第102話:ヒーロー達の一回戦/Aブロック 2
誰もがその逆転劇に驚いた。
会場は完全に静まり返っている。
DクラスがSクラスを打倒する。弱い者が強い者を圧倒する。
そんな誰もが夢を見るが結局は夢物語だと諦める幻想が、現実のものとなり自分たちの前に現れた。
人間は想定外の事態に出会うと反応に窮する。会場が沈黙という選択を取ったのも必然と言えるだろう。
「…………」
「…………」
「…………」
だが、静寂の中に、手を叩く音が聞こえた。
パチパチと。
あゆだった。
川岸あゆだった。
次いで、葉山、雄牛さん、他のヒーローたちも徐々に手をたたき始めた。
「…………!」
「…………!!」
「…………!!!」
夢から醒めるのと同じで、観客たちは徐々に目の前の現象が本物だと認識し始めた。
すると、拍手の数は次第に鼠算式に増大していった。
「…………!!!!」
「…………!!!!!」
「…………!!!!!!」
やがて、拍手は万雷となり、騒ぐ声は――歓声に変わり、
「うぉぉぉぉぉぉおおおぉおぉぉおおぉおぉぉおぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉおぉぉ――――ッッッ!!」
気づけば――誰もかもが俺に力強い声援を送っていた。
その声援をすべて大切に受け止める。心で、全身で、魂で噛み締める。
少し遅れて実況アナウンスが到着する。
「うぉっ……、うぉぉぉぉおぉぉおぉぉおおお……っ!? な、何というコトでしょう!? 圧倒ッ!! 新島宗太選手、圧倒的な力を見せつけて城ヶ崎選手を撃破しました!!」
場内はすでに快哉の嵐。
俺は拳を高らかにあげて拍手に応えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「解説のクロちゃんさん、まさかの展開になりましたねっ!」
「クロちゃんさん言うな。……まあ、新島君の実力を考えれば、あり得ないことではないわ」
「試合前と言ってることが違うっ!?」
「城ヶ崎正義の才能は確かに他の追随を許さないけれど、新島君もその才能に負けない程の鍛錬を積んでいる。私は、新島君が勝つと思っていたわ」
「う、うわぁ……あれだけ城ヶ崎さん推しだったのに、急に違うこと言い始めたよ……、手のひら返しパないっすねクロちゃんさん……」
「……私はあくまで『下馬評では』と断ったはずよ。確かに総合的な身体能力や戦闘能力、咄嗟の判断力や戦略の入念さ、ヒーローエネルギーの操作性能の巧拙に関しても、城ヶ崎は新島君を上回っていたわ。
少なくとも“一週間前”の時点ならね」
「一週間前? 二次試験の時ですか?」
「そう、二次試験終了時。そこから新島宗太の変革は始まった。今の彼は昔の彼と違う。彼と対等にやり合うには、子猫とじゃれあうのではなくて、老練なライオンと向かい合う覚悟が必要だわ」
「はぁ、ライオンですか。デンジャーですね」
「城ヶ崎はその辺りを理解しなければいけない。そうでなきゃ、彼はわけも分からず倒されたまま、敗北してしまう。……もっとも、今から彼が立ち上がることのできたらの話だけど」
「なるほどなるほど……――さあ~~ってっっ!! 波乱の幕開けとなった、一回戦!! 城ヶ崎は勝者の栄冠を取り戻せるのかッ!? それとも新島がこのままぶっちぎりで勝利するのかッ!? 新島宗太VS城ヶ崎正義、ますます見逃せない試合運びとなってきましたッッ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あんなこと言われてるけど、いいのか?」
「…………」
俺の言葉に城ヶ崎は沈黙。
まあ、答えられないようにしたのは俺なんだけど。
城ヶ崎は地中に埋まっていた。
原因は俺の拳。
君島優子の変身名《戦闘美少女》の力を借りた必殺技のせい。
最後のトドメのつもりで決めた攻撃だったのだが、
(しまった……地中にいるんじゃ気絶してるのか分からない)
使い慣れない力は思わぬ被害を生むと実感した。
大穴は深さ2~3メートルと推測できるが、何の反応が返ってくる気配もない。
(……うーん、うめき声の一つもあげないし、まさかの大勝利かな、これは?)
