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世界は英雄戦士を求めている!?  作者: ケンコーホーシ
第4章 運命動乱編(前編)
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第41話:ヒーロー達の選考開始(後編)

 双子のワンマンショー(いや、ツーマンライブというべきか)の洗礼を受けてその場を立ち去った俺は、まだ朝だというのに既に少しだけ疲れた気持ちになっていた。昇降口をくぐり、内履きに履き替え、階段を登り、Sクラスの教室の前で美月と別れた。――さて、自分の教室を目指そう。


 Dクラスの教室の扉を開けると、あゆと葉山が出迎えてくれていた。


「ソウタ君おはよっ~!」

「おはよう、あゆ」


 あいさつと一緒に元気よく右手をあげてくるので、あゆに片手をあわせてハイタッチをする。パシィンと小気味良い音が鳴る。彼女の元気パワーを注入してもらったお陰か、俺の疲労感もどこかに霧散したようだ。着席すると、フフフといつも通り葉山の笑い顔が視界に入る。


「……ん?」


 視線を葉山の机に向けると、見覚えのある、むしろ数分前に見たばかりのプリントが堂々と広げられていた。


「あーこれは……」

「フフフ……その様子から察するにどうやら君も貰ったようだね。双子鴉からの贈り物を……」

「――双子鴉、ね」


 通り名の多いお二方であった。


 双子鴉とは、そう。ステージ上で騒いでいた彼女たち双子のことであった。鴉屋ミケと鴉屋クロ。元気そうなのが姉のミケで、暗そうなのが妹のクロだ。


 情報収集のスペシャリスト、

 情報操作のエキスパート、

 情報技術のプロフェッショナル。


 生徒会執行部の会計担当と書記担当。

 英雄戦士チーム選考会の司会担当と運営担当。


 所属は二年Bクラス。好きな食べ物は栗ようかん。


 元はCクラスの所属であったが、その実戦に対する行動力の高さから『スパイヒーロー』としての実力が見出され、現在ではBクラスに所属している。Sクラスに行くことも可能だったそうだが、彼女たち自身は締め付けのユルさからBクラスを選択したとのことだ。


 ちなみに余談だが二年Bクラスの担任の先生は、あのトレーニング広場の重鎮たる月見酒シロちゃん先生だ。


 暗躍がお得意らしく、生徒会役員以外にも、新聞部・放送部・写真部・etc...無数の団体を掛け持ちしている。情報屋と探偵の両方を兼ね備えており、学園内に幅広いパイプを持ち、学内のあらゆるイベントの影には彼女たちの存在があると噂されている。


 そうした彼女たちこそ、今の今まで水面下において「英雄戦士チーム選考会」の準備をしてきた立役者――であるそうであった。



 ……ちなみに、ここまで生徒会長の受け売りである。



 選考会出場を決めている生徒会長や副会長は、英雄戦士チームの選考会運営には直接的に関われない。いや、別に関わることは可能だろうが、あの二人はそれを『越権行為』にあたると考えている。フェアじゃない。少なくとも生徒会長はそう考えている。


 しかし、理事長と教師陣だけでイベントを進めるのも限界がある。生徒の力が必要となる。しかし、優秀な生徒はほとんどが選考会に参加する。そこで、高い能力を持ちつつも、選考会に出場しないような、物好きな生徒たちの協力が必要とされることとなった。


 そこで彼女たちが抜擢された、らしい。


 俺も生徒会に飾られた写真で見たくらいであったので、直接会った機会はなかった。


 謎の多い二人である。人前には滅多にすがたを見せず、こうしてイベントの時だけ突然現れるそうである。授業とかどうしてるんだよと突っ込みたくなるような存在たちである。



 ……ちなみに、ここまでは副会長の受け売りだ。



 まあ、彼女たちが選考会の準備を肩代わりしてくれたお陰で、生徒会長には俺の修行に付き合うだけの時間的な余裕ができた。そういう意味では二人は俺の恩人でもあった。




「……それにしてもこんなペラ紙広げて、何を見ようってんだ?」


 机の前に広げられたプリントには、広辞苑レベルの細かさで文字がビッシリときざまれていた。そのひとつひとつをすくい上げていけば、《新島宗太》とか《狗山涼子》と言った言葉が読み取れるが、一見しただけでは何がなんだか判らない。


 情報密度は凄まじさは伝わってくるが、まるで暗号のようである。

 とりあえずラインマーカーで自分の名前でも引いておくか?


