましょう!」
紅先生の拳が振り下ろされる瞬間、横たわっていた俺は強化していた→《右腕》で一気に飛び出した。逃げると同時に左手で掴んでいた『砂』を紅先生の顔に投げつける。そのまま振り返ることなく撤退する。ヒーローらしくない戦い方だが、どうか許して欲しい。俺の残り体力は『18』しかないのだ。風に吹かれただけで消えてしまいそうな命だ。――それでも、俺は生き延びなくてはいけない。
(――――サングラスを外したのが仇になったな。砂の礫は、効くはずだ)
だが、紅先生にそんな小細工は通用しなかった。すぐにニヤリと笑う口元が視界に入る。
「――――紅流喧嘩殺法上級奥義。『大地震過剰』!」
声とともに――。
空振りに終わったはずの紅先生の右腕は、ずぅん、と音を立ててドリルのように隕石のように砂の大地に埋まる。平らなはずの地表は、右腕の圧力に負けて、紅先生を中心として、いきなり沈没を開始する。
「……う、おっ!」
「――――大車輪!」
瞬刻、沈んだ地面は回転を始める。まるで渦潮のように。まるで渦巻きのように。『砂の大地』は『砂の大海』に生まれ変わり、巨大なうねりを伴って一つの破滅的なサークルを完成させる。
まるで――、これでは『蟻地獄』だ。
地面を殴り飛ばして逃げ出したはずの俺は、着地した途端、罠にかかった昆虫のように、みるみる紅先生の方へと引き寄せられていく。足を動かすが無駄だ。砂が邪魔して前に進めない。周縁の砂地はすべて紅先生を中央に置いて循環している。この世界の大地は彼女のテリトリーと化した。
「ぶ、ブースト、全開っ――!」
叫びとともに逃走をはかる。地表がダメなら空中に。もたつく足をどうにか動かす。
懸命にあがき、地面を蹴り、ブーストの火力を最大にすることで、俺はようやく蟻地獄の脱出には成功する。
しかし、紅先生は俺の行動を予測していたかのように台詞を言い放つ。
「――ならば、紅流喧嘩殺法上級奥義。『シン・竜巻閃風』!」
紅先生は左腕を上空に掲げる。円を描くようにして回転させる。すると、竹刀を使用した時の数倍、数十倍、威力と膨大さを携えた――トルネードが、紅先生を特異点として発生する。
(…………くっ、あらゆるものが引き寄せられていく!)
空中は竜巻。
地表は蟻地獄。
世界は紅先生を中心に回っている。
蟻地獄の砂の流動と竜巻の強風の影響で、周囲のサボテンたちが次々と引きちぎられていく。引きちぎられたサボテンたちは、空を飛び、地面を引きずり、紅先生のいる深奥に飲み込まれている。
俺も人ごとではない。俺自身も強風の影響で引き寄せられていく。マズイ。これはよくない。よくない状況だ。今はブーストで耐えてるが、それも時間の問題だ。ブーストの燃料が尽きれば、俺もあの渦の中へ消えていく運命だ。
(…………んにしても、冗談、考える余裕もねーや、くそ)
どうにも心体とも疲れている。余裕がない。おそらくこれは俺の残り体力が原因なのだろう。『HP:18/2000』はリアルな俺の体力値と連動しているようであった。つまり、俺の体力は元気いっぱいの時の百分の一くらいなのだ。ったく、妙なところで凝りやがって。ゲームなら体力ゲージ減ってもそのままのコンディションで行かせてくれよ。
よく、健全な精神は健全な肉体に宿る、というが。今の俺は肉体的にも精神的にも不健全であった。
(……さーて、どうするべきか)
俺は精神の弱まりに負けないで事態の打開をはかろうと考えをめぐらせる。紅先生は本気を出すと口にしたが、その動きは非常に緩慢だ。まだ俺を試しているふしがある。生きるか死ぬかの『限界ギリギリ』の臨界点を見極めているようだ。俺を成長させるために。――あるいは俺をいたぶるために。
(……しかし、ここで留意するべきは紅先生の舐めプに『安心』することじゃない)
むしろ逆。
(…………紅先生の油断を、優しさを、甘さ、を利用して『努力』することだ。頑張ることだ。最善をつくすことだ)
紅先生は優秀な指導者だ。もしも俺が『安心している』挙動を見せれば、その時点で本気の攻撃をして消されてしまうだろう。ゲームオーバーだ。それは本意じゃない。