もっと苦戦すると覚悟してきたが、杞憂だったか?
俺は――もう『勝利宣言』をするべきか迷う。
この選考会の勝利条件は、『相手が気絶する』or『変身体が解除される』の2つだ。
城ヶ崎の意識は分からない。
だが、今の状況を鑑みれば、俺の勝利は明白であり、今のうちに勝利宣言を発するのは、城ヶ崎の動きをこうして待つよりも、賢い選択かもしれない。
(もし、仮に城ヶ崎の気絶が“振り”だとしても、俺が勝利宣言をすれば奴も無反応ではいられないはず)
「……」
一時の思案/決断。
「なぁ、この勝負、俺が――」
そして、決断。
勝利宣言。
だが、その瞬間、撃鉄を落とした、重い音が放たれる。
城ヶ崎の――大穴から。
(やっぱ寝たふりか! 無駄だっ!)
俺は速攻で振り向き対処する。
「……――ふんッ!」
振り向きざま右手を光らせる。
その手中には光の力。
高速で動く俺に呼応するように“光の剣”が出現する。
「変身名《限定救世主》、種類『英雄戦士』」
光の剣。
強く強く強く握り締め。
「世界を超えろ。強さを超えろ。超克しろ!」
一刀両断しすべてを終える。
ぐわんと何かが吸い込まれる音。
《英雄戦士》の名を借りた力。
発動と同時に爆撃を霧散する。
迫る攻撃が、破壊という結果を生む前に、消滅される。
いや、正確には“吸収”するか。
(ただどうせ、俺自身に吸収能力はないけれど)
それでも、消し去ることはできる。
城ヶ崎との試合中に何度も何度も“隠れて”実行したように。
俺はヒーローエネルギーを消滅できる。
「奇襲は失敗だ! 諦めろ、城ヶ崎っ!」
消し去った俺は隠していた剣を『あえて』見せびらかすように大げさに振るう。
これは彼へのサービスの意味もあるが、正しい狙いは城ヶ崎の心をへし折ることにある。
(あがいても無駄だと。すべてはこの光の剣が消し去ると、伝えるためにある)
訓戒と勧告と説得の意味を込めた顕現である。
(もしも、城ヶ崎が己の天才性に寄り添った『才能だけの男』ならば、俺の光の剣に屈服して攻撃を諦めるはずだ。だが、もし、彼が才能プラス何かのある、本物の勇気ある戦士ならば――――)
俺は意図的に振り抜いた剣を戻す速度を緩め、ほんの僅かであるが、城ヶ崎に降参を考えさせる猶予を与える。
「……」/「……ふふっ」
だが。
だが、城ヶ崎の口から漏れたのは――“笑い”であった。
(!)
それも、ただの笑いとは違う。
敗北を認めた諦めの笑いではない。
計略を仕掛けて成功した笑みでもない。
もっと、深く根深く、深淵の底に眠る、まるで“狂気”の香り漂う笑みであった。
(……っ!)
一歩引く。
嫌な予感。嫌な予感。嫌な予感。
諦めでもなければ、勝利を確信している感じでもない。
本当なら、このまま城ヶ崎のいる穴に特攻を仕掛けるところなんだが、
(やばい、何かが、やばい)
進む脚を踏みとどめ、俺は一歩後ろに引く。
そして、その選択は――幸運だったと俺は後に実感することになる。
「変身名《輝き》……」
引く途中で声が聞える。
大穴から高らかに聞こえる。
「俺の、“俺自身”の輝きをっ――認識しろッ!!」
瞬間、
大穴が光り輝き――――大爆発した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
(……自爆っ!? 道連れ!?)
