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流血シーンあり
怪物の恐るべき牙が、僕の肩をかじる。
恐怖と激痛が僕を襲う。あげる声は悲鳴と言うより絶叫に近い。
怪物は僕の肩を咥えたまま頭をぶんぶんと振ると
僕の体を屋上の縁付近まで勢いよく放り投げる。
「ぐあ・・・弱らせてから食うつもりか?」
喉がかれる。肩からは血が止まらない。
僕は屋上の下を伺いながら考える。
(ここから飛び降りた方が助かるかもしれない・・・
あの木まで飛べないだろうか?)
怪物が大きく口を開けて走ってくる。やるなら今しかない・・・!
「対象を発見。」
突如、黒い人影が怪物に背後から飛びつく。
「!?」
飛びつくと同時にその人物は怪物の首の辺りに
深々と何か煌く刃物のようなものをつき立てる。
(何だ!?何が起こっている!?)
いきなり飛びつかれ、刃物を喉笛につきたてられた怪物は
勢いそのままに押し倒されて動かなくなる。
(死んだ?怪物は死んだのか?ていうか誰?)
謎の人物は怪物から刃物を引き抜くと、立ち上がって何かを話す。
「・・・こちらエージェント・ジャック。対象を殺害した。処理班を頼む。」
それは外国語だった。平凡な中学生の僕ではとても聞き取れそうにない。
たぶん英語だと思う。通信機で誰かと会話しているようだ。
「エージェント・テルが行方不明?・・・了解、捜索する。」
どうやらこの人は女性のようだ。
西洋系の顔立ちでまだ子供なのかもしれないと思わせるほどに若い。
金髪碧眼と黒いスーツが強烈なコントラストになっていて印象的だ。
彼女は僕の方へ向き直り、歩み寄ってくる。
(結構かわいいな・・・)
僕は少し緊張してしまう。
彼女は真顔で言う。
「何者だ?」
流暢な日本語だった。
でも何者かと聞かれても・・・
「えっと・・・僕は・・・」
僕は何とか説明しようとした。が、思うように言葉が出ない。
怪物に噛まれたところがすごく痛む。
(かなり血が出てるな・・・あれ・・・気が遠く・・・なって・・・)
R-15展開になるかもしれません・・・