だから、俺は精一杯戦わなければいけない。精一杯生きなければいけない。結局のところ。いつだってそうだ。必死に懸命に全力で。俺は目の前の壁を超えていかなければならないのだ。
(さあ、――――――思考しろ。持てる知識をフル動員させろ。持てる技術をフル活用させろ。今の俺にできること。今の俺にしかできないこと。あるべき選択肢。あるべき可能性。しかるべき最高のパフォーマンスで――世界を塗り替えてみせろ)
よし。俺は気合を入れ直す。
俺はブーストを下方へと転換。まずは竜巻から逃げ切ろう。話はそれからだ。俺は砂漠の平地――まだ無事なエリア――を目指していく。その中で煌めく光の剣を発見する。よし、まだ残っていたのか。俺の生み出した光の剣。アレを使用して竜巻を破壊するのだ。先刻よりも強力だろうと関係ない。ヒーローエネルギーを媒介としている以上、あの剣に壊せないものはない。
ブーストを最大出力。どうにか目的地に到達せよ。
俺は竜巻の影響で前方から飛んでくるサボテンたちを次々と避ける。残り体力から考えて、一発でも食らったらアウトだ。しかも時間制限あり。まるで対戦格闘ゲームから、シューティングゲームにジャンルが変わってしまったみたいだ。
(――――『連射王』曰く、『ゲームの王道はRPGに有ります。ゲームの知略はパズルゲームに、ゲームの俊敏は格闘ゲームに、ゲームの速度はレースゲームに有ります。だが、ゲームの本質はシューティングゲームに有ります』とな)
俺は数ビットの隙間を切り抜ける自機のように、目標の光の剣を狙う。
光の剣は砂漠の平面上に、ほとんど垂直の状態で突き刺さっていた。
紅先生の蟻地獄の影響で、光の剣自身もゆっくりと中心に向かっている。
(まるで、アーサー王伝説のエクスカリバーみてーだな。おあつらえ向きとはこのことだ)
まさしく、変身名《限定救世主》の名に相応しい保存状態という訳だ。さしずめ俺の相対している紅先生は、光の剣を大量に飛ばしてくるところから考えるに、ヒィッツカラルドよりも英雄王の名前をあげたほうがいいだろう。
(だいぶ、俺の脳も余裕がでてきたな)
よーし、よ~~し、この調子だ。この感じだぜ。フザケたり伝わらない冗談を言いながらも、最後はカッチョ良く倒すのが俺の正しきスタイルなのだ。
俺は奇跡的にサボテンの大群を全て避けきって、そのまま地面へと突っ込む。
光の剣を右手で回収して、素早く反転する。蟻地獄の流れに乗ってゆっくりと進む。
前方には巨大な竜巻。ここからは見ることができないが、その中央部には紅先生が存在しているはずだ。一度倒したかと思えば復活するとは、本当にラスボスみたいな感じだ。
すると、次が本当に最終決戦か。
竜巻の中から、紅先生の声が聞こえる。
「――――剣をとりましたか。ならば、紅流喧嘩殺法上級奥義『シン・竜巻閃風』!」
宣言と共に、眼前の竜巻が蠢きはじめる。轟音を立てて、静止していたはずの竜巻が、俺に目掛けて接近してきた!
「なっ…………! く、防げる!」
両腕で光の剣を構える俺。今まで以上に不安定な大地をしっかりと踏みしめる。
しかし、残りライフは――『HP:18/2000』。極少量だ。
「新島さんの残りライフは僅かです。竜巻に触れたならアウト。サボテンに触れてもアウト。体力ゲージが自動消滅により。その時点で――――敗北決定です」
「――――――――!」
雷鳴のような衝撃!
俺は天啓を受けたような心地に陥りながら、目の前の竜巻に集中する。
(――――ど、どうするっ!? 触れたらアウトだ。突撃はマズイ。投擲するか? いや……!)
俺は光の剣を片手に持ち替える。構える。腰を落とし、腕を引き下げ、ゴムのようにぐぐぐっと捻らせる。
狙うべき放射角度、繰り出すべきタイミング、与えるべき力の総量、そうした必要不可欠な計算事項を、俺のヒーローエネルギーで強化した脳みそは、スーパーパソコンにように自動演算させる。
(紅先生の、要領でっ!)
俺は――ブーメランのように光の剣を投げ飛ばす!