その爆発は大穴を中心に周囲の地盤ごと吹き飛ばした。
近距離にいた俺は崩れ落ちる地面と襲い来る爆風に対処すべく右脚を強化した。
蹴る!
飛ぶ!
俺はブーストを点火させてそのまま浮上、
飛び交う砂塵に耐えて距離を開けてずさぁぁぁと闘技場に降り立つ。
「……うわぁ」
城ヶ崎のいた周囲は地雷原の密集地であったかのように地盤ごとめくれ上がっていた。
惨憺たる状況。
心臓がバクバクいってる。
あの穴に近づいたままだったら……。
爆発自体は光の剣で防げたかもしれない。
だが、爆発に伴う土砂は?爆発の熱は?爆心地は穴の中だ。直接の爆発は防ぎようがない。
(そう思うと、超怖ぇぇな……)
城ヶ崎は最期に逆転を狙うべく、あの一撃を込めたのか。
俺は爆発した荒れ地を眺める。
「……これが、奴の最後の隠し球か、驚いたな……」
そう呟く俺、開かれる視界の中で、城ヶ崎の姿を探す。
だがいない。
違和感を覚えて、五感を強化する。
いない。
城ヶ崎がいない――っ!
同時に声が聞える。
振り向き、構える。
「――まだ、勝負は終わっていないっ!」
俺は振り向き、構えた。それと同時に、視界に収めた。
城ヶ崎の姿を。
光り輝く城ヶ崎の姿を。
超変身を終えた城ヶ崎の姿を。
「変身名《輝き》、超変身、完了」
彼は何もない空中に両足で立っていた。
「――空気を大地に“誤認”させた」
◇◆◇◆◇◆◇◆
空中に立つ城ヶ崎を見つめ俺は既に無数の思考を走らせていたが、それと並行して軽口を交わすことにした。
「城ヶ崎さん、生きていたんだな」
「ふふっ、文字通り死に体だけどね。どうにか肉体を無事だと“誤認”させることで保っているよ」
――“誤認”。
初めて聞く言葉だ。
おそらくそれは世界に干渉できるタイプのヒーローに分類される城ヶ崎さんが新たに目覚めた力だろう。
少なくとも一週間前までのデータベースではselectされない。
俺は平然を保ちながら類似する能力がないか情報を集めながら会話を続ける。
「確かに、見た感じ光って誤魔化しているけどあちこち損傷があるな。ヒーローエネルギーの総量も減ってきてる。あとひと押しってところか」
「その通り。今の俺は非常にピンチだ。城ヶ崎正義、史上最大のピンチだと言っていい」
城ヶ崎さんは空中に立ったまま肩をすくめ「ははは」と笑う。
余裕さ。
先刻まで戦っていた城ヶ崎さんとはベクトルの異なる余裕さを感じる。
それは何か?
