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世界は英雄戦士を求めている!?  作者: ケンコーホーシ
最終章 英雄戦士と七人のヒーロー編
156/169

第132話:彼女にとっての決勝戦 PART2

 廃墟の街は怪物色。

 暴虐の限りを尽くして、人類を破滅に染める。


 ――――はずだった。


「怪獣ジャバウォックの場所ね……今から探知するからちょっと待ってね」


 辺りに眠るのは、怪獣バンダースナッチの骸達。

 その数70体程。

 空間の狭間に跳ばされて、大地にその身を貫かれている。


「えーっと……ここから1.3メートル先。南西の方角。

 そこに怪獣の親玉はいるわ」

「私の家の近くだ!」

「こっから潰すこともできるけど、どうする?」

「それでは一面野原だ――――行くぞ、美月、君島」

「了解!」


 私は終焉崎さんに掴まる。

 同時に、爆発音。

 絶命したバンダースナッチ達が破裂する音。


「敵わずとも挑むとは、愚かしい」


 ヒーロー。

 破滅を書き換えるには、強すぎる光。


(お願い……間に合って!)


 ――――そう思う間もなく、

 私の眼前にあったのは実家だった。 


 ワープ。

 したのだ。

 終焉崎さんの力で。


「いたわよ」


 君島さんが、平然と放つ。

 確かにいた。


「怪獣ジャバウォック……」


 あいつは丁度私の家の二つ奥の道路の所で電柱をへし折っていた。

 何が楽しいのだろう。

 怒りに似た疑問が生じる。


 だが。


「お願い! 君島さん、終焉崎さん、1分間だけ時間を稼いでっ!」

「……いえ、別にいいけれど、一分もあれば倒しちゃうわよ。あんなの」

「別にアレを倒してしまっても構わないのだろう?」


「いいけど! できれば倒さないで!」


 私は少しだけワガママを言った。


「あの化け物は――――私が直々に始末をつける」


 そして私は実家に入るのだ。



 ----------THE WORLD SEEKS THE BEST OF HERO----------



「お母さんっ!」


 私は書斎で物凄い勢いで書き物をしている母親に近づいて大声で怒鳴った。


 怒鳴った。

 強く。

 強く。


「……? 瑞樹ちゃん? おかえり~」


 美月月美みつきつきみ

 執筆名《夢負い人ビューティフル・オルター》で活躍中の"小説家"だ。

 そして私のお母さん。


「夕飯はちょっと待ってね、後1ページだから」

「お母さん! 怪獣! 外見て外!」

「? 怪獣? 瑞樹ちゃんも意外と子供っぽい所あるのね。あんなのを怖がって」


 いやいやいや。

 今私たちの家のすぐそこに迫ってるから!

 結末通りだとお母さんこの後殺されかけちゃうから!


 私はどーにかこーにか説得して避難するようお願いすると、

 お母さんは「あらあら」と耳栓代わりのヘッドホンをようやく外してくれた。


「ちょっと待ってね瑞樹ちゃん。今データを保存するから……」

「いや、そんなこといいから早く逃げて!」


 家が壊れるかもしれないんだから!


「それは大変ね。原稿のデータをHDに移さなくちゃ。えーっと外付け外付け……」

「ああもう、終焉崎っ!」


「――――呼んだか?」


 もうどうしようもなくなった私は"仲間"に頼った。


「お母さんを私の学校まで送って」

「承知した」

「ああー、瑞樹ちゃん、原稿がぁ~」

「あとパソコンごと!」


「人使いの荒い家族だ。――――掴まっててください」

「あら瞬間移動? 懐かしいわね。お母さん昔はアルフレッド・ベスターとかもちゃんと読んでててね……」


 送り届けた。


「ふぅ……」


 終焉崎さんを最初に呼んでおいてよかった。


 私は満足し、


「次はそーちゃんだ」


 家を出る。



 ----------THE WORLD SEEKS THE BEST OF HERO----------



 外にでるとバンダースナッチの大群が倒れていた。


「遅かったから倒しといたわよ」

「ジャバウォックは!?」

「倒してないけど、一応動きは止めてるわ」


 と、怪獣ジャバウォックが"ワープする度に"、

 君島さんが次の瞬間にはジャバウォックを拘束していた。


「必死に瞬間移動してるわよ。

 けど、せいぜい500メートルくらいが限度。

 馬鹿ね。それくらいの範囲なら、私は瞬間より速く動けるのに」


「…………」


 圧勝。

 圧倒的勝利であった。


 私が手を下すまでもない。

 私たちは最強で無敵だった。


(どうして……うまく行かなかったんだろう)


 あの時は、どうして悲劇を起こしてしまったのだろう。

 私たちは、こんなにも強いのに。


 世界には脅威なんて存在しないのに。


(……いや)


 答えは出ている。

 あの時の私にできなくて、

 今の私にできること。


 それは、単純なループを繰り返しただけでは辿り着くのが困難であっただろう。

 たった一つの最適解。


(まあ、言語化するつもりはないけど)


 終焉崎さんが私のお母さんを避難所に送り届けて帰ってくる。

 君島さんは私に問いかける。


「どうするの? 美月」


 答えは決まってる。



 ----------THE WORLD SEEKS THE BEST OF HERO----------



 私は、暗黒の闇を切り裂く、一陣の光となった。


 あらゆる現象の魂を取り込む英雄戦士ベスト・オブ・ヒーローとして、空を駆けた。


「そーちゃん」


 彼の隣に立ち、

 私はお願いする。


「私のために、いて欲しい」


 私はその時の出来事を忘れることはないだろう。私のその後の運命を決定する瞬間だったのだから。


 この私、美月瑞樹みつきみずきは、生まれて初めて――自分の幼馴染を自ら求めたのだった。



 ----------THE WORLD SEEKS THE BEST OF HERO----------



 私にはどうにもならないことがある。

 多分、私だけじゃなく、他の人も、皆……。

 どうあがいても、どうにもならないことがある。


 例え最強でも。

 無敵だって思えても。


 どうにもならないことはある。


 でも、

 それでも、


 私は諦めたくない。

 駄目だからって、おちゃらけて見せて、

 諦めの中に滞留したくない。


 例え妄想の中であっても、私は――――。


(そーちゃんはどうしたんだろう)


 薄れていく意識。

 第三領域の終わりを確信しながら私は最後にそんなことを思った。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次回も宜しくお願い致します。

掲載は1~2週間後程を予定しています。

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