「フフフ……紙に書かれた文字はオマケ……本命はコチラさ……」


 葉山は諭すような口調でそう言うと、ポケットから携帯電話を取り出す。

 手慣れたように操作をして、カメラ式の《読み込み機能》を起動させた。


「フフフ……」


 プリントを写すと、すぐさま自動的に読み込みを開始し、webページが画面に表示される。


 あー。なるほど、なるほど。


「自動的にサイトに飛べる仕様になってるのね」


 QRコード的なものか。この手の技術の発展は本当にめまぐるしいよな。


「フフ……どうやら参加選手の文字情報を分解しコード化することで、従来とは異なる全く新しいタイプの2次元コードを発明したみたいだね……」

「ん?」


 呪文みたいな言葉が飛び出してきて首をかしげる俺に、葉山は微笑む。


「どうやらかなり高度な技術が使われてるみたいだよ。それも特殊印刷などはまったくいらないただのコピー用紙の上にだ。しかも、僕の適当な携帯電話でも読み取れる異常なまでの汎用性の高さ。おそらく世紀の大発明……特許申請でもすれば、当分遊んで暮らせる額が稼げるんじゃないのかな……?」

「え、なに、なに、そのよくわからんけど、ドン引きする科学技術」


 意味は不明だけど、すごいことだけは伝わってきた。

 特に「世紀の大発明」や「当分遊んで暮らせる」の件あたりはよく伝わってきた。


「フフッ……彼女たちはヒーローであると同時に、元Cクラス所属の研究者でもあるからね……今回の選考会も……彼女たちの実験をかねたものであるらしいよ……」

「なにそれこわい」


 なんという公私混同。


「……彼女たちは情報技術のプロフェッショナルだからね……アルバイト感覚で世界的なハッカーを捕まえたりするらしい」

「俺の知ってるヒーローと違う……」


 世界観が違う。ドラマの中でしか見たことねえよ。そんなの。


 でも、まあ、そういう能力に特化したヒーローがいても悪くないと思うけどな。

 2018年現代。いろんなジャンルに特化した――専門性の高いヒーローがもてはやされる時代なのである。


「真面目に答えると『情報組織だけで構成された怪獣』が今後出現しないとは言い切れないからね……そうした目的もあるみたいだよ……」

「情報組織だけ?」

「例えばインターネットの回線上に出現する怪獣とかね……怪獣というのは僕たちの想像の上を飛び回るような存在だから……なにが起きても不思議じゃない」

「つまりは、グ○ッドマンみたいな感じだねー!」


 あゆがそこだけ元気よく答えた。どうやら話が難しかったのでついていけてなかったようだ。俺は頭を撫でてやることにする。ネット上に出現する怪獣ねぇ……。概念そのものが変容してて可能性としては低いと思うけどなあ……。偉い人はいろんなことを考えなきゃいけないから大変だ。


「ベービードンドン」

「ベービードンドン」


 さてと、閑話休題。

 話を戻そう。




「それ、で。サイトはどんな感じなんだろうな」


 俺も自分の携帯を使って読み込んでみた。……お、飛べた飛べた。


 どうやら電光掲示板に表示されていたものと内容自体は統一されているらしかった。

 試合の簡単なルール説明や、人気の選手のデータ一覧、賭ける際の倍率などが、巧みなレイアウト構造によって示されている。


「こんだけやって結局メインはギャンブルか……」


 才能の無駄遣いとは、こうしたことを指すのだろう。


「でも情報はそこそこ載ってるな」


 一年生の出場は全部で114名。全体の生徒数が180名ほどであったはずだから、6~7割の生徒が参加している計算になるだろう。名前と参加番号とクラス名と倍率。顔写真や変身名は非公開のようだ。つーか見ようとしたら追加料金を請求された。金の亡者か。


「フフ……注目すべきは《オッズ》だろうね。倍率が低ければ低いほど、前評判が高いということだ」

「……って、ことはつまり――」

「数字が低い人ほど、強いらしいってことかな?」


 あゆに先に答えられてしまった。ドヤ顔してる。なんだか悔しい。


「要するに競馬みたいなもんだろ? とりあえず見比べてみるか」


 競馬とかやったことないけど。というかできないけど。18歳からだっけか?