光の剣の回転数そのものは紅先生に劣るが、その速度・威力は十分だ。光の剣は旋回しながら、竜巻に直撃――消滅、霧散、――クルクルクルクルと手元に戻ってくる。
よし、これで。
邪魔な砂やサボテンも存在しない。全て消え去った。
俺は思いっきり駆け出した。
竜巻で妨害されていた視界が一気に広がり、紅先生の姿を捉えることに成功する。まるで火山の奥底に潜むマグマのように、雄々しく、紅く、力強く、剛毅で豪胆な表情で、紅翔子先生は待ち構える。
「――――――素晴らしい、さあ、私に見せてください。貴方の可能性を――!」
「言われなくてもっ――!」
→《右脚》強化。青く光るボタン。強靭な右脚。俺は蹴りだす。右手には光の剣。
さあ、さあ、さあ、!
俺はどうする! これがゲームならば選択肢でも現れているところだ!
1.光の剣で斬りかかる
2.右腕を強化する
3.砂を手に取り投げつける
4.ブーストを全開にする
5.体力ゲージでガードする
6.超変身を行なう
7.紅先生の竹刀を探す
8.砂の煙幕をはる
9.諦める
(――――いいや、このどれでもない!)
無数の選択肢。無数の可能性。俺の世界はまだまだ広がっていく。俺はゲームなんかに負けはしない。
俺は紅先生の眼前に着地し、光の剣を、紅先生の頭上へと――投げつける!
「――――っな! 血迷いましたか!?」
光の剣は紅先生を外れ、一本の槍のようにグングンと何もない空間を進む。
紅先生は諦めたような目つきだ。拳を固める。俺に向ける。勝負の決着をつけるつもりだ。先刻の大技だ。俺の体力を一気に奪ったあの技だ。間違いない、そしてこの位置では決して逃げられない。
「――――さあ、終わりにしましょう」」
俺は両腕を大きく広げる。紅先生は腰を落として構える。
「――――――紅流喧嘩殺法上級奥義。『仏恥義―――!?」
だが、
だが、
それよりも早く。
「…………なっ!?」
それよりも一足お先に。紅先生の拳が俺の体幹を貫く前に。
「……俺の勝利です。紅先生」
俺の勝利は『決定的に』確定する。
俺は頭上を眺める。紅先生の残りライフを示す体力ゲージに――光の剣が深々と突き刺さっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「……な、な、まさか、そんな、方法が……!」
紅先生は珍しく狼狽したような声で、頭上を見上げる。
そこには否定することができないくらいに――破壊された『体力ゲージ』の姿が存在していた。
「――――――――斬撃、完了! ……この場合はちょっと違いますけどね」
あらゆる物理攻撃を無効化する体力ゲージ。
あらゆる戦闘条件の中でも邪魔にならない体力ゲージ。
その体力ゲージが――光の剣により徹底的に破壊されていた。
やがて、そのまま、体力ゲージは、『紅先生の発した竜巻のように』――消滅、霧散、――する。
同時に空からファンファーレが鳴り渡る。終末の鐘の音よりも美しく、俺の勝利を称える声が響き渡る。
「さてと、これで体力ゲージは消滅しました。ルールは確か、『先に相手の体力ゲージを自動消滅させた方の勝ち』…………でしたよね?」
俺の質問に呆然となる紅先生。
やがて、『すべてを理解した』ような顔で、言葉を返した。
「…………そ、そうですね。私は確かに試合前にそう言いました。しかし、こんな戦法をとってくるとは……」
そりゃそうだろう。俺自身もさっきまで思いつかなかったんだ。最終決戦で発せられた紅先生の台詞――、
《新島さんの残りライフは僅かです。竜巻に触れたならアウト。サボテンに触れてもアウト。体力ゲージが自動消滅により。その時点で――――敗北決定です》
あれのお陰で、俺は一つの勝利を導き出す『可能性』に行き当たった。まるで雷鳴を受けたような、天啓を得たような心地であった。
それと同時に、俺は紅先生が試験開始時に言った『決定的な』台詞を思い出した。
《あ、触れられるんだ……》
《はい、特殊なヒーローエネルギーを加工して作られており、私たちの受けたダメージを自動的に計算してくれます。『体力ゲージ』そのものに攻撃は効かないので、戦闘中も邪魔にはなりません》
「そう」
そうだ。まさしく。
「この『体力ゲージ』は――ヒーローエネルギーを加工して作られたものである」
そうだ。そしてヒーローエネルギーなら。そのエネルギーで作られているならば。
俺の変身名《限定救世主》の光の剣で――消滅させることが可能である。
俺の問いかけに――紅先生は頷き肯定する。
「……その通りです。そもそも、このゲーム世界は、ヒーローエネルギーを媒介として作られたものです」
なるほど。だからこそ、俺の光の剣は、『壊れることなく』砂漠の大地に垂直に突き刺さった状態を保つことができたんだ。