油断や驕りによる余裕ではなく、力を使うべき時に使うという『見極め』のできた“余裕さ”だ。
一流の武道家や剣術家が最低限の闘気で相手を倒すように、
今の城ヶ崎さんは必要以外の状況では力を使わないコントロールができているのだ。
「これは本当に俺にとってのとっておき中のとっておきだ。何しろ十分な力の制御がわかってないんだからね。だから、こうして気持ちを休めて、現在進行形で力の使い方の練習をしなきゃいけない」
城ヶ崎さんの言葉を聞きながら、俺はようやく――並行処理していた頭の中から――城ヶ崎さんの能力に類似する能力を発見する。
思えば単純だ。
(狗山涼子)
狗山涼子。
絶対に駆ける後脚。
空中を自在に走る能力。
それはつまり、自律変身ヒーローの一角。
終焉崎円。変身名《世紀末覇者》の能力の受け継ぎだ。
「そいつは……」
言葉を失い。
「中々に上等な能力じゃねぇか……」
挑発的に、前を見据える。
Sクラス、才能のヒーロー、城ヶ崎正義。
その力に対抗すべく、俺も――とっておきの秘策を使うことに決める。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、俺には残された時間も少ない。的確に使用し、確実に君を倒さなきゃいけない」
俺は城ヶ崎と立ち向かいながら彼の能力《輝き》について考えていた。
(城ヶ崎の能力はそれほどバラエティに富んでいるわけじゃない)
①○○を認識しろ:他人に攻撃を見えなくして爆発やエネルギーの刃を当てる能力だ。この“見えなくして”ってのがネックだが、要するに宣言前に口を塞げば問題ない。爆発自体も光の剣で防げば問題ない。
②○○を誤認しろ:これはさっき初出の攻撃だ。見たところ世界そのものを改変している印象を受ける。究極、『城ヶ崎の宣言通りに世界が動く』って寸法だ。だが、あまりに強大すぎる力だし、どこかしらに制限や攻撃範囲があるはずだ。
(つまり、俺がすべきことは、②城ヶ崎の誤認攻撃の制限範囲を見極めて、その間隙を突いて“切り札”を使うことにある)
まあ、それに失敗しても、君島さんの能力《戦闘美少女》の力を使えばゴリ押しもできるが、一度城ヶ崎に見せているし、何かしらの対策を立てられている可能性はある。
「いろいろ考えてるようだね。新島君、ご苦労様、って言いたいところだ」
「……俺はもとがショボイヒーローだからさ。ない知恵絞って考えぬかなきゃいけないんだよ」
「ふうん、俺の攻撃パターンを熟知してる人間の台詞とは思えないな。自分を弱者に置くのは、自分を悪と名乗るのと同じだよ」
言葉を交わしつつも俺は走りだす。
一方の城ヶ崎も岩の上を飛び移るように何もない空中を跳び回る。
「――――新島君、この一週間君が何をしてきたのか、俺は知らない。だが、君島さんや美月さんの能力を使っていることから、それは『並大抵のことでない』ってのは何となく分かる」
「…………」
「だから君は強い。元は知らないが今は間違いなく強い。その強さを謙遜で覆い隠して欲しくない」
「俺は嬉しんだ。こんな危機的状況なのに、正直心は踊っている。俺は、前から、こんな生死を賭けたような、全霊の戦いに投じてみたかった――――」
なら、一生踊り続けろ。
俺は大地を蹴りあげブーストを加速させる。
元は俺の変身体のベースとなった美月の能力。
その力を存分に発揮して俺は空中の城ヶ崎さんに立ち向かう。
「ははっ、久々に見た。空を飛び、加速するか。面白いが、空を舞うだけでは、空を大地とする者を相手取るには不十分だッッッ!」
ブーストで加速する俺。
対する城ヶ崎さんは――空中で、両足を力強く踏み締め、拳を握り締め、
「空中で立ち上がれる利点! それは、空中なのに両足で『力強く踏み込める』ことだっ!」
空気を割りぶち抜いた。
対する俺はブーストを遮断し、一気に落下する。
「おぉ!」
強烈な拳が頭上をかすめる。
落下するタイミングで再度着火。
もう一度ブーストを加速し、迫真する。
「おぉ! 戦闘機みたいだなっ!」
素直に感心する城ヶ崎さん。
早く攻撃をしろ。
俺はそう思いながら空中を複雑な軌道で舞う。