 俺は携帯の画面をスクロールさせながらじぃ~~と眺めていく。


 コレは一次選考を突破する選手を予想するためのものだろう。


 調べていくと、倍率はクラスごとに格差があることがわかった。

 おおまかに分けると、Sクラスの生徒の倍率は2~3倍くらい。Aクラスだと3~4倍くらい。B、Cクラスは5~6倍くらい。Dクラスは6~8倍くらいであった。


「あからさまに低いねー」あゆがガックリしたような口調でいう。

「くそーあの双子の先輩め……思いっきりDクラスをなめてるな」


 戦闘メインじゃないCクラスよりも、評価が低いってのはどういう事なんだよ。


「フフ……オッズはあくまで世間一般の評価だからね。僕たちのクラスへの客観的なイメージがこれくらい、ということさ」


 客観的なイメージ――ねぇ、こう数値化されて改めて見るとキツイものがあるなぁ……。

 美月などの他のクラスの話を聞く限り、Dクラス全体の実力はどうしても他クラスに劣るようであった。それは普段の実戦形式の授業における成果もそうであるし、座学における成績が優れているとは言えなかった。


(どうにかイメージを刷新してやりたいなぁ……)


 と、心の中で思ってしまうのであった。


 それこそ、《大番狂わせ(アップセット)》と《巨人殺しジャイアント・キリング》は弱者の特権である。


「それにしても――」


 基本的にオッズそのものは、開幕して間もないこともあり、クラス以外の要素による大幅な変動は少なかった。どの生徒のほぼ横並びで変わり映えしない。しかし、何事にも例外はある。有象無象の生徒たちの中でも、ひときわ目を引く生徒が存在していた。


「狗山涼子――1.05倍ね……」


 うわ~、うっわ~~~。


 一人だけほぼ勝ち確定かよ。1万円出してようやく500円玉が返ってくるくらいの儲けになる計算だ。他のSクラスの生徒ですら2~3倍だというのに彼女だけ明らかに頭が抜き出てる。チートだよ、チート。


「フフッ……そういう新島くんも高いんだよ――3.5倍だ。オッズだけで言えばAクラスと同じくらいだ」


 えっ? 葉山に指摘されて自分の名前を探してみる。

 あー本当だ。新島宗太、Dクラス所属、倍率:3.5倍。


「そうだな……俺もDクラスなのにな。生徒会長のとこで修行した情報が回ったのかな?」

「フフフ……死ねばいいのに」

「素で嫉妬されてるっ!?」


 ダークフォースでも操れるんじゃないかこいつって感じのオーラが轟々と背後から現出していた。


 ちなみに葉山の倍率を調べてみたところ、5.8倍であった。――うん、平均的だな。


 面白いのでいろいろ調べてみる。「川岸あゆ 6.2倍」「和泉イツキ 1.2倍」「君島優子 -10倍」


「マイナスポイント!?」


 どういうこと!?

 むしろ余計に金を払わされるの!? 何で!?


「フフフ……逆に考えるんだ、彼女が勝つのにお金を賭けるくらいだったら、むしろ賭け金なんてあげちゃってもいいさとね……」

「いや、嫌だよ」


 あと地味に「美月瑞希 2.4倍」であった。美月に負けた……。


「美月、普通につえーじゃないか」

「もしかしてそのうちトーナメントで戦うことになるかもねっ!」

「やめろ、なんだか伏線になりそうだ」


 前評判だけ考えれば、あり得ない話ではなかった。

 結局、アイツの変身してる姿は、トレーニング広場で何回か見かけたくらいだが、狗山さんと共に怪獣を瞬殺していた。真の敵は身内にいたのだ、とかにならないよう気をつけておこう……。


「他に一年生で目立つのは……」


 適当に倍率の低そうなやつらをピックアップしてみることにする。

 あゆと葉山もそれに乗っかってくれる。


「お、こいつも高いぞ。1.5倍だって――」

「ソウタ君、すごいよ。このひとCクラスなのに1.8倍だ!」

「フフフ……Sクラスのこの人も高いね……1.2倍だ……」

「こっちにもいるぞー、ナンバー84!」

「ああ、もうあゆ、ノート貸してくれノート!」

「よし、きた!」


 調査開始であった。


 そうこうしているうちに、何だか調べるのが楽しくなってきてしまって、こういう高校生が集団でどうでもいいことをチェックしてくうちにテンションが高くなって、なんだかワクワクして調べだしてしまうパターンが発生して、そして、そうして……。