俺の変身名《限定救世主》は、ヒーローエネルギーのみを消滅させる剣だ。それ以外に対しては圧倒的に無力であり、脆い。
剣の落ちた場所が普通の砂漠の大地であったなら、最初に投げ捨てた時に、割れるか壊れているはずなんだ。しかし、そうはならなかった。
それだけじゃない。俺は紅先生の竜巻を何度も破壊したが、同時に、砂やサボテンたちまで消えさった。これは妙な話である。もしも、それらが特殊なエネルギーで加工でもされていない限り、俺は消し去ることが不可能なはずなのである。
この結果、導き出される答えは。
この世界は――ヒーローエネルギーでできている。
「……まあ、俺の戦法もとりわけ特殊というわけじゃないはずです。だって、ゲームのラスボスに、裏テクを使うのは常套手段でしょう?」
システムの裏をかく。俺はゲーマーじゃないからよく知らんが、ゲームのルールを熟知し、その網目を縫う戦法をとるのは、戦う上での必須条件のはずだ。
裏ワザやチートではない。
ゲームの性能を完璧に理解することは、その性能を超える策を編み出すことは、『本気でゲームに相対する』うえで必要な行為のはずだ。
倫理に触れるか触れないかの臨界点を探る。それは卑怯でもズルなんでもなく。
この上なく真摯なプレーに該当するはずである。
ならば、俺のこの方法は王道中の王道。正しきゲーム攻略――といえる訳だ。
「……まったく、詭弁もそこまで行くと清々しいですね……」
紅先生はショックだったのか、数刻の間、返事をせずに顔を伏せていた。しかし、ようやく――そう、はっきりと、応えた。
片手をあげて指をパチンと弾き、服装をいつもの格好――ジャージとメガネに変えた。腰元に変身ベルトが見える。変身を解除したのであった。
……ん、ってことは。もしかして……。
「――――なるほど、認めざるを得ませんね。若さゆえの過ちというもの」
「いえ、別に過ってはいませんよね」
「冗談です」
真面目な表情でそう言う。基本的に表情を変えないから冗談に聞こえないんだよな。
「正直、体力ゲージそのものを狙ってくるとは予想外でした。途中のガードの仕方もそうです。全く常識はずれという言うしかない」
…………あ、あれ、やっぱまずかったかな。
と、俺が困惑していると、紅先生は「――ただし、」と付け加えた。
「――ただし、それだけの自由な発想力、また実現させるだけの行動力、どちらも評価に値します。……全体的な能力も問題ないでしょう。私も少し大人気ありませんでした。――新島さんには、次の段階に進むだけの『資格』は十分にあると考えます」
お、
「…………ってことは」
「新島宗太さん『第一次選考会―――突破!』となります」
「い、」
い、
「いやったあああああぁぁぁぁあああああぁぁぁああああああああ!」
よしゃあ! よしゃあ! しゃあ、しゃあ!(何もない空間をパンチングしながら)
よしゃあ! よしゃあ! しゃあ、しゃあ!(無駄に空中に飛び跳ねながら)
「おめでとうございます。――二次選考会は、再来週の日曜日となります。期間が開きますので、今後も努力を怠らないよう頑張ってください」
「――はい、ありがとうございます!」
俺は大声でお礼を返す。何だかんだいって紅先生にはお世話になった。俺の力を最大限引き出すように――指導をしてくれた。本当に感謝してもしきれないくらいだ。
紅先生は俺の返答に戸惑ったのか、顔を再び伏せ、メガネを眉間に押し付けた。
紅先生のゲームデータの色相に朱色属性が付着された。
ふふん、やっぱりいい先生だ。
「それではログアウトを開始しましょう」
「――――はいっ!」
返事とともに俺の周囲の世界が崩壊を始める。
みると、前方にいたはずの紅先生の姿が消えている。
1フレーム後には、一瞬で変容を遂げる可能性のある世界。
せめて、終わりの過程を見せてくれるのは、製作者の良心によるものだろうか。
青空に、砂の大地に、眩しい太陽に、ヒビが入り、光が差し込む。
空間が裂け、俺の意識は、ゆっくりと、ゆっくりと、別の『何か』へと置換されていく。
光が偏在していく。俺は引き寄せられていく。
(――――さようなら、“天使の卵”)
確かな勝利を携えて、俺の意識は――帰還を果たした。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
一次選考を突破した新島宗太、次々と明らかになる合格者たち、そんな時一人の少女が新島の前に現れて――。
次回「第48:ヒーロー達の実験動物」(仮)をお楽しみください。
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