「フェイントを増やして狙いをそらすか。ならば、単純なことだ。炎よ――――」
俺は五感を強化する。
城ヶ崎が何をするか。
これからする行為を見逃さずに観察する。
「その方向を“誤認”しろっ!」
途端、俺の背中のブーストが、まるで己の意志を持ったように動いた。
空中を一回転しようとした瞬間、ブーストの方向が変わる。
城ヶ崎から離れようとした力が、城ヶ崎に近づく方向へ。
「うぉ……っ!」
「うわわ……」
暴走した俺の身体はそのまま――城ヶ崎に突っ込む。
驚く俺。
対する城ヶ崎も驚愕の反応。
「おいおいおいぶつかるぶつかる!」
「なってこった!」
「おい、お前の力じゃないのかよっ!」
「うわうわ、まさかこっちに迫ってくるとは」
「慣れねえ力を使うんじゃねぇ!」
接近する俺/接近される城ヶ崎さん。
だが、驚きは一瞬ですぐに平常に戻り、
「――――よぉし、作戦通り」
「嘘つけ!」
だが、冗談か本気か分からなくなるくらいよどみなく、城ヶ崎は蹴りを放った。
まっすぐ、力強い。
突撃する俺に向けて。
それはまるでピッチャーマシンから放たれたボールを打ち返すときのように。
「はっ!」
蹴りの位置はジャストミート。
それゆえに、
俺は、
「仕方ない!」
ブーストを強制解除した。
一気に落下する俺の身体。
手前で落ちる変化球のように俺の身体は落下し城ヶ崎の蹴りを空振った。
「……やるねぇ」
だが、手痛い攻撃には変わりなかった。
(ブーストの再発火はできねぇ。もう一度使ったらまた暴走だ)
城ヶ崎が誤認させたのが『力』じゃなくて『方向』だったのが唯一の救いだった。
もし力が制御できなくなってれば、俺は地上についてからも戦闘に手間取っただろう。
「ははっ、新島君。君は今『地上に落ちればこっちのもんだ』とか思わなかったか?」
「! いつの間に?」
落下して距離を取ったはずの城ヶ崎が、離れて対応時間を稼ごうとした城ヶ崎が、すでに目と鼻の先にいた。
「さっき暴走させた君との距離が近づいた瞬間に、『俺が蹴りを行う』と“誤認”させた。どうやらこの力、距離が近づけば近づくほど強くなるみたいだな」
俺の目の前にいる城ヶ崎、いや違う。
城ヶ崎は立っている。
俺の身体の上に直立不動で立っている。
俺の身体は空中にいるというのに。
「新島君は新島君で俺の攻撃範囲を調べていたみたいだけどね。あのやり方は駄目だ。俺に攻めることなく近づくということは、俺の攻撃の準備を許すことに他ならない」
城ヶ崎はぺらぺらと喋る。得意の知性を全開に働かせて。
「今やこれほどの距離。ゼロ距離。もはや無駄。すべてが決定する近さだ。どうなるか分からなかった勝負も、これにて俺の勝利で終わる」
城ヶ崎の台詞を耳に入れながら俺は違和感を覚える。
(お、落ちない?)
さっきから俺の身体は下に落下しているはずなのに、はずだったのに、俺の身体はいつまで経っても下の大地に落ちてくれない。
「変身名《輝き》、君の落下を“誤認”させた。これでもう君という現象から落下という行為は失われた」
そう俺の後頭部から背中にかけてスタスタと歩く城ヶ崎さんはまるで優雅な散歩でもするように俺の身体の上を歩く。
「う、動けない……?」
「そう動けない。落下を誤認させ、どうなるか俺にも分からなかったが、どうやらこの場合は『空中に止まる』みたいだな。面白い発見だ」
やばい。
何がやばいって。
俺の身体は落ちるのをやめているというのに。落下の際に感じる重力はそのままなんだ。
つまり、俺の身体は常に上から大きな力に押さえつけられるようになっていて、
「苦しいだろ新島君。安心してくれ。すぐに解放する」
「ぐぐ、城ヶ崎正義……!」
俺は力を込めて右腕を強化する。ただの強化じゃない。変身名《戦闘美少女》の力を上乗せする。
「変身名《輝き》! “痛み”を……」
「変身名《限定救世主》ッ! 種類『戦闘美少女』……」
迫り来る刃、迎え撃つ拳、
戦況は不利、圧倒的不利、
「認識しろ!」
「右腕強化!」
空中で力と力が激突した。
次回「第102話:ヒーロー達の一回戦/Aブロック 3」をよろしくお願いします。
掲載は5日~7日以内を予定しています。