 1年Aクラス No.026 神山かみやまじん  1.5倍  1年Aクラス No.078 高柳たかやなぎじょう 1.6倍

 1年Aクラス No.014 君波きみは紀美きみ 1.8倍  1年Aクラス No.048 山車やまぐるま雄牛おうし 1.8倍

 1年Bクラス No.030 青樹あおき大空おおぞら 1.8倍  1年Bクラス No.031 赤井あかい大地だいち 1.7倍

 1年Cクラス No.107 人型ひとかたしき  1.6倍  1年Cクラス No.009 真堂まどう真白ましろ 1.8倍

 1年Sクラス No.006 猿飛さるとびもも  1.3倍  1年Sクラス No.008 猫谷ねこたに猫美ねこみ 1.2倍



「お、おお……!」

「い、いっぱい出たねぇ……!」


 な、なんだこれ……。なんだこの強い人一覧表みたいなの。

 収集がつかなくなって気づいたらとんでもないことになってしまった。


「え、え? 畳むことできるのかこれ……?」

「畳む?」

「い、いや……なんでもない」


 衝撃的すぎて変なことを考えてしまった。


 もちろん今後、俺がこいつらと激突するかは判らない。そんなのは未来予知でもしないかぎり不可能だろう。しかし、前評判から考えても、最終選考でぶつかる可能性は非常に高いはずだ。名前くらいは記憶の片隅に入れておいて損はないだろう。何事も備えることは大切だしな。


「お、こいつすげー。1年Sクラス 城ヶ崎(じょうがさき)正義せいぎ 1.08倍。」

「このひと噂で聞いたことあるよー! Sクラスで超絶人気の人らしいよー!」


 そうだ。こういう強い人は山ほどいることだろう。世界はまだまだ広いんだ。

 Sクラスだって狗山さんだけのクラスではないのだ。油断ならない相手は大勢いる。


「フフフ……しかし、あくまでこれは前評判だ。いつの世の中にだってダークホースは存在する」


 まったくだ。願わくば、俺がその立場につけると嬉しいが。


「とにかくまずは一次選考。これを突破しなきゃいけないな」


 大事を前にして小事をおろそかにしてはいけない。

 敗北はいつだって油断と怠慢の影に隠れているんだから。


 俺がそう独りごちると、二人は笑うことなく、静かに頷いてくれた。


 いい、やつらだなぁ……。しみじみと思う。


(さあて、強い奴とぶつかるのはまだまだ先だ。まずは放課後、集中、集中!)


 電極先生が教室にやってきてHRがはじまる。授業もしっかり受けよう。そうしよう。


 放課後に向けて、俺は気合を高めるのであった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆




「気合いイッパァァァーッツ!」


 放課後、葉山とあゆの声援を背に、俺はワープロで戦うヒーローくらい自信マンマンの状態で、一次選考の舞台となる特別訓練室へと踏み込んでいった。


 入室を決めると、すでにそこには四人の生徒が存在していた。

 すると、彼ら、彼女ら、は、名乗りをあげてきた。


「やぁ、御機嫌よう。俺の名前は城ヶ崎(じょうがさき)正義せいぎだ。所属はSクラス。変身名は……《輝き(シャイニング)》と命名している」


「…………」


「は、初めまして……。Cクラスの真堂まどう真白ましろと言います。変身名は《魔導医者マッド・ドクター》ですっ」


「…………」


「こんにちは! Aクラスの君波きみは紀美きみです。変身名は《不可侵領域クリーン・ストーリー》。よろしくねっ!」


「…………さ」

「さ?」


 さ、さっそく出やがったぁ――――――!?

 言ったそばから! 言ったそばからだよっ!

 いきなり調べたばっかの強いやつら勢ぞろいしてんじゃねぇか!? 誰だよ「きっと、最終選考で当たるだろう……(キリッ)」とか言ってたやつは!?


「俺だよ!」

「え、ええと、だ、大丈夫……?」


 君波さんと名乗った女性に心配されてしまった。申し訳ない。

 そして、残りの一人は……。


「こんにちは、僕の名前は清水隼人、クラスでは『ハヤブサ君』って呼ばれてるよ」

「いや、お前は新キャラ感覚で挨拶してこなくていいから」


 ハヤブサ君だった。なんだろう。彼には要所要所大事な場面で出会う気がする……。


 ともかく、とにかく――。


 1年Sクラス城ヶ崎正義。1年Cクラス真堂真白。1年Aクラス君波紀美。1年Dクラス清水隼人。


 そしてこの俺、1年Dクラスの新島宗太。


 この計五名が《特殊訓練室》に集められていた。


 初見のお三方の外見をちょろっと観察しておこう。


 城ヶ崎さんは背の高いイケメンのお兄さん。落ち着いた雰囲気を醸しだしており、年上の先輩と言われればそのまま信じてしまいそうだ。真堂さんは正反対に背の小さい女の子。緊張しているのか少しだけ肩を震わせている。君波紀美さんは二人の間をとったような明るそうな女子高生。髪を茶色く染めており、人見知りしなさそうなご様子であった。


 ハヤブサ君は……まあ、眼鏡をかけている男の子だ。あ、あと髪が黒いのと……あと眼鏡をかけている男の子だ。


「なんだか、すごい失礼なこと思われたような……」

「気のせい気のせい」


 訓練室は名前の割に広さは普通の教室ほどであった。特徴といえば水色のベンチがある以外、何も物が置かれていないこと。壁も天井も床も、全て真っ白に塗りつぶされているところだろうか。おかげで目がチカチカする。精神と時の○屋に迷い込んでしまったようだ。


「あんまり、大きくないな……ここで試験をするのか?」

「こ、ここは待合室で隣りに試験室があるみたいです……」と、真堂さん。


 彼女の指摘通り、室内には俺が入ってきた以外にも、ドアが備え付けられていた。なるほど、あっちで試験を行うということだな。


 時計を見ると『16:40』を指している。

 試験開始が17時ジャストのはずだから、もう少し待つ感じか。



 事実、それから他の生徒たちも何人か入室をしてきた。室内にだいたい10名ほどの生徒が集められたことになる。


 それから、またちょっと待つことになる。


 やがて、時刻が17時に差し迫る直前――閉ざされたもう一方のドアが開放される。


 ドアからは一人の女性が姿を現れた。


 着慣れた真っ赤なジャージ。

 理知的な眼鏡。

 スタイルは良く、締め付けのゆるいジャージ姿故に、その曲線が強調される。



「――さて、全員揃っているようですね」



 くれない翔子しょうこ先生は、俺たちを見回して言葉を告げた。


「それでは、英雄戦士チーム第一次選考を始めたいと思います」


 紅先生は、もう一度、俺たちを見回して、言葉を続ける。


「栄えある初日の選考です。全力をしていきましょう。項目テーマは『教師面談』です」


 眼鏡を指で軽く上げる。


「これから皆さんには――『あるゲーム』を行なっていただきます」


 室内に緊張が走る。空気がピン、と張り詰めるのを感じる。


「ちなみに、ただのゲームじゃありませんよ」


 紅先生は、人差し指を立てる。


「短い時間ですが、皆さんには、仮想現実空間バーチャル・リアリティ・スペースへと飛んで貰います」


 室内に再び戦慄が走る。


「ば、仮想現実バーチャル・リアリティ……っ!」


「そうです。仮想現実空間バーチャル・リアリティ・スペースでのゲーム……言ってしまえば、VRゲームですよ」


 修業の時間は終わりだ。

 世界は変わる。運命は変わる。戦いは変わる。


 どうやら、俺たちのヒーロー世界は、新たな段階ステージへと到達したようであった。


「さあ、一次選考ステップその1:世界の変容を受け入れよう――皆さん、それぞれ頑張ってくださいね」


 気合を込めた瞳で前を見据える。

 さあ、一次選考の始まりだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。新キャラ大量放出。ついでにVR要素まで絡んできました。情報量が多すぎた場合は申し訳ございません。

次話「ヒーロー達の一次選考」(仮)をお楽しみください。ようやく一次選考です。

次話の掲載は4日以内には行う予定です。

それでは次話もよろしくお願いします。

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